2021年07月01日

ジェロントロジー座談会(対談)~各領域における実装へ

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任   坊 美生子

MaaS、CASE 高齢化問題(全般) などの記事に関心のあるあなたへ

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私たち一人ひとりが、安心して“人生100年時代”を過ごしていくためには、社会の様々な領域において、ジェロントロジーの知識や視点を活用し、制度やサービスを見直していくことが必要になります。そのため、このコーナーでは、各領域で、超高齢社会にふさわしい先進的な取り組みを行っている企業や行政、大学関係者の皆様と、ニッセイ基礎研究所の研究員が対談を実施し、新しい制度やサービス、デザイン等のあるべき姿について、考えていきます。

 

ジェロントロジー座談会(対談)レポート一覧

2022年04月27日 デイサービス車両は高齢者の移動を支える「第三の交通網」を形成できるか(下)
~群馬県発「福祉ムーバー」の取組から~
  DXやAIは、課題解決のために必要な手段だが、バズワードになっているため、導入自体が目的化している事業者もある。まずは現場で課題を見つけて、必要なところに導入していくという手順が必要である。福祉ムーバーはそのような順序で考えた結果、生まれたサービスであり、地域の課題解決につながる。
福祉ムーバーは、当初はAIを使って開発したが、パラメーターの変更のためにコストが上がったため、使用をやめて、統計を使ったアルゴリズムによるシステムを自社開発した。低コストを実現し、他の事業所にも横展開しやすくなった。
各地で発生している高齢ドライバーによる事故をなくし、高齢者の移動を支えるためには、持続可能な移動サービスを増やしていかなければならない。2020年の地域公共交通活性化再生法改正でも「地域の輸送資源の総動員」が提唱されており、全国に多数あるデイサービスの送迎網を活用できるように工夫する必要がある。
 
2022年04月27日 デイサービス車両は高齢者の移動を支える「第三の交通網」を形成できるか(中)
~群馬県発「福祉ムーバー」の取組から~
  介護保険創設当時は、ヘルパーが介護サービスとして利用者の通院送迎を行っていたが、2006年度の制度見直しによってなくなった。その後、高齢者や要介護者が増加するなど、個別輸送へのニーズは増え続けているが、供給は横ばいである。その結果、地域に移動困難な高齢者が増えている。今後は、緑ナンバーで走っている従来の公共交通だけでなく、白ナンバーの自家用自動車も活用しなければ、移動ニーズに対応できなくなってきている。
一方、デイサービス施設の白ナンバーの送迎車両は、現状でも、送迎ルートから外れなければ、利用者をスーパーなどで降ろすことは制度上、可能だが、それもあまり実施されていない。市町村の硬直的な判断によって、認められないケースがある。交通と福祉の縦割りや連携不足などによって、移動需要と輸送資源が目の前にあるのに、移動サービスが提供されない状態となっている。
 
2022年04月27日 デイサービス車両は高齢者の移動を支える「第三の交通網」を形成できるか(上)
~群馬県発「福祉ムーバー」の取組から~
  国内では、地方部を中心に公共交通が縮減し、マイカーを運転できない高齢者らは移動困難になっている。都市部でも、身体能力の低下によって、目的地まで歩くことが難しい高齢者が増えている。一方で、全国に立地するデイサービス施設は、専用車両で利用者の送迎サービスを実施しているところが多い。デイサービスの送迎の仕組みを活用して、利用者や地域住民をスーパーや通院等にも送迎できるようになれば、地域の公共交通を補完する「第三の交通網」となる可能性がある。群馬県高崎市の一般社団法人ソーシャルアクション機構は、その仕組みを構築しようと、デイサービス施設専用の配車計画作成と走行ナビゲーションをデジタル化したシステムを開発、運用している。同じグループのデイサービス施設で使用している他、全国各地の実証実験に採用されている。ただし、道路運送法では、有償で送迎サ-ビスを行えるのは事業用自動車に限られていることから、今後、どのように有償化できるかが課題となっている。
 
2022年02月21日 AIオンデマンド乗合タクシーの成功の秘訣(総括編)
~全国30地域に展開するアイシン「チョイソコ」の事例から
  本対談を通じて、AIオンデマンド乗合タクシー事業について、様々な課題と展望が見えてきた。運賃収入だけで収益性を確保することは難しく、運営事業者は、収益源を増やすために多様なサービスを付加する必要があるだろう。予約システムやルート選定など、技術的な部分には、デジタルとアナログを組み合わせた運用が効果的である。今後のオンデマンド乗合タクシーには、地域のコミュニティ活性化に寄与する役割が期待される。
 
2022年02月14日 AIオンデマンド乗合タクシーの成功の秘訣(下)
~全国30地域に展開するアイシン「チョイソコ」の事例から
  チョイソコ会員の中には、今でも認知症の人達が増えていると見られる。また豊明市のアンケートでは、チョイソコ導入後も依然、移動に不便や不安を感じている高齢者が計4割に上っている。高齢者の外出促進のために導入したチョイソコだが、さらなる高齢化がもたらす課題や、残された課題にも、引き続き対応していかなくてはならない。
今後、チョイソコには、乗客同士のコミュニティ形成に寄与する役割が期待される。対象を限定した乗合サービスで、乗客同士が顔見知りになりやすいからだ。例えば、チョイソコのイベント参加者同士が地域でボランティア活動を始めたり、元気な高齢者が、1人では乗降が難しい高齢者の介添えボランティアをしたりすることが考えられる。
アイシンの加藤氏もチョイソコの次のステップとして、「チョイソコを通じて、高齢者にGDPを上げる側に回ってもらいたい」と語り、高齢者が主役となるような様々な仕掛けを計画している。一方、豊明市の川島氏は、今でもチョイソコの仕組みの中に、高齢者が地域づくりの主体になる機会があると明かす。地区で停留所の位置を決める際、住民たちが集まって、移動に困っている人のためにどこが良いか、積極的に話し合って決めるからである。チョイソコには、「地域の役に立ちたい」と考えている高齢者たちに、活躍の舞台を提供する可能性がある。
 
2022年02月07日 AIオンデマンド乗合タクシーの成功の秘訣(中)
~全国30地域に展開するアイシン「チョイソコ」の事例から
  チョイソコは、2021年10月時点で、導入地域が全国約30か所に広がったが、収益性を確保するのは容易ではない。アイシンは、コスト幅を一層下げるために、今後も導入地域を拡大していく目標だ。また、乗合サービスだけではなく、車両にカメラをつけて道路の破損状況を記録し、自治体に送信したり、弁当を運ぶ「貨客混載」に取り組んだりと、新たな収益源となる多様なサービスに挑戦している。2022年度からは、利用者層を拡大するため、車いす対応車両を使用した実証実験を行う。
豊明市では、チョイソコ会員が当初の91人から2,000人超に増えた。チョイソコをきっかけに外出するようになった高齢者もみられており、外出促進に寄与している。逆に、車が空いていないために、利用したくても予約できない状況も発生している。市は今後、乗客が少ない午後の時間帯の運賃を下げるダイナミックプライシングを導入するなどして、より多くの住民に利用してもらえる方法を検討している。
 
2022年02月01日 AIオンデマンド乗合タクシーの成功の秘訣(上)
~全国30地域に展開するアイシン「チョイソコ」の事例から
  全国の地方部を中心に、公共交通が衰退し、路線バスやコミュニティバスが撤退した地区に、予約に合わせて運行する「オンデマンド乗合タクシー」を導入するケースが2000年代半ばから増えている。最近では、AIを使用したものも次々開発されている。しかし、導入しても利用が伸び悩み、自治体の補助金だけがかさむケースもある。
自動車部品メーカーの株式会社アイシンが、愛知県豊明市で開始し、全国約30地域に展開しているAIオンデマンド乗合タクシー「チョイソコ」は、スポンサーとなった地域の医療機関や薬局、スーパーなどが停留所を設ける仕組みで、収益率を向上させるスキームが注目されている。地域の高齢者が、より安価で気軽に、これらの場所に外出できるようになることを目指している。
この移動サービスが始まった背景には、アイシン側にはCASEに対応する必要性があったこと、豊明市側には、民間の力を活用して、高齢者の介護予防を進める必要性があったことがある。
チョイソコの大きな特徴の一つ目は、走行速度の計算にAIを用いて、地域ごとにパラメーターを変更し、適切な所要時間を割り出すシステムにあった。また二つ目は、人件費がかかるコールセンターのオペレーターをフル活用し、営業に活かしている点にあった。
 
2021年12月08日 自動運転は地域課題を解決するか(下)
~群馬大学のオープンイノベーションの現場から
  社会を変えるような革新的な製品・サービスの開発は、企業が単体で完結することは難しく、研究機関や自治体、他の企業と連携して外部の知見を取り入れる「オープンイノベーション」と、それを行うためのリアルな「場」が必要である。リアルな場を担う研究機関がビジョンを示すとともに、その活動の持続可能性を担保するために自主財源の確保に努めることが欠かせない。群馬大学次世代モビリティ研究センターの小木津武樹副センター長は、2016年のセンター設立当初からオープンイノベーションの拠点になることを目指し、実際に、多くの企業と連携を図ってきた。「自動運転は高齢者の移動支援に結びつくか」という点については、現時点では直接結びつくのは難しい、という見方で参加者の意見が一致した。現時点では、走行環境が整っていない地域の道路まで自動運転を延長することは難しい一方で、高齢者は、ドアツードアに近い移動サービスを必要としているからである。ただし、細谷精一・前橋市未来創造部参事兼交通政策課長は、将来的な可能性として、高齢者等を対象に郊外部で走行しているAIオンデマンド交通には、自動運転の導入を検討したいというアイディアを示した。小木津氏も、まずもっては、走行環境が整った市街地などに自動運転を導入し、それによって余った人手を、高齢者等、介助を必要としている人への移動サービスに充てるという姿勢を示した。技術が向上した後には、高齢者に利用しやすい移動サ-ビスへの実装を考える、という順序を示した。
 
2021年11月18日 自動運転は地域課題を解決するか(中)
~群馬大学のオープンイノベーションの現場から
  自動運転システムを社会実装するためには、街づくりとの連携が欠かせない。従って、新しくスマートシティを開発する際に、最初から自動運転システムを組み込む方が、最先端技術をうまく実践することができるとも考えられる。実際に、米中の巨大IT企業は、既にスマートシティ開発に参画している。国内でも、トヨタ自動車が静岡県裾野市に「ウーブン・シティ」を開発中である。このような動きと、群馬大学次世代モビリティ社会実装研究センターは、一線を画している。副センター長の小木津武樹氏は、新規開発型のスマートシティよりも寧ろ、古くて伝統のある街に、その地域の良さを生かしつつ、必要とされる自動運転の技術を入れていくことが、自身の仕事だと語る。細谷精一・前橋市未来創造部参事兼交通政策課長も、同市では、既存の資源を生かしながら、暮らしやすい街を創っていく「リノベーションまちづくり」を進めていることから、全くの新規開発型ではなくても、自動運転システムの実装と親和性があると指摘する。また、自動運転システムを実用化する上で、最大の難関とも言える収益化に関しては、細谷氏は、バス路線の再編などで利便性を向上し、MaaSによって住民に知ってもらうきっかけを増やすなど、ありとあらゆる手段を講じて乗客確保に努める姿勢を明らかにした。
 
2021年11月09日 自動運転は地域課題を解決するか(上)
~群馬大学のオープンイノベーションの現場から
  自動運転システムをサービスカーに社会実装する分野において、国内で最も盛んに活動を行っている機関の一つが、群馬大学次世代モビリティ研究センター(CRANTS=Center for Research on Adoption of NextGen Transportation Systems)である。同センターは、これまで民間企業30社以上と共同研究を行い、全国60か所以上で実証実験を重ねてきた。同センターを率いる小木津武樹・副センター長に、これまでの経験から、自動運転システムの導入に適したODD(道路環境)を尋ねると、「歩車分離などの重要なエッセンスはあるが、それらを条件とするのではなく、個々の場所を見ながら計画を立てることが重要だ」と指摘する。各地域や道路によって、状況が全く異なるからである。2018年度からCRANTSと連携して、地元・前橋市で実証実験を統括してきた細谷精一・未来創造部参事兼交通政策課長も、「地域の交通の軸となる区間において、自動走行を成功させることが、交通ネットワーク維持のために必要だ」と協調する。
 
2021年10月01日 過疎地において自動運転サービスは持続可能か(下)
~レベル3の最前線・福井県永平寺町の取組みから~
  福井県永平寺町では、全国に先駆けて自動運転に取り組んだことで、交通・自動車関係の様々な企業や研究者などが集まるようになり、地域にMaaS会議が誕生した。そこで地域交通について話し合ううちに、デマンド型乗合タクシーの取組みが始まった。住民がドライバーとなり、高齢者を送迎する仕組みである。これが順調に利用されるようになり、地域のつながりや交流が盛んになってきた。自動運転がもたらした波及効果である。将来的には、デマンド型乗合タクシーを他地域にも広げ、運用しながら、自動運転との連携方法を探っていく考えである。
 
2021年10月01日 過疎地において自動運転サービスは持続可能か(上)
レベル3の最前線・福井県永平寺町の取組みから~
  国内外で、巨大IT企業や大手自動車メーカーによる自動運転車両の開発が激化しているが、公道を無限定に走行する技術的難しさから、近年、注目が集まっているのが、限定された路線を走行するバスなどの「サービスカー」に自動運転を実装することである。このサービスカーの領域において、2021年3月、全国で初めて、公道における無人自動運転(レベル3)を実現したのが、人口2万人に満たない福井県永平寺町である。それを進めてきたのが河合永光町長である。同町では、地中の電磁誘導線に沿って走るというアナログな技術、最高時速12kmという低速カート、歩行者自転車専用道路という限定空間を用いたことによって、実装において日本の最前線を走っている。
 
2021年08月06日 MaaSは超高齢社会の移動問題を解決するか
~バス会社「みちのりホールディングス」の取り組みから考える~
  地方の公共交通を活性化する切り札の一つとして、MaaS(Mobility as a service)に注目が集まっている。MaaS実現による市場開拓を狙って、移動分野に新規参入する企業も相次いでいる。しかし、MaaSが本当に実用化できるのか、社会問題解決につながるのか、という点については、検証が進んでいない。東北や関東でバス事業などを展開する「みちのりホールディングス」グループが、茨城県日立市で2019年度から継続しているMaaSの実証実験について経過をみてみると、高齢者によるスマホ利用の壁、他の交通事業者のオープンデータ化の壁など、様々な課題が見えてきた。
 

参考情報

MaaS(Mobility as a Service、マース)

国土交通省は「スマホアプリ又はwebサービスにより、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに応じて、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス」と定義している。2016年にフィンランドで始まったサービスが、先進例とされている。国内では2018年頃から注目が集まり、政府の成長戦略「未来投資戦略2018」の中に、変革をけん引力する「フラッグシップ・プロジェクト」として盛り込まれた。国土交通省と経済産業省は、同年度以降、全国80地域の実証実験を支援対象とし、取り組みを推進している。
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生活研究部   准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任

坊 美生子 (ぼう みおこ)

研究・専門分野
ジェロントロジー、交通政策・移動サービス、労働

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【ジェロントロジー座談会(対談)~各領域における実装へ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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