2021年12月08日

自動運転は地域課題を解決するか(下)~群馬大学のオープンイノベーションの現場から

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子

社会研究部 上席研究員 百嶋 徹

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■要旨

社会を変えるような革新的な製品・サービスの開発は、企業が単体で完結することは難しく、研究機関や自治体、他の企業と連携して外部の知見を取り入れる「オープンイノベーション」と、それを行うためのリアルな「場」が必要である。リアルな場を担う研究機関がビジョンを示すとともに、その活動の持続可能性を担保するために自主財源の確保に努めることが欠かせない。群馬大学次世代モビリティ研究センターの小木津武樹副センター長は、2016年のセンター設立当初からオープンイノベーションの拠点になることを目指し、実際に、多くの企業と連携を図ってきた。「自動運転は高齢者の移動支援に結びつくか」という点については、現時点では直接結びつくのは難しい、という見方で参加者の意見が一致した。現時点では、走行環境が整っていない地域の道路まで自動運転を延長することは難しい一方で、高齢者は、ドアツードアに近い移動サービスを必要としているからである。ただし、細谷精一・前橋市未来創造部参事兼交通政策課長は、将来的な可能性として、高齢者等を対象に郊外部で走行しているAIオンデマンド交通には、自動運転の導入を検討したいというアイディアを示した。小木津氏も、まずもっては、走行環境が整った市街地などに自動運転を導入し、それによって余った人手を、高齢者等、介助を必要としている人への移動サービスに充てるという姿勢を示した。技術が向上した後には、高齢者に利用しやすい移動サ-ビスへの実装を考える、という順序を示した。

■目次

・自動運転の研究開発と社会実装に必要な、産学官連携の在り方とは
・自動運転は、高齢者の移動支援につながるのか
・自動運転の社会実装と実用化に向けて、対談から得られた示唆


<対談参加者>

◇小木津武樹氏 慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(学術)。群馬大学大学院理工学府准教授、同大学次世代モビリティ社会実装研究センター副センター長。株式会社日本モビリティ取締役会長。自動運転の実証実験や実車デモの経験が多数ある。

◇細谷精一氏 前橋市未来創造部参事兼交通政策課長。1987年採用。群馬県企画部交通政策課(出向)や市企画部企画調整課などを経て現職。上毛電鉄への上下分離方式やコミュニティバスの導入、JR前橋駅前広場整備、地域公共交通計画、自動運転バスの企画・導入など、市の交通政策全般を統括する。

◇百嶋徹・ニッセイ基礎研究所社会研究部上席研究員。専門は企業経営を中心に産業競争力、イノベーション、AI・IoT、スマートシティ、企業不動産・オフィス戦略、CSR・ESG経営等。AI・IoTの利活用分野としての自動運転にも強い関心を持つ。

◇坊美生子(モデレーター)・ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員。ジェロントロジー推進室兼任。高齢者の視点で移動支援、交通政策を研究。
(資料) 自動運転の社会実装に向けた課題を議論する小木津氏(右下)、細谷氏(左下)、百嶋(左上)、坊(右上)

(2021年12月08日「ジェロントロジーレポート」)

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社会研究部

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

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