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デイサービス車両は高齢者の移動を支える「第三の交通網」を形成できるか(中)~群馬県発「福祉ムーバー」の取組から~
生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
介護保険創設当時は、ヘルパーが介護サービスとして利用者の通院送迎を行っていたが、2006年度の制度見直しによってなくなった。その後、高齢者や要介護者が増加するなど、個別輸送へのニーズは増え続けているが、供給は横ばいである。その結果、地域に移動困難な高齢者が増えている。今後は、緑ナンバーで走っている従来の公共交通だけでなく、白ナンバーの自家用自動車も活用しなければ、移動ニーズに対応できなくなってきている。
一方、デイサービス施設の白ナンバーの送迎車両は、現状でも、送迎ルートから外れなければ、利用者をスーパーなどで降ろすことは制度上、可能だが、それもあまり実施されていない。市町村の硬直的な判断によって、認められないケースがある。交通と福祉の縦割りや連携不足などによって、移動需要と輸送資源が目の前にあるのに、移動サービスが提供されない状態となっている。
■目次
・高齢化によって、要介護者や身体障がい者は増加しているが、移動サービスは供給不足。
・これまでの公共交通には合わない、移動に付き添いや介助を必要とする需要層が地域に染み出して
いる。
・「緑ナンバーか白ナンバー」という道路運送法の二元論的な整理に無理が生じ始めている
・道路交通法と道路運送法の二重規制を受ける事業所もある。自家用有償旅客運送制度の簡素化が
必要
・市町村の介護保険にかかる調査でも、移動の問題は年々深刻化。都市部でも課題。
・地域の様々なプレーヤーが、組織横断的に取り組むことで、課題解決が見えてくる。それが本当の
地域包括ケア。
・やる気と資金のある民間企業が先駆けに。中小は後から付いてくる。
・交通と福祉の縦割りによって、新しい移動サービスの創出につながらない。
◇北嶋史誉(きたじま・ふみたか)氏 一般社団法人ソーシャルアクション機構代表理事。医療法人日高会の日高病院でソーシャルワーカーとして勤務後、介護保険制度導入に合わせて同グループの株式会社エムダブルエス日高に移籍。代表取締役として群馬県内でデイサービス施設11か所を展開。2022年3月、福祉ムーバーの普及に専念するため退職。一般社団法人日本デイサービス協会理事。
◇青木正人(あおき・まさと)氏 株式会社ウエルビー代表取締役。大手出版社勤務、出版社・予備校・学習塾等経営、介護福祉士養成校・特別養護老人ホーム設立・運営を経て、現職。福祉介護事業のコンサルティングや自治体の福祉施策等の指導を行う。明治大学サービス創新研究所客員研究員。
◇遠藤準司(えんどう・じゅんじ)氏 NPO法人アクティブネットワーク代表理事。介護保険による在宅サービス、自家用有償旅客運送(福祉有償運送)、国土交通相認定「福祉有償運送運転者講習」等を実施。NPO法人全国移動ネットワーク理事。大阪府北摂ブロック福祉有償運送運営協議会委員。
◇坊美生子(ぼう・みおこ、モデレーター) 新聞記者を経て、ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員。ジェロントロジー推進室兼任。高齢者の視点で移動サービス、交通政策を研究。
(2022年04月27日「ジェロントロジーレポート」)
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03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
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