男女別にみたシニア（50代後半～60代前半）の転職状況～厚生労働省「雇用動向調査」（2023年）より～

生活研究部准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任坊美生子

■要旨

筆者の既出レポートでは、人手不足の影響で近年、転職市場が活発化し、中高年の転職者割合が増えたり、転職後に賃金アップする割合が増えたり、中高年労働者にとっても転職のハードルが下がってきたことを説明した。それでは具体的に、どのような職業や産業が中高年労働者の転職が多く、賃金アップするケースが多いのだろうか。本稿では、シニア（50代後半から60代前半）の転職について、政府統計から分析した。

厚生労働省の雇用動向調査によると、50代後半の男性で転職が多い職業は「管理的職業従事者」、「事務従事者」、「専門的・技術的職業従事者」である。「管理的職業従事者」は母数となる就業者数は多くないが、転職者数で見ると首位に躍り出ていることから、シニアであっても、高度な職務経験や専門知識、技術を持つ男性は転職が多いと言えるだろう。

50代後半の女性で転職が多いトップは「事務従事者」である。事務は女性の最大の職業であり、母数が多い影響も大きいと考えられるが、事務の中でも、専門スキルを持つ女性シニアが転職を果たしていると考えられる。

転職による賃金変動を見ると、50代後半の男性では、賃金が増加した人は約2割に過ぎず、全体としてはシニア男性の転職は厳しいと言える。しかし企業規模別に見ると、中小・零細企業では賃金増加率が相対的に高い。役職定年を機に、大企業から中小に好待遇で迎えられるケースが多いと考えられる。

50代後半女性では、別の傾向が見られた。そもそも正規雇用で働くシニア女性は少なく、転職者数自体も少ないが、転職を果たした50代後半女性については、4割弱が賃金アップしており、男性よりも大幅に大きい。特に、大企業に転職したケースで賃金増加率が最も高い。前稿でも報告したように、女性活躍政策の影響で、女性管理職の確保に迫られる大企業が、部長職などの50代後半女性を好待遇で迎えている可能性がある。

■目次

1――はじめに
2――シニアの就業状況
　　2-1│職業別の就業者数ランキング
　　2-2│産業別の雇用者数ランキング
3――シニアの転職状況
　　3-1│転職者数の職業別ランキング
　　3-2│転職者数の産業別ランキング
4――賃金アップした人が多いシニアの転職先
　　4-1│企業規模別にみた転職で賃金アップしたシニアの割合
　　4-2│転職先の産業別にみた賃金変動の状況
5――終わりに

日付	タイトル	執筆者	媒体
2025/03/31	男女別にみたミドル（40代後半～50代前半）の転職状況～厚生労働省「雇用動向調査」（2023年）より～	坊美生子	基礎研レポート
2025/03/17	男女別にみたシニア（50代後半～60代前半）の転職状況～厚生労働省「雇用動向調査」（2023年）より～	坊美生子	基礎研レポート
2025/03/06	「老後シングル」は他人事か？～配偶関係ではなく、ライフステージとして捉え直す～	坊美生子	研究員の眼
2025/02/13	女性管理職転職市場の活発化～「働きやすさ」を求めて流動化し始めたハイキャリア女性たち～	坊美生子	基礎研レポート

日付

タイトル

執筆者

媒体

2025/03/31

男女別にみたミドル（40代後半～50代前半）の転職状況～厚生労働省「雇用動向調査」（2023年）より～

坊美生子

基礎研レポート

2025/03/17

男女別にみたシニア（50代後半～60代前半）の転職状況～厚生労働省「雇用動向調査」（2023年）より～

坊美生子

基礎研レポート