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- MaaSは超高齢社会の移動問題を解決するか~バス会社「みちのりホールディングス」の取り組みから考える~
MaaS(Mobility as a Service、マース)
国土交通省は「スマホアプリ又はwebサービスにより、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに応じて、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス」と定義している。2016年にフィンランドで始まったサービスが、先進例とされている。国内では2018年頃から注目が集まり、政府の成長戦略「未来投資戦略2018」の中に、変革をけん引力する「フラッグシップ・プロジェクト」として盛り込まれた。国土交通省と経済産業省は、同年度以降、全国80地域の実証実験を支援対象とし、取り組みを推進している。
老後も住み慣れた地域で安心して生活していくためには、マイカーを運転できず、送り迎えしてくれる家族がいなくても、自由に移動できる交通手段が必要不可欠である。しかし現状では、都市部を除いて、各地域の鉄道やバスは廃止・縮小されるなど、公共交通は衰退している。そのため、高齢者が運転免許を自主返納すると、とたんに外出機会が減ってしまうケースが多く、身体機能や認知機能の低下が懸念される。交通手段をどのように活性化し、持続させていくかは、どの地域にとっても最重要課題と言える。
今後、地域交通を活性化していくために、AIなど先端技術の活用にも注目が集まっている。その一つが、複数の交通サービスをデジタル化して統合する「MaaS」である。利用者が、スマートフォンのアプリに目的地を入力すれば、様々な交通サービスの中から、最適な組み合わせが表示され、アプリで予約から決済まで一括して行えるというものである。既に、鉄道事業者やバス会社、航空会社などが各地で取り組みを始めている。乗車券に百貨店や観光施設のクーポン券などを組み合わせて相乗効果を狙うケースもある。IT企業や不動産会社など、異業種も続々と参戦している。
新たなビジネスチャンスを掴もうと、急速にMaaSへの注目が高まる一方で、実際にMaaSを事業化できるのか、地域の高齢者等の移動手段確保につながるのか、という点については、まだ検証が進んでいない。
東北や関東で、経営難に陥ったバス会社などを子会社化して規模を拡大してきた「みちのりホールディングス」(東京、松本順代表)グループは、自動運転や、AIを利用して、予約状況に合わせて最も効率的なバスの運行経路とダイヤを決める「ダイナミックルーティング」など、新しいサービスに次々取り組んでいる。MaaSにも2018年から取り組んでおり、本稿では、同社でIT分野を担当する浅井康太氏と対談を行うことによって、これまでの蓄積から見えてきた、MaaSの成果と課題について検証する。
■目次
・地方では交通手段が不足。MaaSで交通サービスを「増やす」と「つなぐ」の両方が必要
・地域の移動課題から出発する
・高齢者にはハードルが高いアプリを用いたサービス
・実装では、技術的課題よりも、企業の社内ルールなど制度的課題が大きい
・高齢者への説明、説得に、地域の小売店に協力してもらう
・乗客からはいずれ、既存交通と競合するサービスへの要望が出てくる。事業者はコストバランスで判断する
・MaaS実現に、他社のオープンデータ化の壁。将来のために、交通事業者自身がIT投資をして公開すべき
・観光客やインバウンドも取り入れて、数年のうちにMaaSの取り組みで黒字化を目指す
・MaaSの成果と課題
(2021年08月06日「ジェロントロジーレポート」)
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03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
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