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2017年11月14日
米国の個人年金販売に異変? 変額年金販売額が縮小-生保会社のリスク回避と規制改定の影響-
米国ではここ20年来、変額年金が生保会社の経営を支える重要な収益源となってきた。しかし、ここ数年、変額年金の販売に変調が生じている。本稿では、米国の生命保険マーケティングの調査・教育機関であるリムラ(LIMRA international)およびリムラの退職商品部門であるセキュアリタイアメントインスティチュート(LIMRA Secure Retirement Institute)のデータを主な情報源として、2016年の米国生保市場における個人年金販売の状況を見る。
1――米国の個人年金販売状況(2016年)
(2)変額年金
変額年金の販売高は2012年以降5年連続で減少、2016年は減少幅が大幅に拡大した。対2015年約300億ドルの減少額は、2008年の金融危機時に発生した減少額に匹敵するものである。従来は、変額年金の販売額の動向は株式市場の動向と相関があったが、今回の不振は株価動向との連動性が見られない。
これは、株価下落による変額年金パフォーマンスの低下が変額年金の商品魅力を減じたこれまでの販売不振とは異なって、今回の不振は、多くの生保会社が経営判断として生存給付保証付きの変額年金販売に慎重に転じたこと、米国労働省(DOL)が2016年4月に発出したフィデューシャリー・デューティ・ルール(以下、FDルール)の改正案が変額年金と指数連動型年金に不利な内容であったため、生保業界に混乱をもたらし、特に変額年金の販売に慎重になる生保会社が多かったことを主たる原因とするものであるからである。
2016年の変額年金の販売額は1998年以来の最低水準にまで低下した。
変額年金の販売高は2012年以降5年連続で減少、2016年は減少幅が大幅に拡大した。対2015年約300億ドルの減少額は、2008年の金融危機時に発生した減少額に匹敵するものである。従来は、変額年金の販売額の動向は株式市場の動向と相関があったが、今回の不振は株価動向との連動性が見られない。
これは、株価下落による変額年金パフォーマンスの低下が変額年金の商品魅力を減じたこれまでの販売不振とは異なって、今回の不振は、多くの生保会社が経営判断として生存給付保証付きの変額年金販売に慎重に転じたこと、米国労働省(DOL)が2016年4月に発出したフィデューシャリー・デューティ・ルール(以下、FDルール)の改正案が変額年金と指数連動型年金に不利な内容であったため、生保業界に混乱をもたらし、特に変額年金の販売に慎重になる生保会社が多かったことを主たる原因とするものであるからである。
2016年の変額年金の販売額は1998年以来の最低水準にまで低下した。
1 ストラクチャード・セツルメント(賠償金年金払決済方式)は、原告側(損害賠償請求側)が和解金の一部を年金の形で受け取るもの。原告側と被告側(賠償側)の間の和解に伴う自発的な合意として、被告側が生保会社から年金を購入する形で実施される。原告側が受取る年金は非課税扱い。
2) 確定利率据置型定額年金の好業績
金利が過去最低水準まで下がったにもかかわらず、確定利率据置型定額年金の販売額は特に2016年上期中に急増し、その結果、2016年通年でも対前年79億ドルの販売増を達成した。
この上期中の販売増は、金融危機中の2008年に大量に販売された確定利率据置型定額年金の契約が優遇利率保証期間(=解約時に解約返礼金から解約控除金をマイナスされる期間でもある)を経過して、保証利率が下がった(それとともに解約控除がなくなって解約しやすくなった)ことを契機に、その契約を解約して、新たに何年間かの保証利率優遇を受けることができる同種商品に加入し直そうとする動きが大量に発生したという特殊要因によるものであった。こうした特殊要因が過ぎ去った下期、確定利付据置型定額年金の販売は、低金利環境を前提として予想されていた水準に落ち込むこととなった。ただし上期の販売増は下期の不振を補うに十分で、2016年通年でのプラス進展が実現された。
金利が過去最低水準まで下がったにもかかわらず、確定利率据置型定額年金の販売額は特に2016年上期中に急増し、その結果、2016年通年でも対前年79億ドルの販売増を達成した。
この上期中の販売増は、金融危機中の2008年に大量に販売された確定利率据置型定額年金の契約が優遇利率保証期間(=解約時に解約返礼金から解約控除金をマイナスされる期間でもある)を経過して、保証利率が下がった(それとともに解約控除がなくなって解約しやすくなった)ことを契機に、その契約を解約して、新たに何年間かの保証利率優遇を受けることができる同種商品に加入し直そうとする動きが大量に発生したという特殊要因によるものであった。こうした特殊要因が過ぎ去った下期、確定利付据置型定額年金の販売は、低金利環境を前提として予想されていた水準に落ち込むこととなった。ただし上期の販売増は下期の不振を補うに十分で、2016年通年でのプラス進展が実現された。
(2017年11月14日「保険・年金フォーカス」)
経歴
松岡 博司のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/03/13 | 英国生保市場の構造変化-年金事業への傾斜がもたらした繁忙とプレーヤーの変化- | 松岡 博司 | 基礎研レポート |
2024/03/12 | 主要国の生保相互会社の状況-各国で株式会社と相互会社の競争と共存が定常化-デジタル化等の流れを受けた新しい萌芽も登場- | 松岡 博司 | 基礎研レポート |
2023/09/05 | コロナパンデミック前後の英国生保市場の動向(1)-年金を中核事業とする生保業績- | 松岡 博司 | 保険・年金フォーカス |
2023/07/19 | インド生保市場における 生保・年金のオンライン販売の動向-デジタル化を梃子に最先端を目指す動き- | 松岡 博司 | 保険・年金フォーカス |
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