2024年03月13日

英国生保市場の構造変化-年金事業への傾斜がもたらした繁忙とプレーヤーの変化-

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■要旨

英国生保市場は2022年の生命保険料の額で日本を抜いて世界第3位の市場となった。

英国は日本の半分強の人口で日本を上回る生命保険料を稼ぎ出している。普及度の指標である「生命保険料の対GDP割合」、「人口1人あたり生命保険料」も高い。

英国の生保市場では、インディビデュアルペンション(個人年金)、コーポレートペンション(企業年金)、アニュイティ(終身年金)から成る「年金」が、あわせて生命保険料収入の90%を稼ぎ出す主力商品分野となって、近年の好業績を支えている。

英国で年金の好業績をもたらしている第1の要因は、職域年金における自動加入制度である。自動加入制度が始まる直前(2011年)の英国の職域年金加入率は47.6%であったが、2021年の職域年金加入率は79.4%まで上昇した。

年金の好業績をもたらしている第2の要因は、確定給付企業年金(DB年金)における年金リスク移転取引の活況である。

英国生保市場の年金重視構造への変化は、英国生保会社の顔ぶれにも大きな変化をもたらした。

年金リスク移転取引事業に特化した会社、クローズドブック統合事業に取り組む会社が、ホールセール型の取引を展開し、市場におけるプレゼンスを高めた。

一方、長らく最上位会社であったスタンダードライフとプルデンシャルは、英国生保市場から撤退し、スタンダードライフは資産運用事業に、プルデンシャルはアジア・アフリカでの生保事業にフォーカス市場を移動させた。

■目次

はじめに――日本を超え世界第3位の生保市場に躍進した英国生保市場
1――保険料ベースで見た英国生保市場の業績動向
  1|生命保険料収入合計額の動向
  2|生命保険料収入の商品種類別構成
2――英国生保市場の好業績を支える年金事業
  1|年金自動加入制度
  2|年金リスク移転市場の発達
  3|アニュイティ(終身年金)の復調傾向
3――環境変化の中で生じた英国生保業界におけるプレーヤーの変遷
  1|2014年と2022年の対比で見た英国生保市場の顔ぶれの変化
  2|現在も上位層を形成する従来からの大手生保会社
  3|上位層に喰い込み英国市場に定着する外資系生保会社
   ただし最近は撤退の動きも
  4|急激に拡大し、大きく順位を上げた年金リスク移転特化会社およびランオフ事業  
   統合会社
  5|英国の生保市場から退出した企業の後継会社
   -伝統的大手生保会社最上位2社の英国生保市場離脱
さいごに
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松岡 博司

研究・専門分野

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