コラム
2024年02月06日

東京都への転入超過数がコロナ前の水準近くまで回復~訪日外国人ともどもV字回復、東京のマンション市場を一定に下支えか~

金融研究部 客員研究員 小林 正宏

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総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」によれば、2023年の「他都道府県からの転入者数」から「他都道府県への転出者数」を引いた「転入超過数」が東京都は68,285人となり、東京都への一極集中が再加速したとの報道が散見される。

コロナ禍の2020年から2022年にかけて、単月で東京都の転入超過数がマイナスに転落したことが何度かあったが、東京都への転入超過数の動きには季節性があり、12か月移動平均で見ればボトムでもマイナスには転落していなかった(図表1)。
図表1:東京都への転入超過数(月次)
東京都への転入超過数は3月が突出して多く、4月がそれに次ぐ水準というのが一般的となっている。2023年について「3月と4月」と「それ以外の月(1、2月、5~12月)」の月平均を年齢階層別、男女別に見ると、男女の違いはほとんどなく、年齢階層別では20~24歳が最も多く、15~19歳がそれに次ぎ、25~29歳もそれに近い水準となっている(図表2)。その他の年齢階層は月による差異はさほど大きくはなく、35歳を過ぎると全てマイナスになっている。規模が小さいので、35歳以上は35歳~59歳と60歳~の2区分にまとめて表示しているが、5歳刻みにしても同じ傾向である。なお、0~4歳と5~9歳も同様に月を問わずマイナスだが、これは親が近郊県等に転居する際に同伴しているものと思われる。

コロナ禍でテレワークが普及し、郊外の戸建て住宅に転居する人が増えたという報道もよく耳にしたが、人口動態全体としては大学進学や就職等で東京都に転入してくる若者の人口移動と比較すると小規模なものであったのかもしれない。
図表2:年齢階層別:男女別 東京都への転入超過数(月平均:2023年)
なお、コロナ禍前後の東京都への転入超過数の動きは訪日外客数の動きによく似ている(図表3)。コロナ後に急減し、2022年を底にV字回復しているが、訪日外客数の立ち上がりはややタイミングが遅れている。一部の国の渡航制限等の影響があったものと思われるが、足元ではこちらもコロナ前の水準をほぼ回復している。折からの円安の影響もあると思われるが、オーバーツーリズムの問題等も指摘されつつも、基本的には歓迎される動きであると捉える向きが多いだろう。

訪日外客数が増えれば宿泊需要が逼迫し、ホテル建設が加速するが、それはマンションの建設用地取得と競合することが多く、マンション価格の上昇圧力にもなる。2023年の首都圏の新築分譲マンションの平均価格が8,101万円、東京都区部では1億1,483万円と初めて1 億円の大台を突破したが、人の動きを見る限り、東京の不動産市場には一定の下支え効果があるだろう
図表3:東京都への転入超過数と訪日外客数(いずれも12か月移動平均)
 
 

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金融研究部   客員研究員

小林 正宏 (こばやし まさひろ)

研究・専門分野
国内外の住宅・住宅金融市場

経歴
  • 【職歴】
     1988年 住宅金融公庫入社
     1996年 海外経済協力基金(OECF)出向(マニラ事務所に3年間駐在)
     1999年 国際協力銀行(JBIC)出向
     2002年 米国ファニーメイ特別研修派遣
     2022年 住宅金融支援機構 審議役
     2023年 6月 日本生命保険相互会社 顧問
          7月 ニッセイ基礎研究所 客員研究員(現職)

    【加入団体等】
    ・日本不動産学会 正会員
    ・資産評価政策学会 正会員
    ・早稲田大学大学院経営管理研究科 非常勤講師

    【著書等】
    ・サブプライム問題の正しい考え方(中央公論新社、2008年、共著)
    ・世界金融危機はなぜ起こったのか(東洋経済新報社、2008年、共著)
    ・通貨で読み解く世界経済(中央公論新社、2010年、共著)
    ・通貨の品格(中央公論新社、2012年)など

(2024年02月06日「研究員の眼」)

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