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- 「年収の5倍」は古い?10倍を超える首都圏新築分譲マンション価格~それでも返済負担はバブル期の6割に止まる~
2023年10月19日
■要旨
■目次
1.首都圏の新築分譲マンション価格と年収倍率
2.金利水準を見ない「年収倍率」、見る「返済負担率」
3.長期金利上昇の影響
- 首都圏で2023年1月から8月までに新規発売された分譲マンションの平均価格は8,893万円と90年代前半のバブル期の水準を大きく超えている。住宅価格の年収倍率について、かつて「年収の5倍程度」という目安が示されたが、2021年の首都圏の新築分譲マンション価格の世帯年収に対する倍率は10.53倍と、バブル期のピークであった1990年の9.34倍を超えている。
- しかし、住宅取得が遠のいたとは一概に言えない。世帯年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合を試算すると、バブル期の1990年は47.7%と収入の半分近くをローン返済に充当しなければならなかった。これに対して、2021年は30.1%と、バブル期と比較して返済負担率が4割程度低下している。
- バブル期の1990年頃は住宅金融公庫の基準金利が5%前後で推移していた。当時の金利水準からすれば、年収の5倍は返済負担率30%とほぼイコールであり、適切な基準であったと考えられる。しかし、その後市場金利が低下し、住宅金融支援機構が提供する「フラット35」の最頻値金利は2010年代半ば以降、1~2%近傍で推移している。金利1%、返済負担率30%。世帯年収1千万円の場合、借入可能な金額は8,856万円であり、2023年1~8月の平均価格8,893万円にも手が届く計算になる。
- 総務省統計局の「令和4年就業構造基本調査」によれば、全国の全世帯で見れば年収500万円未満が55.8%を占めているが、東京都特別区部(23区)で世帯主の年齢が30~59歳かつ世帯主以外に有業者ありの世帯では1,000万円以上の世帯が53.4%を占めている。1億円を超える高額物件、いわゆる「億ション」の契約率は2023年の1~8月の平均で86.9%と好調である。
- マンションを購入する際に大切なことは本当に住みたい物件を見つけることだが、マンション価格が高くなっても無理なく購入できるかどうかの見極めも極めて重要である。その際には、マンション価格が年収の何倍かという基準ではなく、年間返済額が年収の何%かという返済負担率の方がより適切な基準である。また、変動金利で借りる場合は将来の金利上昇リスクに備えて、少し余裕を持って購入の是非を判断した方が良い。
■目次
1.首都圏の新築分譲マンション価格と年収倍率
2.金利水準を見ない「年収倍率」、見る「返済負担率」
3.長期金利上昇の影響
(2023年10月19日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】
1988年 住宅金融公庫入社
1996年 海外経済協力基金(OECF)出向(マニラ事務所に3年間駐在)
1999年 国際協力銀行(JBIC)出向
2002年 米国ファニーメイ特別研修派遣
2022年 住宅金融支援機構 審議役
2023年 6月 日本生命保険相互会社 顧問
7月 ニッセイ基礎研究所 客員研究員(現職)
【加入団体等】
・日本不動産学会 正会員
・資産評価政策学会 正会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科 非常勤講師
【著書等】
・サブプライム問題の正しい考え方(中央公論新社、2008年、共著)
・世界金融危機はなぜ起こったのか(東洋経済新報社、2008年、共著)
・通貨で読み解く世界経済(中央公論新社、2010年、共著)
・通貨の品格(中央公論新社、2012年)など
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