2023年07月21日

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■要旨
 
  • アメリカの商業用不動産(CRE)の価格は歴史的高値圏にあるが、下落基調にある。特に中心市街地のオフィスは空室率が上昇し、賃料の伸びも鈍化している。コロナ後もテレワークに慣れた労働者の一部が出社しなくなったことが要因の一つとされる。
     
  • FRB(連邦準備制度理事会)の調査では、CREに対する金融機関の融資審査態度は急激に厳格化しており、資金需要も減退している。銀行部門全体で見ればCREに対するエクスポージャーはさほど大きくはないが、中小銀行では総資産の2割超がCRE向け融資となっている。
     
  • REIT(不動産投資信託)の価格は株式と比較するとコロナ後のパフォーマンスが悪く、FRBによる利上げの影響が不動産部門により大きくのしかかっていることが示唆される。ただし、市場規模が急激に縮小するような事態には至っていない。
     
  • 米国債の利回りは長期金利よりも短期金利が高い逆イールド状態にあり、景気後退に陥るリスクがあると見る向きもある。仮に景気後退に陥った場合、CRE市場も影響を受け、地域格差が大きいことから個別の中小銀行の経営を圧迫する可能性もある。市場動向とともに、監督当局の動向が注視される。


■目次

1. アメリカの商業用不動産価格動向
2. CREに対する金融機関の動向
3. REIT市場の動向
4. 結びにかえて

(2023年07月21日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   客員研究員

小林 正宏 (こばやし まさひろ)

研究・専門分野
国内外の住宅・住宅金融市場

経歴
  • 【職歴】
     1988年 住宅金融公庫入社
     1996年 海外経済協力基金(OECF)出向(マニラ事務所に3年間駐在)
     1999年 国際協力銀行(JBIC)出向
     2002年 米国ファニーメイ特別研修派遣
     2022年 住宅金融支援機構 審議役
     2023年 6月 日本生命保険相互会社 顧問
          7月 ニッセイ基礎研究所 客員研究員(現職)

    【加入団体等】
    ・日本不動産学会 正会員
    ・資産評価政策学会 正会員
    ・早稲田大学大学院経営管理研究科 非常勤講師

    【著書等】
    ・サブプライム問題の正しい考え方(中央公論新社、2008年、共著)
    ・世界金融危機はなぜ起こったのか(東洋経済新報社、2008年、共著)
    ・通貨で読み解く世界経済(中央公論新社、2010年、共著)
    ・通貨の品格(中央公論新社、2012年)など

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【アメリカの商業用不動産市場の動向~FRBは中小銀行のリスク集中を懸念~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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