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2025年10月23日

中国:25年7~9月期GDPの評価-秋風索莫の気配が漂う中国経済。内需の悪化により成長率は減速

経済研究部 主任研究員 三浦 祐介

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■要旨
 
  1. 中国国家統計局が2025年10月20日に発表した25年7~9月期の実質GDP成長率は、前年同期比+4.8%と、前期(25年4~6月期)の同+5.2%から減速した。季節調整後の前期比(年率)は、+4.5%と前期の+4.1%から加速した(下左図)。
     
  2. 前年同期比成長率の需要項目別寄与度をみると、最終消費が+2.7%pt(前期+2.7%pt)、総資本形成が+0.9%pt(同+1.3%pt)、純輸出が+1.2%pt(同+1.2%pt)であった(下右図)。純輸出は、対米輸出悪化の影響が、その他向け輸出の好調により緩和され、横ばい推移となった。内需の寄与度低下は小幅だが、在庫増が押し上げに寄与しているとみられ、実態としては、消費、投資ともに悪化している。経済対策の効果が徐々に低下しているほか、倹約令や過当競争対策の影響が出ている可能性がある。
     
  3. 他方、産業別の実質GDP成長率をみると、第1次産業は前年同期比+4.0%(前期同+3.8%)、第2次産業は同+4.2%(前期同+4.8%)、第3次産業は同+5.4%(前期同+5.7%)であった。製造業や情報通信・ソフトウェア・IT、金融業が堅調に推移する一方、建築業は2四半期連続でマイナス成長、不動産業も4四半期ぶりにマイナス成長となった。卸小売業、宿泊飲食業なども減速した
     
  4. 総じて、成長率は主な需要の統計でみるほどには減速していないが、GDPデフレーターをみると、名目成長率が実質を下回る「名実逆転」は10四半期連続で続いており、需給のバランスは依然不安定な状態にある。1~9月累計の成長率は+5.2%と、「+5%前後」の成長率目標達成の可能性は高まっており、当面は様子見姿勢での経済運営が続く見込みだが、一時不安定化した米中交渉や、再び悪化傾向にある不動産市場、過当競争対策の効果や副作用など、内外の動向には引き続き注視が必要だ。

 
実質GDP成長率/実質GDP成長率の需要項目別寄与度
■目次

1.2025年7~9月のGDPの評価
2.実体経済の動向
  (生産・投資・外需)
  (消費・家計)
  (不動産市場)
  (財政)
3.物価・金融の動向
  (物価)
  (金融)

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年10月23日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主任研究員

三浦 祐介 (みうら ゆうすけ)

研究・専門分野
中国経済

経歴
  • 【職歴】
     ・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
     ・2009年:同 アジア調査部中国室
     (2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
     ・2020年:同 人事部
     ・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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