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東京23区で子育てをしている世帯の過半は年収1千万円以上-1億円を超えた東京23区のマンション市場の行方は?
基礎研REPORT(冊子版)3月号[vol.336]

金融研究部 客員研究員 小林 正宏
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海外投資家による購入も一定にあるとは言え、販売現場からはやはり主力は日本人であり、投機目的ではなく、自ら居住する実需がメインであるという声も聞こえる。では1億円のマンションを買うのに年収はいくら必要であろうか。日本の住宅ローンの大部分は変動金利タイプだが、将来の金利上昇をどの程度織り込んで審査しているのか不明なので、全期間固定金利のフラット35で試算すると、2024年12月の金利は返済期間35年の場合1.86%であり、返済負担率上限35%を適用すれば、年収1千万円での借入可能額は8,999万円となる。頭金が1千万円余あれば億ションに手が届く計算となる。
では年収1千万円の世帯はどの程度いるのか。厚生労働省「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」では、平均所得金額が524万2千円、中央値が405万円となっており、1千万円以上は11.7%となっているが、これは全国の、高齢者も含めた数字である。
東京都区部で子育てをしている世帯の実相をより正確に反映している統計としては総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」がある。同調査によれば、東京特別区の一般世帯*2の「うち夫婦と子供から成る世帯」574,200世帯のうち、1千万円以上は322,800世帯で、56.2%と過半を占める。妻の雇用形態別に見ると、「正規の職員・従業員」が276,200世帯、「非正規の職員・従業員」が262,600世帯とほぼ拮抗しており、妻が正規雇用では69.7%と実に7割近くが1千万円以上で、非正規雇用でも39.9%と4割近くが1千万円以上となっている[図表]。
今後、日銀が利上げを継続して円高が進めば海外投資家にとっての割安感は薄れる。また住宅ローン金利が上昇すれば、借入可能額が減って手が届かなくなる世帯も出てくるだろう。ただ、首都圏の新築マンションは供給が抑制されており、立地のよい物件は限られている。共働き世帯が増え続ける中で、利便性を求める需要は一定に存在し続けると考えられ、一部は中古市場に流れている。
実際、首都圏の中古マンション価格も上がっており、20年弱で㎡単価は約2.4倍になっている。中古価格の上昇で二次取得者にとってはより多くの頭金が用意できるようになっており、相当なレベルで潜在的な購買力があるという事実は無視できない。不動産に限らず、株高の恩恵を受けている層も一定にいるだろう。
都心部のマンション市場は海外投資家の影響も多少あるが、共働き世帯や二次取得層等、一定のボリュームで実需があることも間違いない。いずれにしても、高値圏が続いているだけに、微妙な市況の変化に注意する必要があるだろう。
*1 東京23区、東京都区部、東京特別区は本文中の各調査での呼称をそのまま記載しているが、いずれも同じである
*2 単身世帯以外。
*3 タイムパフォーマンスの略語。
(2025年03月07日「基礎研マンスリー」)
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- 【職歴】
1988年 住宅金融公庫入社
1996年 海外経済協力基金(OECF)出向(マニラ事務所に3年間駐在)
1999年 国際協力銀行(JBIC)出向
2002年 米国ファニーメイ特別研修派遣
2022年 住宅金融支援機構 審議役
2023年 6月 日本生命保険相互会社 顧問
7月 ニッセイ基礎研究所 客員研究員(現職)
【加入団体等】
・日本不動産学会 正会員
・資産評価政策学会 正会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科 非常勤講師
【著書等】
・サブプライム問題の正しい考え方(中央公論新社、2008年、共著)
・世界金融危機はなぜ起こったのか(東洋経済新報社、2008年、共著)
・通貨で読み解く世界経済(中央公論新社、2010年、共著)
・通貨の品格(中央公論新社、2012年)など
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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