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- 日本国のGDP、カリフォルニア州に抜かれる~円安の影響も大きいが、産業構造の違いも~
コラム
2024年12月26日
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日本の名目GDPは季節調整済み年率換算値で2024年第2四半期に607兆5064億円と、初めて600兆円を超え、同第3四半期には610兆2431億円と前期比1.8%(年率)増加している。
一方、2023年のGDPがドイツに抜かれ、世界第3位から第4位に転落したことが話題になったが、アメリカとの差は拡大し続けている。アメリカではカリフォルニア州が人口、経済規模ともに突出しているが、そのカリフォルニア州の直近のGDPは2024年第2四半期時点で4兆0801億ドル余となっている。
2024年第2四半期の円ドルの為替レートは期中平均で155.78円であった。この為替レートでカリフォルニア州のGDPを円換算すると635兆6102億円余と、日本国のGDPを上回る(図表1)。
一方、2023年のGDPがドイツに抜かれ、世界第3位から第4位に転落したことが話題になったが、アメリカとの差は拡大し続けている。アメリカではカリフォルニア州が人口、経済規模ともに突出しているが、そのカリフォルニア州の直近のGDPは2024年第2四半期時点で4兆0801億ドル余となっている。
2024年第2四半期の円ドルの為替レートは期中平均で155.78円であった。この為替レートでカリフォルニア州のGDPを円換算すると635兆6102億円余と、日本国のGDPを上回る(図表1)。
一方で、カリフォルニア州はシリコンバレーで有名なように、IT産業が盛んな州でもある。情報通信業のGDPに占める比率は2024年第2四半期時点で10.8%と、全米平均の5.4%のほぼ2倍の比率を占める。日本の産業別のGDP(経済活動別国内総生産)は暦年ベースで2022年が最新だが、同年の数字は4.9%と全米平均並みであり、カリフォルニア州と比較すれば半分以下である。製造業については、カリフォルニア州が10.0%、全米平均も10.0%であるのに対し、日本は19.2%と高い(図表3)。トレンドとして見た場合、製造業の実質GDPの伸びは日米とも横ばいであるのに対し、情報通信業は日本が横ばいである一方、アメリカは大きく伸びている(図表4)。
製造業は産業としての裾野が広く、分厚い中間層を形成して社会の安定に資するという見方もあり、日本が「モノづくり大国」であり続けることは大事かもしれない。しかしながら、AI(人工知能)や量子コンピューター等の最先端の分野で後れを取ると国力の後退に拍車がかかりかねない。足元の円安は輸入物価の上昇を通じて国民生活を圧迫する一方、製造業には追い風となっており、影響の出方がより分断を進める懸念もある。しかし、為替の影響ばかりに囚われると成長産業への構造変革といった根本的な課題への注視が薄れるおそれもある。
カリフォルニア州に日本国のGDPが抜かれたという事実はそういう日本の立ち位置に警鐘を鳴らすものなのかもしれない。
製造業は産業としての裾野が広く、分厚い中間層を形成して社会の安定に資するという見方もあり、日本が「モノづくり大国」であり続けることは大事かもしれない。しかしながら、AI(人工知能)や量子コンピューター等の最先端の分野で後れを取ると国力の後退に拍車がかかりかねない。足元の円安は輸入物価の上昇を通じて国民生活を圧迫する一方、製造業には追い風となっており、影響の出方がより分断を進める懸念もある。しかし、為替の影響ばかりに囚われると成長産業への構造変革といった根本的な課題への注視が薄れるおそれもある。
カリフォルニア州に日本国のGDPが抜かれたという事実はそういう日本の立ち位置に警鐘を鳴らすものなのかもしれない。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年12月26日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
1988年 住宅金融公庫入社
1996年 海外経済協力基金(OECF)出向(マニラ事務所に3年間駐在)
1999年 国際協力銀行(JBIC)出向
2002年 米国ファニーメイ特別研修派遣
2022年 住宅金融支援機構 審議役
2023年 6月 日本生命保険相互会社 顧問
7月 ニッセイ基礎研究所 客員研究員(現職)
【加入団体等】
・日本不動産学会 正会員
・資産評価政策学会 正会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科 非常勤講師
【著書等】
・サブプライム問題の正しい考え方(中央公論新社、2008年、共著)
・世界金融危機はなぜ起こったのか(東洋経済新報社、2008年、共著)
・通貨で読み解く世界経済(中央公論新社、2010年、共著)
・通貨の品格(中央公論新社、2012年)など
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