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2025年07月09日

景気ウォッチャー調査2025年6月~気温上昇で夏物商材の売れ行きが好調、現状判断DIは2ヵ月連続の上昇~

経済研究部 研究員 佐藤 雅之

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1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.6ポイント上昇の45.0

内閣府が7月8日に公表した景気ウォッチャー調査によると、25年6月の景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.6ポイント上昇の45.0と2ヵ月連続の上昇となった。

地域別では、全国12地域中、8地域で上昇、4地域で低下であった。最も上昇幅が大きかったのは中国(前月差1.8ポイント)で、最も低下幅が大きかったのは沖縄(同▲2.0ポイント)であった。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連が前月差0.3ポイント、企業動向関連が同1.9ポイント、雇用関連が同▲0.1ポイントであった。今回の調査結果をふまえて内閣府は基調判断を「景気は、このところ回復に弱さがみられる。」と据え置いた。先行きについては、「夏のボーナス及び賃上げへの期待がある一方、引き続き価格上昇や米国の通商政策の影響への懸念がみられる。」としている。
景気の現状判断DI(季節調整値)/現状判断DI(季節調整値)の変動要因

2.米国の関税政策の先行き不透明感から、企業は設備投資を様子見

家計動向関連では、住宅関連(前月差▲4.0ポイント)やサービス関連(同▲2.0ポイント)は低下したものの、飲食関連(同2.7ポイント)や小売関連(同1.5ポイント)は上昇した。コメントをみると、「コロナ禍以降、新築住宅やリノベーションの引き合いが戻ってきたが、建設費の高騰で着工までの時間がこれまで以上に掛かっている(中国・設計事務所)」など、建築費高騰に関するコメントがみられた。一方、「段々と暑くなり冷たい商材が売れるようになってきている。来客数もやや増えており、店としてはやや良い方向に向かっている(甲信越・コンビニ)」など、6月は全国的に気温が高かったため、夏物商材を買い求める客が増加しているとのコメントがみられた。

企業動向関連では、製造業(前月差1.1ポイント)、非製造業(同2.4ポイント)ともに上昇した。コメントをみると、「米国の関税政策を受けて、先行きの不透明感から投資を抑制する動きがうかがえる(中国・金融業)」など、米国の関税政策の先行き不透明感から企業は設備投資を様子見していることがわかる。

下図は、景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(現状)」のコメントをもとに計量テキスト分析1を行い、共起ネットワーク2を作成したものである。景況感が改善したと判断した回答者のコメントには、大阪、関西万博、受注、客単価といった単語が多く含まれていることが読み取れる。インバウンドという単語は、景況感が改善したと判断した回答者のコメントと景況感が悪化したと判断した回答者のコメントの両方に含まれていた。
「景気判断理由集(現状)」のコメントの計量テキスト分析
 
1 分析にはKH Coder 3(樋口2020)を使用した
2 共起ネットワークとは、よく一緒に使われる語同士を、線で結んだネットワークのことである

3.景気の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差1.1ポイント上昇の45.9

2~3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月差1.1ポイント上昇の45.9となった。先行き判断DIの内訳をみると、企業動向関連(前月差▲0.1ポイント)は小幅に低下したが、家計動向関連(同1.4ポイント)、雇用関連(同1.3ポイント)のDIが上昇した。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/先行き判断DI(季節調整値)の変動要因
家計動向関連では、「猛暑で熱中症警戒アラートなどが発出されると、外出を控える傾向になるため、不安要素である(甲信越・レジャー施設)」など、猛暑の影響で来場者数の減少を懸念するコメントがみられた一方、「気温上昇の影響もあり、季節商材の動きが良く前年より来客数が増えている。まだ値上がりが続いているため決して良いとはいえないが、この状況が続くと良くなる(南関東・家電量販店)」など、夏物商材の売上増加が期待できそうとのコメントもみられた。

企業動向関連では、「日常の消費は節約傾向が続くが、観光消費は大阪・関西万博が起爆剤となり、更に活性化すると予想される。さらに、インバウンド消費も当面は好調が続く見込みであり、少なくとも10月までは良い動きとなりそうである(近畿・その他サービス業)」など、10月13日まで開催されている大阪・関西万博に関するコメントがみられた。

景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(先行き)」のコメントをもとに計量テキスト分析を行い、共起ネットワークを作成すると、景況感が改善すると判断した回答者のコメントには、夏休み、大阪、関西万博、インバウンドといった単語が多く含まれていることが読み取れる。
「景気判断理由集(先行き)」のコメントの計量テキスト分析
2025年6月調査の結果は、景況感は現状、先行きともに改善していることを示すものであった。6月は全国的に気温が高かったため、夏物商材を買い求める客が増加しているとのコメントがみられたが、この動きは7月も継続すると考えられる。

4月13日から開催されている大阪・関西万博については一部にポジティブなコメントがみられたものの、近畿の景気の判断DIは現状が46.2(前月差0.5ポイント)、先行きが44.7(同▲0.1ポイント)と概ね横ばいとなっており、現時点では景況感の押し上げには至っていない。一方、7月25日にグランドオープンするテーマパーク「ジャングリア沖縄」の影響により、沖縄の景気の先行き判断DIが61.6(同5.8ポイント)と大きく上昇しており今後に注目される。
近畿・沖縄の先行き判断DI(季節調整値)の推移

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月09日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   研究員

佐藤 雅之 (さとう まさゆき)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2020年4月 株式会社横浜銀行
     2024年9月 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

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