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- 2023・2024年度経済見通し(23年5月)
2023年05月18日
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1. 2023年1-3月期は前期比年率1.6%のプラス成長
2023年1-3月期の実質GDPは、前期比0.4%(前期比年率1.6%)のプラス成長となった。
海外経済の減速を背景に輸出が前期比▲4.2%の減少となり、外需が成長率を押し下げた(前期比・寄与度▲0.3%、年率▲1.3%)が、民間消費(前期比0.6%)、設備投資(同0.9%)、住宅投資(同0.2%)の国内民間需要がいずれも増加したことから、内需主導のプラス成長となった。
2023年1-3月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。2022年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比年率0.1%のプラス成長から同▲0.1%のマイナス成長へと下方修正された。2023年1-3月期は事前予想を上回る成長となったが、プラス成長は3四半期ぶりであり、日本経済が安定的な成長軌道に復帰したとは言い難い。
また、2023年1-3月期の実質GDPは、コロナ禍前(2019年10-12月期)の水準を1.3%上回ったが、消費税率引き上げ前のピーク(2019年7-9月期)を▲1.5%下回っている。経済の正常化にはまだ距離がある。
2022年度の実質GDP成長率は1.2%(2021年度は2.6%)、名目GDP成長率は1.9%(2021年度は2.4%)といずれも2年連続のプラスとなった。GDPの水準は、名目では2019年度を上回ったが、実質では2019年度に届いていない。
海外経済の減速を背景に輸出が前期比▲4.2%の減少となり、外需が成長率を押し下げた(前期比・寄与度▲0.3%、年率▲1.3%)が、民間消費(前期比0.6%)、設備投資(同0.9%)、住宅投資(同0.2%)の国内民間需要がいずれも増加したことから、内需主導のプラス成長となった。
2023年1-3月期の1次速報と同時に、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから過去の成長率が遡及改定された。2022年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比年率0.1%のプラス成長から同▲0.1%のマイナス成長へと下方修正された。2023年1-3月期は事前予想を上回る成長となったが、プラス成長は3四半期ぶりであり、日本経済が安定的な成長軌道に復帰したとは言い難い。
また、2023年1-3月期の実質GDPは、コロナ禍前(2019年10-12月期)の水準を1.3%上回ったが、消費税率引き上げ前のピーク(2019年7-9月期)を▲1.5%下回っている。経済の正常化にはまだ距離がある。
2022年度の実質GDP成長率は1.2%(2021年度は2.6%)、名目GDP成長率は1.9%(2021年度は2.4%)といずれも2年連続のプラスとなった。GDPの水準は、名目では2019年度を上回ったが、実質では2019年度に届いていない。
鉱工業生産が弱い動きとなっているのは、海外経済の減速を背景として輸出の低迷が続いているためである。2023年1-3月期の輸出数量指数(当研究所による季節調整値)は、前期比▲3.9%と4四半期連続で低下し、2022年10-12月期の同▲3.5%からマイナス幅が拡大した。品目別には、供給制約の緩和を受けて自動車は持ち直しつつあるが、世界的な半導体関連需要の低迷から、半導体等電子部品、通信機などのIT関連の減少が続いている。
2023年1-3月期の実質GDPは米国が前期比年率1.1%、ユーロ圏が同0.3%となった。先行きについては、米国は累積的な金融引き締めの影響で2023年後半にマイルドな景気後退に陥ることを予想している。ユーロ圏は、エネルギー価格の低下や雇用環境の底堅さ、過剰貯蓄の存在などから景気後退は回避されるものの、2023年中は前期比年率ゼロ%台の低成長が続くだろう。一方、中国の実質GDP成長率は、ゼロコロナ政策とそれに伴うロックダウンの影響で2022年には3.0%と2021年の8.4%から大きく低下したが、ゼロコロナ政策の終了を受けて、2023年には5%台まで高まる可能性が高い。
2023年1-3月期の実質GDPは米国が前期比年率1.1%、ユーロ圏が同0.3%となった。先行きについては、米国は累積的な金融引き締めの影響で2023年後半にマイルドな景気後退に陥ることを予想している。ユーロ圏は、エネルギー価格の低下や雇用環境の底堅さ、過剰貯蓄の存在などから景気後退は回避されるものの、2023年中は前期比年率ゼロ%台の低成長が続くだろう。一方、中国の実質GDP成長率は、ゼロコロナ政策とそれに伴うロックダウンの影響で2022年には3.0%と2021年の8.4%から大きく低下したが、ゼロコロナ政策の終了を受けて、2023年には5%台まで高まる可能性が高い。
(急回復が見込まれる対面型サービス消費とインバウンド需要)
新型コロナウイルス感染症は、5/8に感染症法上の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」に移行した。これにより、感染対策は「法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組み」から、「個人の選択を尊重し、国民の自主的な取組をベースとしたもの」に変更された。
新型コロナウイルス感染症は、5/8に感染症法上の位置づけが「新型インフルエンザ等感染症(いわゆる2類相当)」から「5類感染症」に移行した。これにより、感染対策は「法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組み」から、「個人の選択を尊重し、国民の自主的な取組をベースとしたもの」に変更された。
インバウンド需要はコロナ禍でほぼ消失した状態が続いていたが、2022年10月以降、段階的に水際対策が緩和されてきたことを受けて急回復している。2023年4月の訪日外客数は194万9100人、2019年同月比▲33.4%となり、コロナ禍前(2019年平均)の7割弱の水準まで回復した。国別には、米国、シンガポール、インドネシアはすでにコロナ禍前の水準を上回っている。日本が中国からの入国者に対して新型コロナの検査を義務付けていたこと、中国が日本向けの団体旅行を解禁していないことから、コロナ禍前には全体の約3割を占めていた中国からの訪日客数は2019年同月比15%の低水準にとどまっている。しかし、日本の水際対策はすでに終了しており、中国が日本への団体旅行を解禁すれば、中国からの訪日客数は急回復するだろう。
訪日外客数以上に回復が顕著なのが、訪日外国人の旅行消費額だ。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によれば、2023年1-3月期の訪日外国人旅行消費額は2019年同期比▲11.9%の1兆146億円となった。同時期の訪日外国人旅行者数の同▲37.8%に比べて減少幅が小さいのは、一人当たり消費額が21.2万円と2019年同期比43.8%の大幅増加となっているためだ。これはコロナ禍で一時中止されていた訪日外国人消費動向調査の調査・公表が再開された2021年10-12月期から続く傾向である。
一人当たり消費額が膨らんでいる理由としては、為替レートがコロナ禍前に比べて円安水準になっていること、滞在日数が比較的短い観光客が激減した結果、滞在日数が長いビジネス等の割合が上昇したことが挙げられる。このうち、平均滞在日数については、観光客の急増によって短くなることが想定されるが、円安による消費額の押し上げ効果は今後も残る。
水際対策の終了に伴い、先行きも訪日外客数の回復が続き、2023年中には瞬間風速(月次の年率換算値)でコロナ禍前の水準(2019年の3188万人)を突破する可能性が高い。訪日外客数が年間で過去最高を更新するのは2024年になると予想するが、円安による一人当たり消費額の押し上げが続くため、訪日外国人旅行消費額を5兆円にするという政府目標は2023年に達成されるだろう。
訪日外客数以上に回復が顕著なのが、訪日外国人の旅行消費額だ。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によれば、2023年1-3月期の訪日外国人旅行消費額は2019年同期比▲11.9%の1兆146億円となった。同時期の訪日外国人旅行者数の同▲37.8%に比べて減少幅が小さいのは、一人当たり消費額が21.2万円と2019年同期比43.8%の大幅増加となっているためだ。これはコロナ禍で一時中止されていた訪日外国人消費動向調査の調査・公表が再開された2021年10-12月期から続く傾向である。
一人当たり消費額が膨らんでいる理由としては、為替レートがコロナ禍前に比べて円安水準になっていること、滞在日数が比較的短い観光客が激減した結果、滞在日数が長いビジネス等の割合が上昇したことが挙げられる。このうち、平均滞在日数については、観光客の急増によって短くなることが想定されるが、円安による消費額の押し上げ効果は今後も残る。
水際対策の終了に伴い、先行きも訪日外客数の回復が続き、2023年中には瞬間風速(月次の年率換算値)でコロナ禍前の水準(2019年の3188万人)を突破する可能性が高い。訪日外客数が年間で過去最高を更新するのは2024年になると予想するが、円安による一人当たり消費額の押し上げが続くため、訪日外国人旅行消費額を5兆円にするという政府目標は2023年に達成されるだろう。
(春闘賃上げ率は30年ぶりの高水準へ)
連合が5/10に公表した「2023春季生活闘争 第5回回答集計結果」によれば、2023年の平均賃上げ率は3.67%、ベースアップに相当する「賃上げ分」は2.14%となった。
例年8月頃に厚生労働省から公表される春闘賃上げ率は2022年の2.20%から大きく上昇し、1994年(3.13%)以来の3%台となることがほぼ確実となった。1980年以降で春闘賃上げ率が前年に比べて最も大きく改善したのは、1981年の0.94%(1980年:6.74%→1981年:7.68%)だった が、2023年の改善幅は1%を超える可能性が高い。
連合が5/10に公表した「2023春季生活闘争 第5回回答集計結果」によれば、2023年の平均賃上げ率は3.67%、ベースアップに相当する「賃上げ分」は2.14%となった。
例年8月頃に厚生労働省から公表される春闘賃上げ率は2022年の2.20%から大きく上昇し、1994年(3.13%)以来の3%台となることがほぼ確実となった。1980年以降で春闘賃上げ率が前年に比べて最も大きく改善したのは、1981年の0.94%(1980年:6.74%→1981年:7.68%)だった が、2023年の改善幅は1%を超える可能性が高い。
今回の見通しでは、春闘賃上げ率は2023年に3.60%と1993年(3.89%)以来の高水準となった後、2024年は3.30%と伸びは若干鈍化するが、3%台を確保することを想定している。輸出の低迷を受けて製造業を中心に企業収益の伸びが低下するものの、消費者物価上昇率が高止まりすることが賃上げ率の底上げに寄与するだろう。
2022年度の名目雇用者報酬は前年比2.0%と2年連続の増加となったが、消費者物価の上昇ペースが加速したことから、実質雇用者報酬は同▲1.7%と減少に転じた。2023年度は一人当たり賃金の伸びが高まることを主因として、名目雇用者報酬が前年比3.1%の高い伸びとなるもとで、物価の上昇ペースが鈍化することから、実質雇用者報酬は前年比0.6%と小幅ながら増加に転じるだろう。2024年度は、所定内給与の伸びは若干鈍化するが、所定外給与、特別給与の伸びが高まることから、雇用者報酬は名目で前年比3.2%、実質で同1.9%といずれも前年度から伸びを高めることが予想される。
2022年度の名目雇用者報酬は前年比2.0%と2年連続の増加となったが、消費者物価の上昇ペースが加速したことから、実質雇用者報酬は同▲1.7%と減少に転じた。2023年度は一人当たり賃金の伸びが高まることを主因として、名目雇用者報酬が前年比3.1%の高い伸びとなるもとで、物価の上昇ペースが鈍化することから、実質雇用者報酬は前年比0.6%と小幅ながら増加に転じるだろう。2024年度は、所定内給与の伸びは若干鈍化するが、所定外給与、特別給与の伸びが高まることから、雇用者報酬は名目で前年比3.2%、実質で同1.9%といずれも前年度から伸びを高めることが予想される。
(2023年05月18日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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