2023年04月28日

雇用関連統計23年3月-2ヵ月連続で失業率、有効求人倍率がともに悪化し、雇用情勢の改善に陰り

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は0.2ポイント上昇の2.8%

完全失業率と就業者の推移 総務省が4月28日に公表した労働力調査によると、23年3月の完全失業率は前月から0.2ポイント上昇の2.8%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から37万人の増加となる中、就業者が前月から17万人の増加にとどまったため、失業者は前月から15万人増の195万人(いずれも季節調整値)となった。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差15万人増(2月:同9万人増)と8ヵ月連続で増加し、増加幅は前月から拡大した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年差24万人増(2月:同17万人増)と9ヵ月連続で増加し、製造業が前年差14万人増(2月:同1万人増)と2ヵ月連続で増加した。一方、卸売・小売業が前年差▲32万人減(2月:同▲39万人減)、生活関連サービス・娯楽業が前年差▲6万人減(2月:同▲14万人減)と4ヵ月連続で減少し、医療・福祉が前年差▲18万人減(2月:同0万人)と減少に転じた。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ15万人増(2月:同20万人増)と13ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差▲8万人減(2月:▲9万人減)と2ヵ月連続で減少する一方、非正規の職員・従業員数が前年差23万人増(2月:同29万人増)と14ヵ月連続で増加した。22年以降は、非正規の職員・従業員が増加を続ける一方、正規の職員・従業員は一進一退となっているが、コロナ前の19年3月と比べると、23年3月は正規の職員・従業員が135万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲80万人減となっている。

2.有効求人倍率が3ヵ月連続で低下

厚生労働省が4月28日に公表した一般職業紹介状況によると、23年3月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント低下の1.32倍(QUICK集計・事前予想:1.34倍、当社予想も1.34倍)となった。有効求人数が前月比▲1.5%の減少となる一方、有効求職者数が同0.1%の増加となった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.03ポイント低下の2.29倍となった。

新規求人数は前年比0.7%(2月:同10.4%)と24ヵ月連続で増加したが、前月から伸びが大きく低下した。産業別には、製造業(2月:前年比0.2%→3月:同▲6.3%)、建設業(2月:前年比0.2%→3月:同▲8.0%)が減少に転じ、宿泊・飲食サービス業(2月:前年比37.2%→3月:同5.9%)、卸売・小売業(2月:前年比11.1%→3月:同3.1%)の伸びが大きく低下した。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
雇用情勢は持ち直しの動きが続いていたが、2ヵ月連続で失業率、有効求人倍率がともに悪化するなど、ここにきて陰りがみられる。

製造業を中心に景気が足踏み状態となっていることに加え、雇用調整助成金の特例措置が22年12月以降、通常制度に戻っている(23年3月までは一定の経過措置あり)ことが雇用情勢に悪影響を及ぼしている可能性がある。経過措置は3月末で終了し、4月以降は通常運用に戻っているため、景気の悪化が失業者の増加に直結しやすくなっていることには注意が必要だ。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年04月28日「経済・金融フラッシュ」)

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