2023年04月20日

貿易統計23年3月-1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.3%程度のマイナスに

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易赤字(季節調整値)は5ヵ月連続で縮小

財務省が4月20日に公表した貿易統計によると、23年3月の貿易収支は▲7,545億円の赤字となったが、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲12,948億円、当社予想は▲12,907億円)を大きく下回る結果となった。輸出が前年比4.3%(2月:同6.5%)、輸入が前年比7.3%(2月:同8.3%)といずれも前月から伸びが低下したが、引き続き輸入の伸びが輸出の伸びを上回っているため、貿易収支は前年に比べ▲2,896億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲8.1%(2月:同▲7.8%)、輸出価格が前年比13.6%(2月:同15.5%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲2.6%(2月:同▲7.8%)、輸入価格が前年比10.2%(2月:同17.4%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲12,099億円と22ヵ月連続の赤字となったが、2月の▲12,530億円から赤字幅が若干縮小した。輸出が前月比▲0.8%と2ヵ月ぶりの減少、輸入が同▲1.2%と5ヵ月連続で減少した。貿易赤字(季節調整値)は22年10月の▲22,956億円をピークに2ヵ月連続で縮小している。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 23年3月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=85.4ドル(当研究所による試算値)と、2月の87.8ドルから低下した。原油価格(ドバイ)は3月には70ドル台まで下落したが、足もとでは80ドル台半ばまで上昇している。長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は4月に80ドル台前半まで低下した後、5月には80ドル台後半まで上昇することが見込まれる。

原油高や円安に伴う輸入価格の上昇には歯止めがかかっているが、海外経済の減速を背景に輸出の低迷が続くことから、先行きの貿易収支(季節調整値)は現状程度の赤字が続くことが予想される。
23年3月分と同時に公表された22年度の貿易収支は▲21兆7285億円の赤字となり、前年に比べて▲16兆1418億円の悪化となった。原油高、円安の影響で輸入が前年比32.2%の高い伸びとなり、輸出の伸び(前年比15.5%)を大きく上回った。

22年度の貿易収支の悪化を要因分解すると、数量要因が▲2.0兆円(うち輸出が▲3.4兆円、輸入が1.4兆円)、価格要因が▲14.2兆円(うち輸出が17.3兆円、輸入が▲31.5兆円)となった。価格要因のうち、契約通貨ベースの価格変動が▲9.4兆円、為替変動が▲4.7兆円であった。契約通貨ベースのマイナスは主として原油をはじめとした資源価格の高騰によるもの、為替変動のマイナスは円安の影響が輸出価格よりも輸入価格により大きく表れたことによるものである。
貿易収支悪化の要因分解(2022年度)

2.輸出は中国向けが持ち直す一方、欧米向けは低迷が続く見込み

23年3月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲9.2%(2月:同▲1.3%)、EU向けが前年比▲12.7%(2月:同1.4%)、アジア向けが前年比▲10.8%(2月:同▲12.8%)、うち中国向けが前年比▲20.6%(2月:同▲27.3%)となった。

23年1-3月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比▲0.8%(10-12月期:同▲5.4%)、EU向けが前期比▲7.5%(10-12月期:同▲0.2%)、アジア向けが前期比▲4.4%(10-12月期:同▲7.0%)、うち中国向けが前期比▲9.9%(10-12月期:同▲13.3%)、全体では前期比▲3.9%(10-12月期:同▲3.5%)となった。

海外経済の減速を受けて、主要国・地域向け全ての輸出が低迷している。品目別には、自動車は持ち直しの動きが見られるが、世界的な半導体関連需要の低迷を受けて、半導体等電子部品、通信機などのIT関連の減少が続いている。

先行きの輸出は、ゼロコロナ政策終了後の景気回復が期待される中国向けが持ち直すものの、金融引き締めの影響で景気減速がより鮮明となることが見込まれる欧米向けを中心に低迷が続く可能性が高い。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移

3.1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.3%程度のマイナスに

3月までの貿易統計と2月までの国際収支統計の結果を踏まえて、23年1-3月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比▲2%台の減少、輸入が前期比▲1%程度の減少となった。この結果、1-3月期の外需寄与度は前期比▲0.3%(10-12月期:同0.4%)のマイナスとなることが予想される。

当研究所では、鉱工業生産、建築着工統計等の結果を受けて、4/28のweeklyエコノミストレターで23年1-3月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率の押し下げ要因となる一方、民間消費を中心に国内需要が底堅く推移することから、前期比年率ゼロ%台後半のプラス成長を予想している。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年04月20日「経済・金融フラッシュ」)

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