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2025年10月31日

鉱工業生産25年9月-7-9月期の生産は2四半期ぶりの減少も、均してみれば横ばいで推移

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■要旨

2025年9月の鉱工業生産指数は前月比2.2%と3か月ぶりに上昇した。

7-9月期の生産は前期比▲0.1%と2四半期ぶりの減産。電子部品・デバイスは堅調を維持したが、トランプ関税の影響で米国向け輸出が落ち込んだ自動車が大幅な減産となった。

7-9月期は、トランプ関税の影響で米国向け輸出が大きく落ち込んだ自動車は大幅な減産となったが、自動車以外の業種で関税の影響が限定的となっていることから、全体では小幅な減産で踏みとどまった。

先行きは、自動車関税が27.5%から15%に引き下げられたことにより、自動車産業への悪影響は若干緩和される可能性がある。ただし、元々の関税率2.5%と比べれば依然として大幅な引き上げであることに変わりはない。電子部品・デバイスが堅調に推移するなど、明るい材料はあるものの、米国向け自動車輸出は低迷が続くことから、鉱工業生産は先行きも一進一退で推移することが予想される。

■目次

1.7-9月期は2四半期ぶりの減産
2.生産は先行きも一進一退が続く公算
 

1.7-9月期は2四半期ぶりの減産

1.7-9月期は2四半期ぶりの減産

経済産業省が10月31日に公表した鉱工業指数によると、25年9月の鉱工業生産指数は前月比2.2%(8月:同▲1.5%)と3ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.6%、当社予想は同1.2%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比0.7%と2ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比0.5%と2ヵ月ぶりの上昇となった。

9月の生産を業種別に見ると、輸送機械(除く自動車)は前月比▲6.6%と大きく落ち込んだが、無機・有機化学(前月比9.1%)、金属製品(同7.6%)、生産用機械(同6.2%)が高い伸びとなるなど、15業種中12業種が前月比でプラスとなった。

25年7-9月期の生産は前期比▲0.1%(4-6月期:同0.4%)と2四半期ぶりの減産となった。業種別には、電子部品・デバイスは前期比4.5%(4-6月期:同1.6%)と3四半期連続で上昇したが、トランプ関税の影響で米国向け輸出が落ち込んだことを主因として、自動車が前期比▲3.8%と大きく落ち込んだほか、生産用機械(同▲3.7%)、汎用・業務用機械(同▲2.7%)が低下した。鉱工業生産は四半期ベースでは24年7-9月期以降、前期比±0.5%の狭い範囲で一進一退の動きが続いている。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は25年4-6月期の前期比3.9%の後、7-9月期は同▲3.6%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は25年4-6月期の前期比▲2.4%の後、7-9月期は同▲4.1%となった。

25年4-6月期のGDP統計の設備投資は前期比0.6%と3四半期連続で増加した。高水準の企業収益を背景に設備投資は回復が続いているが、7-9月期は減速することが見込まれる。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は25年4-6月期の前期比▲0.1%の後、7-9月期は同▲2.9%となった。耐久消費財が前期比▲5.1%(4-6月期:同▲1.4%)、非耐久消費財が前期比1.6%(4-6月期:同▲0.7%)であった。

25年4-6月期のGDP統計の民間消費は前期比0.4%の増加となったが、7-9月期は横ばい圏にとどまることが見込まれる。

2.生産は先行きも一進一退が続く公算

2.生産は先行きも一進一退が続く公算

製造工業生産予測指数は、25年10月が前月比1.9%、11月が同▲0.9%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(9月)、予測修正率(10月)はそれぞれ▲0.3%、0.4%であった。

予測指数を業種別にみると、7-9月期に大きく落ち込んだ業種のうち、汎用・業務機械(10月:前月比▲1.6%、11月が同▲1.3%)は低迷が続く見込みとなっているのに対し、生産用機械(10月:前月比1.0%、11月:同4.7%)、輸送機械(10月:前月比3.4%、11月:同2.1%)は強めの計画となっている。自動車を含む輸送機械については、米国の自動車関税が9/16に27.5%から15%に引き下げられたことがプラスに働いている可能性もある。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
25年9月の生産指数を10、11月の予測指数で先延ばしすると、25年10、11月の平均は7-9月期を2.4%上回るが、実際の生産の伸びは計画を大きく下回る傾向があるため、現時点で10-12月期の生産が増加に転じるかは不透明である。

7-9月期はトランプ関税の影響で米国向け輸出が大きく落ち込んだ自動車は大幅な減産となったものの、自動車以外の業種で関税の影響が限定的となっていることから、全体では小幅な減産で踏みとどまった。

先行きは、自動車関税が27.5%から15%に引き下げられたことにより、自動車産業への悪影響は若干緩和される可能性がある。ただし、元々の関税率2.5%と比べれば依然として大幅な引き上げであることに変わりはない。電子部品・デバイスが堅調に推移するなど明るい材料はあるものの、米国向け自動車輸出の低迷が続くことから、鉱工業生産は先行きも一進一退で推移することが予想される。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年10月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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