2023年03月31日

雇用関連統計23年2月-失業率、有効求人倍率がともに悪化

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は0.2ポイント上昇の2.6%

完全失業率と就業者の推移 総務省が3月31日に公表した労働力調査によると、23年2月の完全失業率は前月から0.2ポイント上昇の2.6%(QUICK集計・事前予想:2.4%、当社予想は2.5%)となった。

労働力人口が前月から▲20万人の減少となる中、就業者が前月から▲30万人減少したため、失業者は前月から13万人増の180万人(いずれも季節調整値)となった。

非労働力化が進む中で失業者が増加しており、内容的にも悪い失業率の上昇と言える。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差9万人増(1月:同43万人増)と7ヵ月連続で増加したが、増加幅は前月から大きく縮小した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年差17万人増(1月:同15万人増)と8ヵ月連続で増加し、製造業が前年差1万人増(1月:同▲2万人減)と3ヵ月ぶりに増加した。一方、卸売・小売業が前年差▲39万人減(1月:同▲10万人減)、生活関連サービス・娯楽業が前年差▲14万人(1月:同▲1万人減)と減少幅が拡大し、医療・福祉が前年差0万人(1月:同17万人増)の横ばいにとどまった。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ20万人増(1月:同85万人増)と12ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差▲9万人減(1月:18万人増)と3ヵ月ぶりに減少する一方、非正規の職員・従業員数が前年差29万人増(1月:同66万人増)と13ヵ月連続で増加した。22年以降は、非正規の職員・従業員が増加を続ける一方、正規の職員・従業員は一進一退となっているが、コロナ前の19年1月と比べると、23年2月は正規の職員・従業員が66万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲60万人減となっている。

2.有効求人倍率が2ヵ月連続で低下

厚生労働省が3月31日に公表した一般職業紹介状況によると、23年2月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント低下の1.34倍(QUICK集計・事前予想:1.36倍、当社予想も1.36倍)となった。有効求人数が前月比0.8%の増加となったが、有効求職者数が同1.6%の増加とそれを上回る伸びとなったことが求人倍率の低下につながった。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.06ポイント低下の2.32倍となった。

新規求人数は前年比10.4%(1月:同4.2%)と23ヵ月連続で増加し、前月から伸びを高めたが、季節調整値では前月比▲0.4%の減少となっている。産業別には、宿泊・飲食サービス業(1月:前年比27.0%→2月:同37.2%)、卸売・小売業(1月:前年比3.8%→2月:同11.1%)が伸びを大きく高めたほか、生活関連サービス・娯楽業(1月:前年比▲0.2%→2月:同6.0%)が、製造業(1月:前年比▲4.0%→2月:同0.2%)、建設業(1月:前年比▲5.4%→2月:同0.3%)が増加に転じた。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
雇用情勢は全体としては持ち直しの動きが続いているが、23年2月は失業率、有効求人倍率がともに悪化するなど、一部に陰りもみられる。

特に、製造業は生産活動停滞の影響が雇用に表れ始めている。先行きについては、経済活動の正常化に伴い宿泊・飲食サービスなどの対面型サービスが回復する一方、海外経済の減速を背景とした輸出、生産の低迷はしばらく続くことが見込まれる。失業率、有効求人倍率とも当面は横ばい圏の動きが続くことが予想される。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年03月31日「経済・金融フラッシュ」)

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