2023年03月24日

消費者物価(全国23年2月)-政府の負担緩和策でコアCPI上昇率は1%ポイント縮小したが、基調的な物価上昇圧力は強い

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.政府の負担緩和策でコアCPI上昇率が大きく低下

消費者物価指数の推移 総務省が3月24日に公表した消費者物価指数によると、23年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.1%(1月:同4.2%)となり、上昇率は前月から1.1ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:3.1%、当社予想も3.1%)通りの結果であった。

食料(生鮮食品を除く)の伸びがさらに高まったが、政府の負担緩和策の影響で電気代、都市ガス代の伸びが大きく低下し、コアCPI上昇率を1%ポイント強押し下げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比3.5%(1月:同3.2%)、総合は前年比3.3%(1月:同4.3%)であった。
コアCPIの内訳をみると、政府の負担緩和策の影響で、電気代(1月:前年比20.2%→2月:同▲5.5%)、ガス代(1月:前年比24.3%→2月:同12.5%)の伸びが大きく低下したことに加え、ガソリン(1月:前年比0.4%→2月:同▲2.5%)、灯油(1月:前年比4.3%→2月:同0.5%)も伸びが低下したことから、エネルギー価格の上昇率は前年比▲0.7%(1月:同14.6%)と21年3月以来、1年11ヵ月ぶりにマイナスとなった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 食料(生鮮食品を除く)は前年比7.8%(1月:同7.4%)となり、上昇率は前月から0.4ポイント拡大した。原材料価格高騰の影響で、食用油(前年比27.6%)、マヨネーズ(同21.1%)、麺類(同12.6%)などが引き続き前年比二桁の高い伸びとなっているほか、鳥インフルエンザの影響もあり、卵の上昇率が1月の前年比10.7%から同19.9%へと急加速した。また、原材料コストの増加に加え、人件費上昇の影響を受けやすい一般外食が1月の前年比6.5%から同7.2%へと伸びが大きく高まった。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.06%(1月:1.22%)、食料(生鮮食品を除く)が1.83%(1月:1.74%)、携帯電話通信料が0.05%(1月:同0.03%)、全国旅行支援が▲0.14%(1月:同▲0.13%)、その他が1.40%(1月:1.34%)であった。

2.物価上昇品目の割合が8割を超える

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2月の上昇品目数は421品目(1月は414品目)、下落品目数は57品目(1月は64品目)となり、上昇品目数が前月から増加した。上昇品目数の割合は80.7%(1月は79.3%)、下落品目数の割合は10.9%(1月は12.3%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は69.7%(1月は67.0%)であった。

価格転嫁の主因となっていた資源高や円安は一服しているが、川下にあたる消費者物価指数にその影響が反映されるまでには時間がかかる。このため、上昇品目割合の高止まりはしばらく続くだろう。

3.コアCPI上昇率は23年夏場まで2%台後半で高止まりへ

23年2月のコアCPIは、電気・都市ガス代の負担緩和策を主因として、1月の前年比4.2%から同3.1%へと伸び率が大きく縮小したが、コアコアCPIの上昇ペースが一段と加速するなど、基調的な物価上昇圧力は一段と高まっている。
財・サービス別の消費者物価(生鮮食品を除く) 電力各社は4月以降の値上げを申請していたが、エネルギー価格が申請時よりも下落していることを受けて、経済産業省は直近のデータをもとに再計算した上で、再申請する方針としている。ただし、当初の申請から値上げ幅は圧縮されるものの、電気料金の大幅な値上げが実施される可能性は高く、エネルギー価格の再上昇が物価の押し上げ要因となりそうだ。

原油高や円安の一服により、物価高の主因となっていた輸入物価の上昇には歯止めがかかっている。このため、今後は原材料コストを価格転嫁する動きが徐々に弱まり、財価格の上昇率は鈍化する公算が大きい。一方、下落が続いていたサービス価格は22年8月に上昇に転じた後、23年2月には前年比1.3%まで伸びを高めている。3月以降は鉄道運賃の値上げが実施されること、賃上げに伴う人件費の増加を価格転嫁する動きが広がることなどを踏まえれば、サービス価格の上昇率は今後さらに高まることが見込まれる。

コアCPI上昇率は、23年3月には3%を割り込む可能性が高いが、夏場までは2%台後半で高止まりすることが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年03月24日「経済・金融フラッシュ」)

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