2023年03月03日

雇用関連統計23年1月-生産活動停滞の影響で製造業の新規求人数が減少

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は0.1ポイント低下の2.4%

完全失業率と就業者の推移 総務省が3月3日に公表した労働力調査によると、23年1月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下の2.4%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から12万人の増加となる中、就業者が前月から18万人増加し、失業者は前月から▲4万人減の167万人(いずれも季節調整値)となった。
23年1月分の公表と同時に過去に遡って季節調整値が改定された。改定前は22年10、11月の2ヵ月で就業者は▲30万人減少していたが、改定後は同時期の減少幅は▲19万人減へと縮小し、22年12月(9万人増)、23年1月(18万人増)の2ヵ月でその減少を取り戻す形となった。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差43万人増(12月:同10万人増)と6ヵ月連続で増加し、増加幅は前月から拡大した。産業別には、製造業が前年差▲2万人減(12月:同▲14万人減)、卸売・小売業が前年差▲10万人減(12月:同▲8万人減)と減少が続いたが、宿泊・飲食サービス業が前年差15万人増(12月:同11万人増)と6ヵ月連続で増加し、医療・福祉が前年差17万人(12月:同▲2万人減)と増加に転じた。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ85万人増(12月:同30万人増)と11ヵ月連続で増加し、増加幅が大きく拡大した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差18万人増(12月:▲4万人減)と2ヵ月ぶりの増加、非正規の職員・従業員数が前年差66万人増(12月:同35万人増)と12ヵ月連続で増加し、増加幅が大きく拡大した。ただし、コロナ前の19年1月と比べると、正規の職員・従業員が82万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲26万人減となっている。

2.製造業の新規求人数が2ヵ月連続で減少

厚生労働省が3月3日に公表した一般職業紹介状況によると、23年1月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント低下の1.35倍(QUICK集計・事前予想:1.35倍、当社予想も1.35倍)となった。有効求職者数が前月比0.6%の増加となる一方、有効求人数が前月比▲0.1%の減少となった。有効求人倍率が前月から低下したのは、20年8月以来、2年5ヵ月ぶりとなる。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から横ばいの2.38倍となった。

新規求人数は前年比4.2%(12月:同4.8%)と22ヵ月連続で増加したが、増加率は前月から鈍化した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年比27.0%(12月:同6.9%)と伸びを大きく高めたが、生活関連サービス・娯楽業が前年比▲0.2%(12月:同18.5%)と16ヵ月ぶりに減少したほか、製造業(前年比▲4.0%)、建設業(同▲5.4%)が2ヵ月連続で減少した。製造業は、生産活動停滞の影響が新規求人数の減少をもたらしている。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
雇用情勢は全体としては持ち直しの動きが続いているが、有効求人倍率が2年5ヵ月ぶりに低下するなど、一部に陰りもみられる。

特に、製造業は就業者、新規求人ともに2ヵ月連続で減少しており、生産活動の停滞が雇用に影響を及ぼし始めている。先行きについては、経済活動の正常化に伴い宿泊・飲食サービスなどの対面型サービスが回復する一方、海外経済の減速を背景とした輸出、生産の低迷はしばらく続くことが見込まれる。失業率、有効求人倍率とも当面は横ばい圏の動きが続くことが予想される。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年03月03日「経済・金融フラッシュ」)

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