2023年02月16日

貿易統計23年1月-輸出の低迷が一段と鮮明に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.大幅な貿易赤字が続く

財務省が2月16日に公表した貿易統計によると、23年1月の貿易収支は▲34,966億円の赤字となったが、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲38,807億円、当社予想は▲38,715億円)を下回る結果となった。輸入が前年比17.8%(12月:同20.7%)と引き続き高い伸びとなる一方、輸出が前年比3.5%と11月の同11.5%から伸びが大きく鈍化したため、貿易収支は前年に比べ▲12,972億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲11.5%(12月:同▲7.1%)、輸出価格が前年比16.9%(12月:同20.0%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比▲2.4%(12月:同▲6.4%)、輸入価格が前年比20.7%(12月:同29.0%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
原数値の貿易収支は大幅な赤字となったが、1月は正月休みの影響で輸出量が少なく貿易赤字になりやすいという季節性があり、貿易収支の実勢を判断するためには季節調整値を用いることが適切である。季節調整済の貿易赤字は▲18,213億円と、22年12月の▲18,202億円からほぼ変わらなかった。円高の影響などから、輸出(前月比▲6.3%)、輸入(同▲5.1%)ともに減少した。貿易赤字(季節調整値)は22年5月以降、年率▲20兆円台の赤字が続いている。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 1月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=88.3ドル(当研究所による試算値)と、12月の95.2ドルから低下した。足もとの原油価格(ドバイ)は、80ドル台前半で推移しており、長期契約で販売する際に指標価格に上乗せされる調整金、船賃、保険料などを含めた通関ベースの原油価格は23年2月以降も90ドル前後で推移することが見込まれる。

海外経済の減速を背景に輸出が低迷する一方、原油価格の下落、円安の一服を受けて輸入価格が低下することから、先行きの貿易赤字は高水準ながらも縮小することが予想される。

2.輸出は低迷が続く見込み

23年1月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲3.6%(12月:同▲2.8%)、EU向けが前年比▲4.3%(12月:同10.2%)、アジア向けが前年比▲15.5%(12月:同▲12.4%)、うち中国向けが前年比▲30.7%(12月:同▲24.0%)となった。

23年1月の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比▲4.1%(12月:同0.9%)、EU向けが前月比▲7.6%(12月:同▲2.0%)、アジア向けが前月比▲3.9%(12月:同▲3.1%)、うち中国向けが前月比▲7.9%(12月:同▲8.4%)、全体では前月比▲2.2%(12月:同▲2.6%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移/IT関連輸出の推移
アジア向け、中国向けは春節の時期のずれ(2022年は2/1~、2023年は1/22)の影響で、実勢よりも落ち込みが大きくなっている可能性があり、基調を判断するためには2月の結果と合わせてみる必要がある。一方、米国向けは2022年後半から低迷が続き、2022年を通して堅調を維持していたEU向けもここにきて大きく落ち込んでおり、輸出数量全体としては弱い動きが続いている。品目別には、世界的な半導体関連需要の低迷を受けて、半導体等電子部品、通信機などのIT関連の減少幅が拡大しているほか、供給制約の影響が残る自動車が一進一退の動きとなっている。

先行きの輸出は、ゼロコロナ政策終了後の景気回復が期待される中国向けの持ち直しが見込まれるものの、金融引き締めの影響で景気減速がより鮮明となることが見込まれる欧米向けを中心に低迷が続く可能性が高い。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年02月16日「経済・金融フラッシュ」)

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