2023年01月31日

鉱工業生産22年12月-2四半期ぶりの減産、当面は弱い動きが続く見通し

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

文字サイズ

1.10-12月期は2四半期ぶりの減産

経済産業省が1月31日に公表した鉱工業指数によると、22年12月の鉱工業生産指数は前月比▲0.1%(10月:同0.2%)と2ヵ月ぶりに低下したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.2%、当社予想は同0.1%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.7%と4ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲0.5%と2ヵ月ぶりの低下となった。

12月の生産を業種別に見ると、半導体不足などの供給制約の影響で不安定な動きが続く自動車が前月比0.6%(11月:同▲0.8%)と2ヵ月ぶりに上昇したが、汎用・業務用機械が前月比▲6.0%と11月の同▲8.0%に続く大幅減産となったほか、鉄鋼・非鉄金属(前月比▲3.0%)、電気・情報通信機械(同▲1.2%)なども落ち込んだ。

22年10-12月期の生産は前期比▲3.1%(7-9月期:同5.8%)と2四半期ぶりの減産となった。業種別には、中国のロックダウン解除を受けて7-9月期に前期比12.7%の高い伸びとなった自動車が前期比▲4.3%の低下となったほか、世界的な半導体関連の低迷を反映し、電子部品・デバイスが前期比▲5.9%(7-9月期:同▲7.8%)と3四半期連続の減産となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年7-9月期の前期比13.1%の後、10-12月期は同▲7.1%と4四半期ぶりの低下となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年7-9月期の前期比▲2.5%の後、10-12月は同▲2.4%と2四半期連続で低下した。

GDP統計の設備投資は、22年4-6月期の前期比2.0%に続き、7-9月期も同1.5%と高めの伸びとなった。高水準の企業収益を背景に、設備投資は基調としては持ち直しの動きが続いていると判断されるが、鉱工業指数の出荷動向を踏まえると、10-12月期は伸びが大きく低下する可能性がある。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は22年7-9月期の前期比4.9%の後、10-12月期は同0.9%と2四半期連続で上昇した。非耐久消費財は前期比▲1.0%(7-9月期:同▲0.1%)と2四半期連続で低下したが、耐久消費財が前期比2.9%(7-9月期:同12.1%)と2四半期連続で上昇した。

22年7-9月期のGDP統計の民間消費は、物価高や新型コロナウイルスの感染拡大という逆風を受けながらも、特別な行動制限がなかったことから、前期比0.1%の増加となった。10-12月期の民間消費は全国旅行支援による押し上げ効果もあり、伸びを高めることが予想される。

2.海外経済減速の影響で弱い動きが続く見通し

製造工業生産予測指数は、23年1月が前月比0.0%、2月が同4.1%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(22年12月)、予測修正率(23年1月)はそれぞれ▲4.6%、▲4.1%であった。

予測指数を業種別にみると、輸送機械は23年1月が前月比▲6.6%の減産の後、2月は同13.8%の高い伸びとなっている。ただし、1月の予測修正率が▲6.2%の大幅マイナスとなるなど、生産計画の下方修正に歯止めがかかっておらず、実際の生産は下振れする可能性が高いだろう。部品不足などの供給制約に加え、海外経済の減速に伴う輸出低迷という需要要因も自動車生産の下押し圧力となりつつある。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
23年1月の予測指数は前月比横ばいだが、実際の生産が予測指数から大きく下振れる傾向があることを考慮すれば、実質的には減産と読み取ることができる。個人消費を中心に国内需要が一定の底堅さを維持していることが下支えとなるものの、欧米を中心とした海外経済の悪化を背景に輸出の低迷が続く可能性が高いことから、生産は当面弱い動きが続くことが予想される。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【鉱工業生産22年12月-2四半期ぶりの減産、当面は弱い動きが続く見通し】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

鉱工業生産22年12月-2四半期ぶりの減産、当面は弱い動きが続く見通しのレポート Topへ