2023年01月31日

雇用関連統計22年12月-雇用情勢の改善に陰りがみられる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.失業率は前月から横ばいの2.5%

完全失業率と就業者の推移 総務省が1月31日に公表した労働力調査によると、22年12月の完全失業率は前月から横ばいの2.5%(QUICK集計・事前予想:2.5%、当社予想も2.5%)となった。

労働力人口が前月から8万人の増加となる中、就業者が前月から6万人増加し、失業者は前月から▲2万人減の171万人(いずれも季節調整値)となった。

労働力人口、就業者ともに前月から増加したが、10、11月の2ヵ月で労働力人口は▲40万人、就業者は▲30万人減少していたことを考慮すれば、戻りは弱い。
産業別・就業者数の推移/雇用形態別雇用者数
就業者数は前年差10万人増(11月:同28万人増)と5ヵ月連続で増加したが、増加幅は前月から縮小した。産業別には、宿泊・飲食サービス業が前年差11万人増(11月:同19万人増)と6ヵ月連続で増加したが、製造業が前年差▲14万人減(11月:同16万人増)、卸売・小売業が前年差▲8万人減(11月:同0万人)、医療・福祉が前年差▲2万人(11月:同1万人増)と減少に転じた。

雇用者数(役員を除く)は前年に比べ30万人増(11月:同40万人増)と10ヵ月連続で増加した。雇用形態別にみると、正規の職員・従業員数が前年差▲4万人減(11月:10万人増)と3ヵ月ぶりに減少したが、非正規の職員・従業員数が前年差35万人増(11月:同30万人増)と11ヵ月連続の増加となった。ただし、コロナ前の19年12月と比べると、正規の職員・従業員が33万人増となっているのに対し、非正規の職員・従業員は▲41万人減となっている。

2.製造業の新規求人数が22ヵ月ぶりの減少

厚生労働省が1月31日に公表した一般職業紹介状況によると、22年12月の有効求人倍率は前月から横ばいの1.35倍(QUICK集計・事前予想:1.35倍、当社予想は1.36倍)となった。有効求人数が前月比▲0.4%と3ヵ月連続で減少、有効求職者数が前月比▲0.3%と6ヵ月連続で減少した。

有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から▲0.03ポイント低下の2.39倍と3ヵ月ぶりに低下した。

新規求人数は前年比4.8%(11月:同8.7%)と21ヵ月連続で増加したが、増加率は前月から鈍化した。産業別には、生活関連サービス・娯楽業が前年比18.5%(11月:同6.3%)の高い伸びとなったが、宿泊・飲食サービス業が前年比6.9%(11月:同21.2%)と伸びが大きく鈍化したほか、建設業(前年比▲6.2%)が2ヵ月ぶり、製造業(同▲0.1%)が22ヵ月ぶりに減少に転じた。
有効求人倍率の推移/産業別新規求人数
22年12月は失業率、有効求人倍率ともに前月と変らなかったが、就業者の増加ペースが鈍化していること、有効求人数が小幅ながら3ヵ月連続で減少するなど、雇用情勢の改善には陰りが見られる。

輸出の低迷を背景に製造業の生産活動が弱い動きとなっていること、物価高が国内需要の下押し要因となっていることなどが、労働市場に悪影響を及ぼし始めている可能性がある。企業の人手不足感は引き続き強いため、雇用情勢が一気に悪化する可能性は低いと考えられる。ただし、雇用調整助成金の特例措置は22年12月以降、通常制度に戻っている(一定の経過措置あり)ため、景気が下振れた場合には、失業者の増加につながるリスクが高まるだろう。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

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