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2025年07月31日

米GDP(25年4-6月期)-前期比年率+3.0%と外需押上げからプラス転換、市場予想(+2.6%)も上回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:成長率は外需の押上げにより前期からプラス転換、市場予想も上回る

7月30日、米商務省の経済分析局(BEA)は25年4-6月期のGDP統計(1次速報値)を公表した。4-6月期の実質GDP成長率(以下、成長率)は、季節調整済の前期比年率1で+3.0%(前期:▲0.5%)と22年1-3月期以来のマイナス成長となった前期からプラス成長に転換し、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+2.6%も上回った(図表1・2)。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)/(図表2)米国のGDP(項目別)
4-6月期の成長率を需要項目別にみると、設備投資が前期比年率+1.9%(前期:+10.3%)と高い伸びとなった前期から大幅に伸びが鈍化したほか、住宅投資が▲4.6%(前期:▲1.3%)と2期連続のマイナス成長となった。さらに、在庫投資の成長率寄与度が▲3.17%ポイント(前期:+2.59%ポイント)と前期から大幅な成長押し下げに転換した(図表2)。

一方、政府支出が前期比年率+0.4%(前期:▲0.6%)と前期から小幅ながらプラスに転じたほか、個人消費が+1.4%(前期:+0.5%)と前期から伸びが加速した。さらに、外需の成長率寄与度が+4.99%ポイント(前期:▲4.61%ポイント)と1950年以降で最大のマイナス幅となった前期から大幅なプラスに転じて成長率を押し上げた。当期のプラス成長への転換はトランプ関税前の駆け込み需要で輸入が急増し、外需が成長率を押し下げた前期から駆け込み需要の反動に伴う輸入の大幅な減少から、外需が大幅な成長押上げに転じたことが大きい。

一方、個人消費と民間固定投資の合計で示される民間国内最終需要は前期比年率+1.2%(前期:+1.9%)と3期連続で低下したほか、当期の伸びが小幅に留まった。

このように、当期は外需の大幅な成長押上げによってプラス成長に転換したほか、市場予想を上回る高い伸びとなったものの、民間国内最終需要の低い伸びにみられるように表面的な数値が示す程、国内需要は強くないと言えよう。
 
1 以降、本稿では特に断りの無い限り季節調整済の実質値を指すこととする。

2.結果の詳細:

(個人消費・個人所得)自動車関連の消費が持ち直し
4-6月期の個人消費は、財消費が前期比年率+2.2%(前期:+0.1%)、サービス消費が+1.1%(前期:+0.6%)といずれも前期から伸びが加速した(図表3)。

財消費では、非耐久財が+1.3%(前期:+2.1%)と前期から伸びが鈍化した一方、耐久財が+3.7%(前期:▲3.7%)と前期からプラスに転じて財消費全体を押し上げた。

耐久財では、家具・家電が▲2.4%(前期:+1.5%)、娯楽・スポーツカーが▲3.8%(前期:+0.4%)と前期からマイナスに転じた一方、自動車・自動車部品が+16.3%(前期:▲11.2%)と2桁のマイナスとなった前期から2桁のプラスに転じて耐久財消費全体を押し上げた。

非耐久財は食料・飲料が+0.1%(前期:+1.0%)、衣料・靴が+4.7%(前期:+7.0%)と前期から伸びが鈍化したほか、ガソリン・エネルギーが▲4.2%(前期:+3.5%)と前期からマイナスに転じた。

サービス消費は、住宅・公共料金が▲0.2%(前期:+2.9%)、輸送サービスが▲3.2%(前期:+1.4%)と前期からマイナスに転じた。一方、医療サービスが+3.0%(前期:+3.1%)と前期並みの伸びを維持したほか、金融サービスが+2.0%(前期:+0.1%)と前期から伸びが加速したことに加え、娯楽サービスが+2.3%(前期:▲5.1%)、飲食・宿泊サービスが+3.2%(前期:▲1.8%)と前期からプラスに転じてサービス消費全体を押し上げた。

一方、実質可処分所得は前期比年率+3.0%(前期:+2.5%)と前期から伸びが加速した(図表4)。貯蓄率は4.7%(前期:4.3%)と前期から上昇した。
(図表3)米国の実質個人消費支出(寄与度)/(図表4)米国の実質可処分所得伸び率と貯蓄率
(民間投資)設備機器投資の伸びが大幅に鈍化
4-6月期の民間設備投資は知的財産投資が前期比年率+6.4%(前期:+6.0%)と小幅ながら前期から伸びが加速した一方、設備機器投資が+4.8%(前期:+23.7%)と2桁の伸びとなった前期から大幅に伸びが鈍化したほか、建設投資が▲10.3%(前期:▲2.4%)と前期からマイナス幅が拡大した(図表5)。
(図表5)米国の実質設備投資(寄与度)と実質住宅投資 建設投資では電力・通信が▲5.3%(前期:+8.1%)と前期からマイナスに転じたほか、製造業が▲5.5%(前期:▲5.2%)と前期並みのマイナスとなった。さらに、商業・医療が▲7.4%(前期:▲3.4%)、資源関連が▲35.6%(前期:▲1.3%)と前期からマイナス幅が拡大して建設投資全体を押し下げた。とくに当期は資源関連の落ち込みが大きくなった。

設備機器投資は輸送機器が+11.9%(前期:+6.8%)と前期から伸びが加速した。一方、産業機器が+4.5%(前期:+4.7%)と前期から小幅に伸びが鈍化したほか、情報処理関連が+5.4%(前期:+72.9%)と2桁の高い伸びとなった前期から大幅に鈍化した。

知的財産投資では、娯楽・文学等が▲6.1%(前期:▲4.1%)と前期からマイナス幅が拡大した一方、研究・開発が▲1.6%(前期:▲2.0%)と前期から小幅にマイナス幅が縮小したほか、ソフトウエアが+18.3%(前期:+17.6%)と前期に続き2桁の伸びを維持して知的財産投資全体を押し上げた。

最後に住宅投資は、集合住宅が▲1.3%(前期:▲11.0%)と前期に続いてマイナスとなったものの、マイナス幅が縮小した一方、戸建てが▲12.6%(前期:▲0.3%)と前期からマイナス幅が拡大して住宅投資全体を押し下げた。
(図表6)米国の実質政府支出(寄与度) (政府支出)国防関連支出が増加
4-6月期の政府支出は、連邦政府が前期比年率▲3.7%(前期:▲4.6%)と前期からマイナス幅が縮小したほか、州・地方政府支出が+3.0%(前期:+2.0%)と前期から伸びが加速した(図表6)。

連邦政府支出では、非国防支出が▲11.2%(前期:▲1.2%)と前期からマイナス幅が拡大した一方、国防関連支出が+2.2%(前期:▲7.1%)と前期からプラスに転じた。
(貿易)トランプ関税前の駆け込み需要の反動で財輸入が大幅に減少
 4-6月期の輸出入は輸出が前期比年率▲1.8%(前期:+0.4%)と前期から小幅なマイナスに転じたほか、輸入が▲30.3%(前期:+37.9%)とトランプ関税前の駆け込み需要で2桁の伸びとなった前期から駆け込み需要の剥落に伴う反動もあって2桁の大幅なマイナスに転じた。

輸出入ともに前期からマイナスに転じる中、輸入の大幅な減少が外需の成長率寄与度を押し上げた。

輸出を仔細にみると、サービス輸出が+4.4%(前期:▲9.7%)と前期からプラスに転じた一方、財輸出が▲5.0%(前期:+6.5%)と前期からマイナスに転じて輸出全体を押し下げた(図表7)。

財輸出では、食料・飲料が▲1.0%(前期:▲18.9%)と前期に続いてマイナスとなったものの、マイナス幅が縮小した。一方、工業用原料が▲8.4%(前期:▲6.8%)と前期からマイナス幅が拡大したほか、資本財(自動車関連除く)が+2.9%(前期:+38.9%)と前期から大幅に伸びが鈍化した。さらに、自動車関連が▲40.2%(前期:+11.8%)と前期から大幅なマイナスに転じたほか、消費財(食料、自動車関連除く)も▲1.2%(前期:13.2%)と小幅ながら前期からマイナスに転じた。

サービス輸出では、輸送が▲6.6%(前期:横這い)と前期からマイナスに転じた一方、旅行が+9.8%(前期:▲12.6%)と前期からプラスに転じてサービス輸出全体を押し上げた。

一方、輸入はサービス輸入が▲5.4%(前期:▲6.3%)と前期からマイナス幅が縮小した一方、財輸入が▲35.3%(前期:+51.6%)と前期から大幅なマイナスに転じた(図表8)。

財輸入では、資本財(自動車関連除く)が▲1.0%(前期:+49.0%)と前期から小幅ながらマイナスに転じたことに加え、食料・飲料が▲22.0%(前期:+3.6%)、工業用原料が▲25.0%(前期:+8.4%)、自動車関連が▲34.5%(前期:+12.0%)、消費財(食料、自動車関連除く)が▲70.4%(前期:+142.9%)とトランプ関税の駆け込み前の輸入急増の反動から2桁の大幅な輸入減少に転じた。

サービス輸入は、輸送が▲22.4%(前期:+7.8%)と前期からマイナスに転じたほか、旅行が▲25.2%(前期:▲9.4%)と前期からマイナス幅が拡大した。一方、保険、金融、通信、情報サービスなどが含まれるその他ビジネスサービスが+11.3%(前期:▲7.0%)と前期から2桁のプラスに転じた。
(図表7)米国の実質輸出(寄与度)/(図表8)米国の実質輸入(寄与度)
(物価・名目値)PCE価格指数は総合、コアともに前期比、前年同期比ともに前期から低下
4-6月期のGDP価格指数は前期比年率+2.0%(前期:+3.8%)と前期から低下したほか、市場予想(同+2.2%)も下回った。この結果、名目GDP成長率は前期比年率+5.0%(前期:+3.2%)と実質成長率に比べて前期からの上昇幅が縮小した(図表9)。

一方、FRBが物価の指標として注目するPCE価格指数2は、前期比年率+2.1%、前年同期比+2.4%(前期:+3.7%、+2.5%)といずれも前期から低下した(図表10)。また、物価の基調を示す食料品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は、前期比年率+2.6%、前年同期比+2.7%(前期:+3.5%、+2.8%)となり、こちらも前期比、前年同期比ともに前期から低下する結果となった。
(図表9)米国の名目と実質の成長率/(図表10)米国のPCE価格指数伸び率
 
2 現在、FOMCのメンバーは四半期に一度物価見通しを公表しており、そこで物価の指標として採用されている指数がPCE価格指数とコアPCE価格指数である。見通しは年単位で、各年の10-12月期における前年同期比が公表されている。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年07月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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