2023年04月28日

鉱工業生産23年3月-輸出低迷の影響で2四半期連続の減産

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.1-3月期は2四半期連続の減産

経済産業省が4月28日に公表した鉱工業指数によると、23年3月の鉱工業生産指数は前月比0.8%(2月:同4.6%)と2ヵ月連続で上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.5%、当社予想は同▲0.2%)を若干上回る結果となった。出荷指数は前月比0.4%と2ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比0.6%と2ヵ月連続の上昇となった。

3月の生産を業種別に見ると、グローバルなITサイクルの調整を反映し低迷が続いている電子部品・デバイスが前月比▲10.7%と大きく落ち込んだが、自動車が前月比5.2%(2月:同15.4%)、生産用機械が前月比5.8%(2月:同8.9%)と2月に続き高い伸びとなった。

23年1-3月期の生産は前期比▲1.8%(22年10-12月期:同▲3.0%)と2四半期連続の減産となった。業種別には、供給制約の緩和から自動車が前期比0.9%の上昇(10-12月期:同▲4.3%)となったが、世界的な半導体関連需要の低迷を反映し、電子部品・デバイスが前期比▲3.7%(10-12月期:同▲5.9%)と4四半期連続の減産となったほか、輸出の低迷を背景に、生産用機械(前期比▲9.9%)、汎用・業務用機械(同▲5.0%)が大幅減産となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は22年10-12月期の前期比▲6.9%の後、23年1-3月期は同▲6.4%と2四半期連続で低下した。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は22年10-12月期の前期比▲2.4%の後、23年1-3月期は同▲0.9%と3四半期連続で低下した。

GDP統計の設備投資は、22年4-6月期の前期比2.1%、7-9月期の同1.5%の後、10-12月期は同▲0.5%と3四半期ぶりに減少した。高水準の企業収益を背景に、設備投資は基調としては持ち直しが続いていると判断されるが、輸出、生産活動の低迷を受けて製造業を中心にこのところ足踏み状態となっている。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は22年10-12月期の前期比1.4%の後、23年1-3月期は同▲0.9%と3四半期ぶりに低下した。耐久消費財が前期比1.6%(10-12月期:同2.9%)、非耐久消費財が前期比▲0.2%(10-12月期:同▲0.5%)となった。

22年10-12月期のGDP統計の民間消費は、物価高や新型コロナウイルスの感染拡大という逆風を受けながらも、高水準の貯蓄を背景に前期比0.3%の増加となった。23年1-3月期の消費財出荷指数は弱めの動きとなったが、その他の消費関連指標は消費の持ち直しが継続していることを示すものが多い。1-3月期の民間消費はサービス消費を中心に増加することが予想される。

2.先行きの生産は持ち直しを予想するが、下振れリスクは高い

製造工業生産予測指数は、23年4月が前月比4.1%、5月が同▲2.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ▲0.2%、▲1.8%であった。

予測指数を業種別にみると、2月(前月比13.9%)、3月(同4.5%)と高い伸びとなった輸送機械は、4月が前月比4.3%、5月が同7.6%の増産計画となっている。供給制約による生産計画の下振れ傾向にも歯止めがかかりつつあるため、輸送機械は持ち直しが続く可能性が高い。

一方、電子部品・デバイスは、4月に前月比16.8%の大幅増産計画となっているが、3月に同▲10.7%と急速に落ち込んだ反動によることころが大きく、5月は同▲9.4%の大幅減産計画となっている。電子部品・デバイスの出荷・在庫バランスは悪化に歯止めがかかっておらず、底打ちまでにはしばらく時間がかかりそうだ。
輸送機械の生産、在庫動向/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
個人消費を中心に国内需要が一定の底堅さを維持していること、ゼロコロナ政策の解除を受けて中国向け輸出の持ち直しが見込まれることから、先行きの生産は持ち直しに向かうと予想している。ただし、欧米の景気下振れなどから輸出の低迷が長期化した場合には、生産の底打ちが後ずれするリスクが高まるだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2023年04月28日「経済・金融フラッシュ」)

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