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2025年07月31日

鉱工業生産25年6月-生産は一進一退が続くが、先行きは下振れリスクが高い

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.6月の生産は事前予想を大きく上回り、4-6月期は2四半期ぶりの増産

経済産業省が7月31日に公表した鉱工業指数によると、25年6月の鉱工業生産指数は前月比1.7%(5月:同▲0.1%)と3ヵ月ぶりに上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲0.7%、当社予想は▲同0.2%)を大きく上回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.8%と3ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲0.4%と3ヵ月連続の低下となった。

6月の生産を業種別に見ると、化学(除く無機・有機化学・医薬品)が前月比▲4.1%、パルプ・紙・紙加工品が同▲3.8%、プラスチック製品が同▲3.0%と大きく低下したが、自動車を除く輸送機械が航空機用機体部品等を中心に前月比14.8%と急上昇したほか、電子部品・デバイス(同2.9%)、汎用・業務用機械(同1.4%)も高めの伸びとなった。

25年4-6月期の生産は前期比0.3%(1-3月期:同▲0.3%)と2四半期ぶりの増産となった。業種別には、自動車は部品メーカーの爆発事故の影響もあり、前期比▲3.2%(1-3月期:同0.5%)と3四半期ぶりの減産となったが、1-3月期に前期比▲10.8%の大幅減産となった情報通信機械が同7.6%の高い伸びとなったほか、生産用機械(同1.9%)、汎用機械(同5.0%)が底堅い動きとなった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は25年1-3月期の前期比▲2.4%の後、4-6月期は同4.0%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は25年1-3月期の前期比1.1%の後、4-6月期は同▲2.4%となった。

25年1-3月期のGDP統計の設備投資は前期比1.1%と4四半期連続で増加し、24年10-12月期の同0.6%から伸びを高めた。高水準の企業収益を背景に設備投資は回復が続いており、4-6月期も増加することが予想される。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は25年1-3月期の前期比3.8%の後、4-6月期は同0.0%となった。耐久消費財が前期比▲1.5%(1-3月期:同0.5%)、非耐久消費財が前期比▲0.4%(1-3月期:同2.3%)であった。

GDP統計の民間消費は、24年10-12月期、25年1-3月期ともに前期比0.1%の低い伸びにとどまった。物価高による下押し圧力が高い状態が続く中、個人消費は横ばい圏の動きが続いている。

2.先行きの生産が下振れリスクが高い

製造工業生産予測指数は、25年7月が前月比1.8%、8月が同0.8%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(6月)、予測修正率(7月)はそれぞれ▲2.1%、0.4%であった。

予測指数を業種別にみると、4-6月期に3四半期ぶりの減産となった輸送機械は、7月が前月比▲5.5%、8月が同▲0.8%と一段と落ち込む計画となっている。一方、電子部品・デバイスは7月に前月比12.3%の大幅増産計画となっており、生産全体を大きく押し上げている(8月は同1.1%)。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
25年6月の生産指数を7、8月の予測指数で先延ばしすると、25年7、8月の平均は4-6月期を3.3%上回るが、実際の生産の伸びは計画を大きく下回る傾向がある。

トランプ関税下でも生産が横ばい圏で踏みとどまっているのは、自動車を中心に米国向け輸出価格の引き下げによって輸出数量の落ち込みが抑えられているためである。しかし、収益の大幅悪化を伴う値下げを長期にわたって継続することは難しく、すでに日本の主要自動車メーカーは米国での販売価格の引き上げに踏み切っている。米国での値上げは日本車の価格競争力の低下を通じて米国向け輸出が数量ベースで落ち込む可能性を高める。生産は当面下振れリスクの高い状態が続くだろう。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年07月31日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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