- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 社会保障制度 >
- 医療保険制度 >
- かかりつけ医を巡る議論とは何だったのか(下)-包括ケア強化と受療権確保で対立、「神学論争」を超えた視点を
かかりつけ医を巡る議論とは何だったのか(下)-包括ケア強化と受療権確保で対立、「神学論争」を超えた視点を

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
昨年末までの社会保障制度改革の論議では、身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医」を巡る議論が活発に交わされた。
結局、昨年末に公表された社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)医療部会の意見書では、(上)で述べた通り、▽かかりつけ医機能の定義の法定化、▽かかりつけ医に期待される機能を公表する仕組みの創設、▽継続的な医学管理を要する患者が希望する場合、かかりつけの関係を示す書面を発行する仕組みの創設――などの内容で決着。関連法の改正案が23日召集の通常国会に提出された。
かかりつけ医を巡る議論を振り返る2回シリーズの(下)では、2021年10月から始まった関係者の議論を振り返る。具体的には、制度化論議に火を付けた財政制度等審議会による問題提起に始まり、日本医師会や健康保険組合連合会などの提案を取り上げる。
その結果、「医療の入口」を1つに絞る「包括ケアの強化」と、患者が自由に医療機関を選べる「受療権の確保」という二律背反の下、「神学論争」と呼んでも過言ではないほど、対立が先鋭化した点を振り返る。
その上で、神学論争を超える視座として、患者―医師の信頼関係から発想する重要性を強調し、一層の制度改革に向けた論点や選択肢を提示する。
■目次
1――「神学論争」と化した議論を振り返る
2――かかりつけ医がなぜ注目されたのか
1|コロナ対応で注目されたかかりつけ医の曖昧さ
2|オンライン診療
3――かかりつけ医を巡る論議の経緯
1|財政審、諮問会議の動向
2|2021年末に決まった「新経済・財政再生計画改革工程表」の記述
3|2022年度診療報酬改定
4|骨太方針に向けた政府・与党の動向
5|骨太方針は「玉虫色」に
6|日医の主張
7|健保連の提案
8|全世代会議、社会保障審議会などの議論
9|決着した内容の総括
4――制度化賛成派の主張
1|外来医療費の抑制
2|医療機関の機能分化の下支えに
3|全人的かつ継続的なケアが可能に
4|新興感染症など有事対応も可能に
5――制度化反対派の主張
1|受療の選択肢が狭くなる危険性
2|診療報酬の変更に対する抵抗感
3|医療の国家統制に対する嫌悪感
6――「神学論争」にも似た意見対立
7――「神学論争」を超えるための視座
1|患者―医師の信頼関係をベースに制度を作る必要性
2|自然に信頼関係は生まれるのか
3|選択肢が多いことが満足度に繋がるのか
4|信頼に足る能力を持つ医師を探せるのか
8――今後の制度改正に向けた選択肢(1)~患者―医師の関係性に関する制度設計~
1|医療における「代理人」を明確にする必要性
2|英仏両国との対比
3|中小病院も含む必要性
4|DX化、PHRの拡大
9――今後の制度改正に向けた選択肢(2)~エージェンジー問題を解消するための工夫~
10――今後の制度改正に向けた選択肢(3)~信頼できる医師を増やすのための工夫~
11――おわりに
(2023年02月22日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
関連レポート
- かかりつけ医を巡る議論とは何だったのか(上)-年末に示された部会意見を読み解き、論点や方向性を考える
- 医療制度論議における「かかりつけ医」の意味を問い直す-コロナ対応、オンライン診療などで問われる機能
- オンライン診療の特例恒久化に向けた動向と論点-初診対面原則の是非が争点、曖昧な「かかりつけ医」をどうするか
- オンライン診療を巡る議論を問い直す-初診対面原則の是非だけに囚われない視点を
- 2022年度診療報酬改定を読み解く(上)-新興感染症対応、リフィル処方箋、オンライン診療の初診緩和など
- 2022年度診療報酬改定を読み解く(下)-医療機能分化、急性期の重点化など提供体制改革を中心に
- 2022年度の社会保障予算を分析する-診療報酬改定で攻防、参院選後はどうなる?
- 紹介状なし大病院受診追加負担の狙いと今後の論点を考える-10月から引き上げ、医療機能分化に向けて新制度も開始
- 「上手な医療のかかり方」はどこまで可能か-医療サービスの特性を踏まえて効果と限界を考える
- 地域医療構想を3つのキーワードで読み解く(1)-都道府県はどこに向かおうとしているのか

03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/04/10 | 異例ずくめの高額療養費の見直し論議を検証する-少数与党の下で二転三転、少子化対策の財源確保は今後も課題 | 三原 岳 | 基礎研レポート |
2025/04/08 | 政策形成の「L」と「R」で高額療養費の見直しを再考する-意思決定過程を検証し、問題の真の原因を探る | 三原 岳 | 基礎研マンスリー |
2025/03/19 | 孤独・孤立対策の推進で必要な手立ては?-自治体は既存の資源や仕組みの活用を、多様な場づくりに向けて民間の役割も重要に | 三原 岳 | 研究員の眼 |
2025/02/17 | 政策形成の「L」と「R」で高額療養費の見直しを再考する-意思決定過程を詳しく検討し、問題の真の原因を探る | 三原 岳 | 研究員の眼 |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【かかりつけ医を巡る議論とは何だったのか(下)-包括ケア強化と受療権確保で対立、「神学論争」を超えた視点を】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
かかりつけ医を巡る議論とは何だったのか(下)-包括ケア強化と受療権確保で対立、「神学論争」を超えた視点をのレポート Topへ