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「上手な医療のかかり方」はどこまで可能か-医療サービスの特性を踏まえて効果と限界を考える
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
上手に医療にかかりましょう――。厚生労働省は2019年度から国民などに対し、「上手な医療のかかり方」の必要性を促している。上手な医療のかかり方とは、夜間・休日よりも日中に受診したり、いきなり救急車を呼んだりしない受療行動を指しており、厚生労働省は毎年11月を「医療のかかり方を考える月間」に指定。著名アーティストらを大使に任命することで、国民に対する啓発活動を展開している。
こうした活動を通じて、医療に対する国民の注意を惹き付けることは極めて重要である。例えば緊急性を考えずに救急車を呼ぶような受療行動が減り、患者が状態に応じて適切に受診できるようになれば、医療提供者の負担を軽減できる。
しかし、医療サービスでは患者―医師の情報格差が大きいため、患者の自己決定に多くを期待するのは難しく、国民の意識啓発だけでは限界があると考えている。本レポートでは、上手な医療のかかり方を巡る議論を考察するとともに、運動論としての必要性を考察する。一方、医療サービスの特性や行動経済学の知見を踏まえつつ、その限界も指摘した上で、プライマリ・ケアの制度化など必要な施策を論じる。
■目次
1――はじめに~「上手な医療のかかり方」は可能か~
2――上手な医療のかかり方とは何か~示された5つのプロジェクト~
3――上手な医療のかかり方が浮上した背景
1|医療現場の疲弊
2|病床機能再編などの政策動向
4――上手な医療のかかり方で期待される効果
1|医療現場の負担軽減
2|患者のメリット
3|トータルの医療費の抑制
4|期待される効果
5――「下手な医療のかかり方」が生まれる理由の考察(1)~国民の無知が原因?~
1|「下手な医療のかかり方」の事例
2|国民の無知が原因とは言えない?
3|受診した理由は緊急性
6――「下手な医療のかかり方」が起きる理由の考察(2)~医療サービスの特性からの視点~
1|情報の非対称性
2|不確実性が大きい
7――「下手な医療のかかり方」が起きる理由の考察(3)~行動経済学的な視点~
1|利用可能性ヒューリスティック
2|システム1とシステム2
8――救急搬送の軽症者は「下手な医療のかかり方」と言い切れるか
9――上手な医療のかかり方を実現する上で必要なことは何か
1|意思決定に向けた代理人機能の充実
2|医療の「入口」を絞り込む制度改正
3|標準的な医療情報の開示
4|患者団体・住民団体による相互の学び
5|自治体による主体的な取り組み
10――おわりに
【参考資料】懇談会の宣言で示された関係者ごとの「要因」と「アクションの例」
03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
公式SNSアカウント
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