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2025年09月03日

増え行く単身世帯と消費市場への影響(4)-教養娯楽・交際費から見る「自分時間」「人間関係」「自己表現」への投資

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

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■要旨
 
  • 本稿では、総務省「家計調査」を用いて、単身世帯の教養娯楽費と交際費を中心とした「その他の消費支出」について分析した。教養娯楽費では若年層のレジャー志向、高齢層の読書・学習志向、壮年男性のデジタル活用という世代・性別による明確な違いが確認された。
     
  • 「その他の消費支出」では、高齢女性の交際費(18,751円)が他層の約2倍に上るなど人間関係への投資姿勢が顕著である一方、若年層では理美容や身の回り品への支出が目立つ。これらの消費行動は「自分時間」「人間関係」「自己表現」への投資という三つの軸で整理できる。
     
  • 2019年との比較では、若年女性が教養娯楽費を実質44.4%増加させる一方、壮年女性は「その他の消費支出」を実質36.8%減少させており、単身世帯内での格差拡大が確認された。特に壮年女性では交際費や仕送り金の削減が目立ち、雇用面での脆弱性が消費行動に直接影響している。
     
  • 単身世帯の消費行動は社会変化の先行指標としての性格を持ち、意思決定の自由度の高さから個人の価値観や経済状況が直接的に反映される。2050年には全世帯の44.3%に達する単身世帯の多様なニーズへの対応と、経済的脆弱層への支援が重要な課題である。


■目次

1――はじめに~社会変化の先行指標となる単身世帯、教養娯楽面の特徴は?
2――単身世帯の消費~教養娯楽費と交際費などから見る性年代別の特徴
  1|教養娯楽費
   ~若年層のレジャー志向、高齢層の読書・学習志向、壮年男性のデジタル投資
  2|その他の消費支出
   ~高齢女性で多い交際費、若年層で目立つ理美容・身の回り品
3――おわりに~多様な単身世帯、社会変化の先行指標として読み解く新たな消費社会

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年09月03日「基礎研レポート」)

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生活研究部   上席研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
     2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
     2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
     2021年7月より現職

    ・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
    ・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
    ・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
    ・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
    ・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
    ・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
    ・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

    【加入団体等】
     日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
     生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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