2024年01月19日

4つの志向で読み解く消費行動(1)-若者は「所有より利用」志向、女性やシニアは「慎重消費」志向

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

井上 智紀

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■要旨
 
  • 消費行動がコロナ禍前の形へ回復しつつある中、ニッセイ基礎研究所の調査を用いて、消費者が本来持つ消費志向を分析したところ、20~74歳では「慎重消費」「所有より利用」「顕示的消費」「C2C(個人間売買)・中古品受容」の4つの志向に要約されることが分かった。
     
  • 「慎重消費」志向は女性やシニア、高年収層、世帯金融資産の多い層で、「所有より利用」志向は若者のほか、民間正規や公務員など30・40歳代の男性が多い職業で、「顕示的消費」志向はシニアや若者、高年収層、世帯金融資産の多い層で、「C2C・中古品受容」志向は若者のほか、自営業・自由業や民間正規、年収800~1,000万円など40歳代の男性が多い層で、また、世帯金融資産は少ないほど高い傾向がある。
     
  • 属性別の特徴を深堀すると、「慎重消費」志向の高い女性では、特に(不要に)モノを増やさないことや品質の十分な確認に慎重であり、シニアでは品質の十分な確認やコストパフォーマンスに対する意識が強い。「所有より利用」志向の高い男性では(モノを売ることよりも)利用する意向が強く、女性の方が売る意向は強い。
     
  • モノの所有よりもコト消費への関心が高く、デジタルネイティブの若者では売る意向も利用する意向も強い。今の若者はデジタル化が進展した成熟した消費社会で育ち、お金をかけなくても質の高い消費生活を送ることができる。さらに、少子高齢化で将来の経済不安が強まる中では、消費に対して合理的な意識が強く、「必要な時に必要な量だけ利用する」という価値観が消費行動の土台となっているようだ。
     
  • 「顕示的消費」志向の高い女性では、特に量を買ってしまうという傾向が強いが、男性の方が「顕示的消費」志向は低いが、新製品やオーダー品の購入意向は女性より強い。また、「顕示的消費」志向の高いシニアでは名のある高級品の購入意向が、若者では衝動買い傾向や新製品やオーダー品の購入意向が強い。
     
  • 2024年は本格的にコロナ禍が明けて、個人消費が改善していくことが期待され、価値観やライフスタイルなど、消費者が本来持つ消費志向の特徴を把握することが一層、重要となる。成熟した消費社会では、1つの商品が爆発的にヒットするような大きなトレンドは生じにくい。それぞれの消費者層の志向の特徴を丁寧に捉えた上で、きめ細やかに商品を設計し、販売促進計画を練る必要がある。


■目次

1――はじめに~コロナ禍明けの消費行動、消費者が本来持つ志向の把握が一層重要に
2――消費志向の分類
 ~合理的な若者は「所有より利用」、家計意識の強い女性やシニアは「慎重消費」
  1|因子分析の結果
  ~「慎重消費」「所有より利用」「顕示的消費」「C2C(個人間売買)・中古品受容」に要約
  2|属性別の状況
  ~女性やシニアで「慎重消費」、若者で「所有より利用」と「C2C・中古品受容」
3――属性別に見た消費志向の特徴~若者は「所有より利用」で、時には衝動買いも
  1|「慎重消費」志向
  ~女性は(不要に)モノを増やしたくない、女性とシニアは品質の確認に慎重
  2|「所有より利用」志向
  ~男性は利用、女性は売る意向が強く、若者は「必要な時に必要な量だけ利用」
  3|「顕示的消費」志向
  ~女性は量、シニアは高級品、若者は衝動買いや新製品などの購入意向も強い
  4|「C2C(個人間売買)・中古品受容」志向
  ~男性の多い民間正規や自営業・自由業で高い
4――おわりに
 ~2024年は本格的に消費回復が期待、消費者本来の志向を丁寧に読み解くことが重要

(2024年01月19日「基礎研レポート」)

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