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- コロナ禍明けの家計消費-外出型消費は回復傾向だが、全体では低迷が続く
2023年12月20日
■要旨
■目次
1――はじめに~5類引き下げ以降、外出行動は活発化しているが個人消費は低迷が続く
2――二人以上世帯の消費支出の概観
~全体では低迷、食料や教養娯楽等が減少、保健医療等が増加
3――コロナ禍の影響を受けた主な費目の動き
~外出型消費は改善傾向だが多くはコロナ禍前を下回る
1|コロナ禍で減少した支出
~外出型消費は改善傾向だが国内旅行以外はコロナ禍前を下回って低迷
2|コロナ禍で増加した支出
~コロナ禍をきっかけに出前需要が大幅伸長・定着、デジタル娯楽需要は堅調
4――おわりに
~賃上げや子育て支援策などでマインドがさらに上向き、消費へ結びつくことに期待
- 5類引き下げで個人消費の回復が期待されたが、2023年10月では未だコロナ禍前を下回る。実質賃金がマイナスで推移し、使えるお金が増えないならば支出を抑制することは消費者行動として自然だ。一方で旅行や外食などの外出型消費の回復傾向も感じられ、個人消費は全体では低迷しつつも領域によって濃淡があることが予想される。
- 総務省「家計調査」にて二人以上世帯の消費支出の内訳を見ると、コロナ禍で減少した旅行やレジャーの支出額はいずれも改善傾向にあり、特に7月の宿泊料は昨年や一昨年と比べてコロナ禍前の同月と比べた増加率が大きく、5類引き下げ後の初の夏休みで旅行需要が一層増した様子がうかがえる。一方、交通費も含むパック旅行費はコロナ禍前を未だ下回り、円安で海外旅行を控えた様子も見られる。
- 交通費はいずれも改善傾向にある。鉄道運賃は宿泊料と同様に7月はコロナ禍前を上回り、通勤・通学というよりプライベートの外出需要の回復が見られる。一方、バス代やタクシー代は改善傾向にはありつつも、未だコロナ禍前を下回り、運転手不足やインバウンドの本格回復によって、強い需要に対する供給不足の様子がうかがえる。
- 外出行動は活発化するものの、スーツや婦人服などのアパレル製品は低迷が続く。テレワークによる需要減に加えて、オフィス着のカジュアル化やファストファッションの台頭など中長期的な需要減や単価の減少による影響と見られる。一方、ファンデーションや口紅などのメイクアップ用品はマスク着用が減った影響で、コロナ禍前を未だ下回るものの、改善傾向を示している。
- 外食も改善傾向にあり、特に飲酒は足元で大きく改善しているが、コロナ禍前を未だ1~2割下回っており、テレワークによる就労者の外食機会の減少(昼食、職場の飲み会や二次会)や、物価高による消費抑制が影響しているようだ。一方、巣ごもり生活で需要の増した内食・中食は、食材の支出が減る一方、食配や冷凍食品が増え、手軽さ志向が高まっている。また、電子書籍などのデジタル娯楽堅調に推移している。
- 総括すると、コロナ禍で激減した外出型消費は改善傾向を示しており、巣ごもり消費も堅調だが、物価高による消費抑制や行動変容による需要減、供給側の制約などによって大半の需要が戻り切っていないために消費全体としては低迷が続いている。一方、今後の賃上げや家計支援策などによって使えるお金が増えれば、消費者マインドから見ても消費が動き出す期待は大きい。
■目次
1――はじめに~5類引き下げ以降、外出行動は活発化しているが個人消費は低迷が続く
2――二人以上世帯の消費支出の概観
~全体では低迷、食料や教養娯楽等が減少、保健医療等が増加
3――コロナ禍の影響を受けた主な費目の動き
~外出型消費は改善傾向だが多くはコロナ禍前を下回る
1|コロナ禍で減少した支出
~外出型消費は改善傾向だが国内旅行以外はコロナ禍前を下回って低迷
2|コロナ禍で増加した支出
~コロナ禍をきっかけに出前需要が大幅伸長・定着、デジタル娯楽需要は堅調
4――おわりに
~賃上げや子育て支援策などでマインドがさらに上向き、消費へ結びつくことに期待
(2023年12月20日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2024/11/19 | 家計消費の動向(~2024年11月)-緩やかな改善傾向、継続する物価高で消費に温度差 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
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