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居宅介護支援費の有料化は是か非か-介護サービスの仲介だけではない点、利用控えの危険性に配慮を
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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3年に一度の介護保険制度改正を巡り、介護保険サービスの調整などを担う居宅介護支援費、いわゆるケアマネジメントの有料化論議が浮上している。居宅介護支援費は現在、全額が介護保険財源で賄われており、2024年度にも施行される次期制度改正に向けて、年末に決着する論議では、訪問介護など他の介護サービスと同様、1~3割の利用者負担を徴収する是非が問われている。
しかし、ケアマネジメントは単なる介護保険サービスの仲介だけではない点にも留意する必要がある。具体的には、ケアマネジメントは本来、相談業務や利用者の状態を評価するアセスメントに加えて、「インフォーマルケア」と呼ばれる制度以外の地域資源の活用など、介護保険サービスの枠内にとどまらない点で、他の介護保険サービスにはない特殊性を有している。特にインフォーマルケアの活用は近年、現場レベルだけでなく、近年の制度改正でも重視されている。
こうした中で、有料化した場合のデメリットとして、ケアマネジメントの幅広い性格が軽視されるようになり、結果的にケアマネジメントが介護保険制度に閉じ込められてしまう危険性が懸念される。さらに、有料化に伴って低所得者や重度な人の利用控えなども予想され、少なくとも現時点での有料化はメリットよりもデメリットの方が大きいと考えている。
本稿は居宅介護支援費の有料化を巡る議論を総括することで、有料化の「利害得失」を考察することにしたい。
■目次
1――はじめに~居宅介護支援費は有料化すべきか~
2――ケアマネジメントとは何か
1|居宅介護支援費の費用構造
2|ケアマネジメントは本来、介護保険だけではない
3|ケアマネジメントは介護保険サービスの仲介にとどまらない
4|「ケアマネジメント=介護保険サービスの仲介」と理解されるようになった背景
3――居宅介護支援費の有料化を巡る議論
1|新経済・財政再生計画改革工程表の記述
2|財政審建議の指摘
3|厚生労働省の審議会の動き
4――有料化のメリット
1|給付抑制効果は500億円程度
2|サービスの質が向上?
5――有料化のデメリット
1|「ケアマネジメント=介護保険サービスの仲介」と見なす傾向が強まる危険性
2|利用控えの危険性
3|限度額との整合性で起きる問題
4|その他のサービスとの整合性確保
6――ソーシャルワークを阻害する報酬体系の優先的な見直しを
7――おわりに
(2022年09月28日「基礎研レポート」)
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03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
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