2022年05月27日

2022年度診療報酬改定を読み解く(下)-医療機能分化、急性期の重点化など提供体制改革を中心に

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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4――診療報酬改定の内容(1)~高度急性期、急性期の重点化~

1|高い報酬点数が付いた急性期充実体制加算
まず、高度急性期、急性期の重点化に関しては、機能分化を図る観点に立ち、一部で思い切った点数が付けられた。最も目を惹くのは「急性期充実体制加算」(7日以内460点、8日以上11日以内250点、12日以上14日以内の期間180点、1点は10円)であり、主な要件としては、▽24時間救急医療体制を整備しており、一定の実績を有する、▽紹介受診重点医療機関になるなど、外来機能を縮小している、▽中小医療機関などと入退院支援に向けて情報共有などを実施する「入退院支援加算1」または「入退院支援加算2」を届け出ている、▽一般病棟における平均在院日数が14日以内――などが定められている。

注目されるのは点数の高さである。現行の報酬体系では、総合的かつ専門的な急性期医療を提供する一般病床を対象に、2008年度に創設された「総合入院体制加算1」(240点)で「スーパー急性期」と呼ばれる病院を評価していたが、加算はその約2倍に相当する。現場の経営者からは「このような点数が設定されるとは正直、予想を超えていた」との感想ととともに、「(筆者注:加算取得の要件が厳しく設定されている関係で)大学病院は算定できない点数なので、ほぼ毎日のように緊急手術を行っているような『急性期を突き抜けた地域の基幹病院』が算定することになる」との声が出ている17

高度急性期の関係では、特定集中治療室(ICU)の体制強化と人材育成を図る観点に立ち、「重症患者対応体制強化加算」(3日以内750点、4日以上7日以内500点、8日以上14日以内300点)も新設された。加算の要件としては、専門性の高い看護師や臨床工学技士の配置とか、人工呼吸器及び体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする重症患者の看護を含めて、重症患者に対応する院内研修の実施などが定められている。

これら2つの加算に関しては、(上)で言及した新興感染症への対応が意識されている点も要注目である。具体的には、急性期充実体制加算の要件として、他の医療機関における感染症対応を支援する医療機関が算定できる「感染対策向上加算1」の取得が義務付けられているほか、重症患者対応体制強化加算でも、新興感染症の発生など有事に際して、都道府県などの要請に応じて、他の医療機関の支援に当たる旨が要件の一つとして定められている。このため、平時の救命救急対応だけでなく、(上)で取り上げた新興感染症への対応も意識した内容となっている。実際、厚生労働省の担当課長は急性期充実体制加算の創設に関して、「通常医療に加え、感染症にも対応できる高度急性期医療の充実が必要」という考え方が反映されたと説明している18

さらに、重篤な患者やその家族の支援を図るため、「重症患者初期支援充実加算」(1日当たり300点、入院日から起算して3日を限度)が新設された。この加算を取得する上では、幾つか要件が設定されており、その一つとして、医師や看護師、社会福祉士などで患者の治療にダイレクトに関わらない有資格者を「入院時重症患者対応メディエーター」として配置するとともに、治療の方針や内容を説明したり、患者や家族の意思表明を支援したりすることが定められている。

このほか、機能分化を図る観点に立ち、総合入院体制加算の要件の一つに、紹介受診重点医療機関であることが追加された。ECMOを装着した重症患者を搬送する際の診療を評価する「重症患者搬送加算」(1,800点)、ECMOを用いた重症患者の治療管理を評価する「体外式膜型人工肺管理料」(1日当たり7日目まで4,500点など)も新設された。

退院後の患者の早期回復を促すため、高度急性期や急性期における栄養管理やリハビリテーションを強化する加算措置も、新設・拡充された。例えば、栄養管理に関しては、▽全身麻酔手術を施された患者の術前・術後管理について、専任の管理栄養士が医師と連携しつつ、栄養管理を実施した場合に取得できる「周術期栄養管理実施加算」(270点、1手術に1回)、▽管理栄養士を配置して患者の状態に応じて栄養管理を実施する特定機能病院19の体制を評価する「入院栄養管理体制加算」(270点、入院初日及び退院時)――などが創設された。
 
17 全日本病院協会長の猪口雄二氏に対するインタビューでの発言。2022年3月29日『日経メディカル』配信記事を参照。
18 厚生労働省保険局医療課長の井内氏に対するインタビューでの発言。『週刊社会保障』No.3169号を参照。
19 特定機能病院とは、高度な医療の提供や技術開発、研修などを担う医療機関。
2またもや公益裁定となった看護必要度の基準
一般病棟用の医療・看護必要度(以下、看護必要度)も焦点となった。これは元々、患者7人に対して看護師1人を配置する病棟区分の「7:1基準」の見直しに端を発する。2006年度診療報酬改定で7:1基準を創設した際、手厚い報酬を分配したため、厚生労働省の期待以上に7:1基準を取得する医療機関が続出。医療費を膨らませる要因となり、地域医療構想が制度化される一つの要因となった。
図3:2018年度診療報酬改定時の7:1基準再編のイメージ さらに、2018年度改定では、7:1基準からの転換を促すため、図3のような診療報酬体系に再編された20。その際、7:1基準と10:1基準(患者10人に対して看護師1人を配置)の間で、診療報酬の点数差が大きかったため、類型を細分化するとともに、受け入れる患者の実績部分に応じて診療報酬の点数を変える仕組みが採用された。

併せて、実績部分については、看護職員の測定を基にした「看護必要度Ⅰ」、診療実績をベースに判断する「看護必要度II」という数値基準を用いることも決まった。
この時の狙いを少し分かりやすい言葉で言うと、旧7:1基準(改定後は「急性期一般入院料1」に改称)から旧10:1基準に降りてもらう際の段差が大きいため、途中で休憩できるような「階段」を作ることで、旧7:1基準からの転換を促そうとした。

しかも、右から左に移る、つまり「階段」を徐々に下りることは認められているが、左から右に段階的に移る、つまり「階段」を徐々に上がることは認められていない(一気に急性期一般入院料1に行くことは認められている)ため、「下に降りることを大前提とした階段」と言える。このため、旧7:1 基準の急性期病床を圧縮する目的があったことは明らかである。

その後、2020年度改定では看護必要度の見直しが焦点となり、機能分化に向けて基準の厳格化を期待する支払側と、これに反対する診療側で意見の違いが顕在化し、有識者で成る公益委員の裁定に持ち込まれた。2022年度改定でも同様の意見対立が起き、公益委員による裁定を経て、「心電図モニターの管理」の項目が削除されたほか、急性期一般入院料7が廃止されて6段階に再編された。さらに、看護必要度も図4のような変更が実施された。
図4:2022年度改定における看護必要度の見直し
一見すると些細な改定に映るが、今回も公益裁定に持ち込まれたことに見られる通り、関係者の関心が高いテーマと言える。実際、中医協の支払側は急性期の厳格化を図る観点に立ち、看護必要度の基準に関して「将来は(筆者注:診療実績のデータに基づく)IIに統一すべき」との問題意識を持っている21。一方、診療側は心電図モニターが削除されたことで、内科系が影響を受けるとの見方に加えて、相次ぐ制度改正に対して、「改定の度に変更され、病院はそれと追いかけっこしている」との不満も漏れている22

さらに表2で挙げた財務、厚生労働両相の合意文でも、旧7:1基準の見直しが筆頭項目に掲げられており、今後も焦点の一つとなりそうだ。

このほか、急性期関係では、医師や看護師、薬剤師など3人以上のチームで疼痛の管理に当たる場合に算定できる「術後疼痛管理チーム加算」(1日当たり100点)、手術室の薬剤師が病棟の薬剤師と連携して薬学的管理に当たることを評価する「周術期薬剤管理加算」(75点)も創設された。
 
20 2018年度診療報酬改定に関しては、2018年5月1日拙稿「2018年度診療報酬改定を読み解く(上)」を参照。
21 健保連理事の松本真人氏に対するインタビューでの発言。『週刊社会保障』No.3166を参照。
22 2022年2月9日記者会見における全日本病院協会長の猪口氏の発言。2022年2月10日『m3.com』配信記事を参照。

5――診療報酬改定の内容(2)

5――診療報酬改定の内容(2)~地域包括ケア病棟の役割明確化

次に、地域包括ケア病棟の役割明確化を取り上げる。地域包括ケア病棟は元々、2014年度に創設された類型。その主な役割としては、「急性期後の治療やリハビリテーションなどが必要な患者を対象とした医療機能(ポストアキュート)」「大病院での集中治療は必要ないが、在宅療養中の患者が急変した場合に受け入れる機能(軽度急性期、サブアキュート)」「患者を回復させ、在宅や施設に繋ぐ在宅復帰機能」の3つとされている、

しかし、地域包括ケア病棟の守備範囲は広く、表1で掲げた地域医療構想に関する病床機能報告でも、急性期、回復期、慢性期にまたがっている。このように曖昧な制度になっている背景には、7:1基準を絞り込みたい厚生労働省サイドと、これに難色を示す日医との意見対立があった。

具体的には、地域包括ケア病棟が創設された2014年度改定に際して、厚生労働省は7:1基準の厳格化を企図し、サブアキュートに軸足を置く「亜急性期」という概念を制度面で明確に位置付けようとしたが、日医が「高齢者だからといって、急変時に亜急性期病床でもいいだろう、安上がりに済ませようという意図が見える」と反発23するなど、中医協の議論は名称を巡って紛糾した。

結局、一種の「国策」として重視されている「地域包括ケア」の言葉を冠する24とともに、病床区分も概念も曖昧な枠組みとなった。つまり、7:1基準の削減を企図しつつも、3つの機能を果たすことで、在宅ケアの充実を後押しする意図が示されたと言える。地域包括ケア病棟が7:1基準削減の受け皿として期待されていた点については、当時の国会25で「言うなれば急性期からの受け皿というような病床をふやしていこうということ」という答弁が出ていたことからも明らかである。

しかし、今回の改定を通じて、基準が厳格化されたり、要件を満たせない場合の減算が設けられたりしたことで、曖昧な役割が一定程度、明確化された。このため、医療機関経営者からは「かなり厳しい見直しとなった」「(筆者注:地域包括ケア病棟の)役割がより明確になった」「既存の病棟を維持できず、別の病棟区分に移行するところも出てくるだろう」といった見方26に加えて、「これまでカメレオンのように変幻自在な病棟の在り方が許されていたが、『コア(芯)を持つように』とメッセージが込められた」27といった声が出ている。

厳しいメッセージと受け止められている一つとして、自院から多く患者を転棟させている病院に対する減算措置の強化が挙げられる。既に2020年度改定では、自院の急性期一般病棟から転棟した患者の割合が6割未満の場合、報酬を10%減算する措置が導入されていたが、対象が拡大されたほか、減算の幅も15%に広がった。

さらに、急性期病棟からの入院を評価する「急性期患者支援病床初期加算」、在宅からの入院を評価する「在宅患者支援病床初期加算」も大幅に見直された結果、自院からの転棟に関する点数が低く設定された。

少し細かく見ると、現在の仕組みは元々、2018年度に創設され、前者は14日を限度に1日150点、後者は14日を限度に1日300点という点数が付いていた。しかし、2022年度改定では急性期患者支援病床初期加算に関して、地域包括ケア病棟の規模と入院する患者の受け入れ元に応じて細分化された。具体的には、400床以上の地域包括ケア病棟の場合、他院から受け入れているケースの点数は150点で従前と変わらないが、自院から患者を受け入れる場合は50点に設定された。400床未満の地域包括ケア病棟についても、他の医療機関から受け入れる場合には250点が付けられたが、自院からの受け入れは125点に減算された。

一方、在宅患者支援病床初期加算については、自宅や有料老人ホームから患者を受け入れた場合に400点、リハビリテーションなどを実施する介護老人保健施設からの患者は500点に設定された。

いずれも「どこから入院(転棟)してきたか」という点が重視された改定であり、このほかにも同様の減算規定が設けられた。その結果、自院の急性期病棟から地域包括ケア病棟に転棟させているような病院にとっては、厳しい改定となり、現場の経営者からは「3つの機能をバランスよく担うことが重要」と受け止められている28
 
23 2013年11月1日、中央社会保険医療協議会総会における日医副会長の中川俊男氏(当時)の発言。
24 地域包括ケアの曖昧さに関しては、介護保険20年を期した拙稿コラム第9回を参照。
25 2014年2月17日、第186国会衆院予算委員会における厚生労働相の田村憲久氏(当時)の発言。
26 全日本病院協会長の猪口雄二氏に対するインタビューでの発言。2022年3月29日『日経メディカル』配信記事を参照。
27 地域包括ケア病棟協会長の仲井培雄氏のコメント。『日経ヘルスケア』2022年4月号を参照。
28 地域包括ケア病棟協会長の仲井氏のコメント。『Phase 3』2022年4月号を参照。

6――診療報酬改定の内容(3)

6――診療報酬改定の内容(3)~在宅医療のテコ入れ策~

第3に、在宅医療のテコ入れ策である。地域医療構想の病床推計では、慢性期病床に入院する軽度患者の約3割が在宅医療に移行するなどの前提に立っており、在宅医療の普及は医療提供体制改革で重要なカギを握る。過去の制度改正でも、厚生労働省は在宅医療を手掛ける医療機関を認定する仕組みとして、2006年度に「在宅療養支援診療所」、2008年度に「在宅療養支援病院」を創設するとともに、各種加算措置を設けることで、在宅医療の裾野拡大、さらに在宅医療に欠かせない多職種連携に力を入れて来た。

だが、24時間の連絡対応が困難な点などが一層の拡大に向けたボトルネックになっている。そこで、2022年度改定では、在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院を中心に、幾つかの改定が実施された。

まず、在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院の施設基準が改正され、介護保険財源を転用している「在宅医療・介護連携推進事業」で他の診療所との連携や24時間対応などで積極的な役割を担うことが望ましいとされた。

ここで言う在宅医療・介護連携推進事業とは2015年度制度改正で創設された仕組みであり、市町村や地域の医師会が「地域の医療・介護の資源の把握」「在宅医療・介護連携に関する相談支援」「地域住民への普及啓発」などを実施29しており、今回の診療報酬改定を通じて、介護保険制度との整合性が図られたと言える。

さらに在宅療養支援病院のうち、往診や看取りの実績などを評価する「機能強化型」という類型では、在宅療養支援診療所などの要請で患者を受け入れる病床を常に確保するとともに、「緊急時における受け入れ実績が直近1年間で31件以上」などの要件が加えられた。これは緊急時に患者を受け入れる「後方病床」を地域で確保することで、在宅医療を普及させる狙いがある。

このほか、通院患者のスムーズな在宅医療への移行を後押しする観点に立ち、継続して外来診療を提供している医療機関と、在宅医療を手掛けている医療機関の連携を促す加算が設けられた。具体的には、在宅医療を提供する医療機関が外来の医療機関の医師と共同で必要な指導、説明に当たった場合、在宅療養を担う医療機関は「外来在宅共同指導料1」(400点)を取得できることになった。

一方、外来で診療に当たる医療機関についても、年4回以上継続して外来を受診している患者に対し、在宅医療を実施している医療機関と共同で必要な説明、指導に当たった場合、「外来在宅共同指導料2」(600点)を取得できるようになった。

在宅療養支援診療所以外の診療所でも、訪問診療の拡大を促す改定が実施された。これは診療所単独または他の医療機関との連携で24時間往診・連絡体制を取るケースを対象に、2018年度改定で創設されていた「継続診療加算」の見直しであり、名称が「在宅療養移行加算」に変更されるとともに、2段階に細分化された。

いずれも24時間往診・連絡体制を単独または連携医療機関の協力で確保することなどが引き続き求められるが、「在宅療養移行加算1」(216点)では24時間の往診・連絡体制を、「在宅療養移行加算2」(116点)では当該医療機関か、連携する他の医療機関による往診提供が要件として定められた。
 
29 在宅医療・介護連携推進事業の論点については、介護保険20年を期した拙稿コラム第12回を参照。

7――診療報酬改定の内容(4)

7――診療報酬改定の内容(4)~外来機能分化、かかりつけ医機能の強化~

1|外来機能報告など機能分化に関する改定
第4に、外来機能の分化、かかりつけ医機能の強化であり、外来機能の分化に関しては「外来機能報告制度に関する改定」「紹介状なし大病院受診の追加負担引き上げ」が盛り込まれた。

このうち、外来機能報告制度とは既に触れた通り、2022年度からスタートした仕組みであり、それぞれの医療機関の外来機能を明確にするのが目的。今後、各地域では提出されたデータを基に、関係者の合意形成と自主的な対応を通じて、紹介された患者を中心に受け入れる紹介受診重点医療機関を決めることが想定されており、これを後押しするような加算が設けられた。

これは「紹介受診重点医療機関入院診療加算」(入院初日800点)という仕組みであり、紹介受診重点医療機関として、入院機能の強化や外来機能の重点化を図った場合に取得できるようになっている。

このほか、紹介受診重点医療機関の機能を強化するため、「連携強化診療情報提供料」(月1回、150点)が新設された。この見直しは現行の「診療情報提供料III」という仕組みの改組であり、紹介受診重点医療機関が紹介を受けた患者に関して、診療状況を示す文書を診療所や中小医療機関に提供した場合、新たに算定できるようになった。
2|紹介状なし大病院受診の追加負担引き上げ
紹介状なし大病院受診時の追加負担に関しても見直しが講じられ、患者負担は2022年10月以降、医科で5,000円から7,000円に、歯科で3,000円から5,000円に引き上げられる(再診の場合、医科は2,500円から3,000円、歯科は1,500円から1,900円)。追加負担の徴収対象は、従来の特定機能病院、地域医療支援病院30(一般病床200床以上)に加えて、地域の合意形成で決まる紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上)になる。

その際、あえて紹介状なしで受診する患者などを対象に例外的・限定的な対応として、医科、歯科ともに初診は200点、再診は医科で50点、歯科で40点を保険給付から除外する仕組みが採用された。この結果、2,000円の上乗せ分に関しては、医療機関の収入増になるのではなく、保険財源が圧縮される。この関係では、2019年12月の全世代型社会保障検討会議中間報告で、「増額分について公的医療保険の負担を軽減するよう改める」と定めていた。
 
30 地域医療支援病院とは、紹介患者に対する医療提供、医療機器の共同利用などを担う医療機関。
3|かかりつけ医の機能充実
かかりつけ医の関係でも、幾つかの見直しが講じられた31。患者の生活を包括的に支援する医療機関を対象に、2018年度に創設されていた「機能強化加算」(初診時80点)の要件が大幅に追加され、表3のように基準が改正された。

具体的には、従来の基準では、糖尿病や認知症、高血圧症など2つ以上の疾患、症状を有する人に対し、継続的な診療を提供する「地域包括診療加算」「地域包括診療科」などの加算を取得することが前提だったが、細かい要件は決まっていなかった。

しかし、2022年度改定では、▽他の受診医療機関の有無や処方されている医薬品を把握し、必要な服薬管理を実施するとともに、診療録に記載、▽専門医や専門医療機関への紹介、▽健康診断の結果など健康管理に関する相談への対応、▽保健・福祉サービスへの相談対応、▽診療時間外を含む、緊急時の対応方法への情報提供――などが算定要件に加えられた。

施設基準に関しても、「介護保険制度の利用など相談への対応、主治医意見書の作成」「警察医としての協力」「乳幼児健診の実施」「定期予防接種の実施」「幼稚園の園医」「地域ケア会議32への出席」「一般介護予防事業33への協力」のいずれかを担う常勤医を配置する要件が加えられた。
表3:かかりつけ医に関する「機能強化加算」の要件見直し
 
31 ここでは詳しく触れないが、厚生労働省の説明資料では、一定の条件で繰り返し使えるリフィル処方箋の導入も、かかりつけ医機能の強化の一つに位置付けられている。リフィル処方箋については、2022年5月16日拙稿「2022年度診療報酬改定を読み解く(上)」を参照。
32 地域ケア会議とは、医師や看護師、ケアマネジャー(介護支援専門員)など医療・福祉の専門職が事例検討などを通じて、多職種連携の関係性構築などを目指す会議体。設置主体は医療機関、市町村、地域包括支援センターなど多様である。
33 一般介護予防事業とは、介護保険財源の一部を用い、65歳以上全ての高齢者を対象に予防事業を展開する事業。
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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