2021年10月26日

なぜ世界一の病床大国で医療が逼迫するのか-地域医療構想とコロナ対応の比較を試みる

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

新型コロナウイルスによる医療提供体制の逼迫を受け、31日投開票の総選挙では各党が医療提供体制の拡充を競って訴えている。今夏の「第5波」における自宅療養の患者の増加とか、今後の感染拡大リスクの可能性を踏まえると、何かしらのテコ入れ策が欠かせないのは間違いない。

しかし、医療資源は有限であり、無尽蔵にベッドを増やすことは難しい。このため、既存の資源を最大限に活用するため、「どう医療提供体制を拡充するか」という方法論だけではなく、「なぜ医療が逼迫するのか」という問いも欠かせない。しかも、人口比で見た日本のベッド数は世界一であり、「なぜ世界一の病床大国で医療が逼迫するのか」という問いが必要になる。

本稿では、その構造的な要因として、(1)医療資源の集中が不徹底、(2)医療機関の役割分担が不明確――という2つの点を挙げる。その上で、平時モードとして進められている「地域医療構想」という医療提供体制改革との対比を試み、相違点と共通点を明らかにし、今後の方向性を模索する。

■目次

1――はじめに~なぜ世界一の病床大国で医療が逼迫するのか~
2――ボトルネックはどこか?
3――医療資源の集中が不徹底
  1|「何ちゃって急性期」病床の存在
  2|規模が小さい医療機関が林立
  3|長期療養を目的とした病床の存在
4――医療機関の役割分担が不明確
5――地域医療構想との対比
6――地域医療構想との対比から得られる示唆
  1|相違点への対応としてのリダンダンシー確保
  2|平時の改革と有事対応の共通点への対応
7――おわりに
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

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