2020年10月27日

コロナ禍で医療提供体制改革をどう進めるのか-リダンダンシーの発想が必要、難しい舵取りを迫られる都道府県

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中、医療制度改革への影響が避けられない情勢となっている。中でも、人口的にボリュームが大きい「団塊世代」が75歳以上となる2025年を意識し、病床削減や在宅医療の拡大といった提供体制改革を進める「地域医療構想」の部分的な軌道修正が迫られている。地域医療構想が策定された時点で感染症は考慮されていなかった上、コロナ禍で医療需要が急激に増えたことで、病床削減の要素を持つ地域医療構想の議論が進みにくくなっているためだ。

ただ、人口動態の長期的なトレンドは不変であり、地域医療構想のコンセプトを見直す動きには至っていない。このため、地域医療構想の推進主体である都道府県は、「短期的にコロナ対応で病床を確保しつつ、中長期的には病床を減らして在宅医療を増やす」という難しい舵取りが求められる。本稿は「コロナ禍における医療提供体制改革」という視点で、中長期的な方向性を考察したい。

■目次

1――はじめに~コロナ禍で医療提供体制をどう改革するのか~
2――コロナに対応する病床確保の動向
3――地域医療構想との整合性
  1|地域医療構想の概要
  2|地域医療構想とコロナ対応の相性の悪さ
4――求められる方向性
  1|医療計画制度の改正
  2|冗長性を意識した病床再編
5――おわりに~難しい舵取りを迫られる都道府県~
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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