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かかりつけ薬剤師・薬局はどこまで医療現場を変えるか-求められる現場やコミュニティでの実践、教育や制度の見直し

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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服薬指導や健康管理、在宅ケアなどで主体的な役割を担うことが期待される「かかりつけ薬剤師・薬局」に関する診療報酬の仕組みが2016年度にスタートし、5年目を迎えた。さらに、2021年8月からは高齢者などの薬の適正使用をサポートする「地域連携薬局」の認定もスタートするなど、近年は薬剤師・薬局を巡る制度改正が相次いで実施されている。これらの背景には、薬剤師や薬局の業務の中心を調剤などの「対物(モノ)」だけでなく、服薬指導や薬歴管理、在宅療養支援、健康づくりのサポートなど「対人(ヒト)」にシフトさせたいという政府の思惑がある。分かりやすく言えば、「薬剤師=薬を出してくれる人」「薬局=薬を出してくれる場所」という役割の変容が迫られている。
では、こうした制度改正はどこまで奏功し、医療現場をどう変えるのだろうか。本稿では、かかりつけ薬剤師・薬局を巡る制度改正の経緯や背景を振り返りつつ、薬剤師や薬局を巡る現状と課題を指摘。その上で、現場やコミュニティでの実践、教育・制度の見直しなど今後の方向性を論じる。
■目次
1――はじめに~かかりつけ薬剤師・薬局は医療現場を変えるのか~
2――かかりつけ薬剤師・薬局とは何か
1|かかりつけ薬剤師・薬局に求められる主な役割
2|かかりつけ薬剤師指導料
3|地域支援体制加算
4|健康サポート薬局
5|地域連携薬局
6|その他の制度改正
7|かかりつけ薬剤師・薬局に関する制度に共通するキーワード
3――かかりつけ薬剤師・薬局が制度化された経緯
1|突然浮上したことを示す数字
2|規制改革会議の議論
3|患者のための薬局ビジョン
4――かかりつけ薬剤師・薬局が制度化された社会的な背景
1|薬局調剤費の適正化の必要性
2|多剤投与、残薬の解消の必要性
3|生活モデルへのシフトの必要性
5――かかりつけ薬剤師・薬局の可能性
1|薬剤師の権限
2|薬剤師の数
3|関連する制度での貢献
4|研究や実践例
6――かかりつけ薬剤師・薬局の可能性に向けた疑問
1|制度の定着度から見た疑問
2|医薬分業の歴史から見た疑問
3|技術革新から見た疑問
4|薬剤師や薬局は必要か?
7――かかりつけ薬剤師・薬局の定着に向けた方策
1|現場、コミュニティでの実践、事例の共有
2|薬剤師の教育見直し
3|必要な制度改正(1)~診療報酬の改革~
4|必要な制度改正(2)~処方箋の見直し~
5|必要な制度改正(3)~薬剤師業務の見直し~
6|必要な制度改正(4)~薬局の情報提供制度の見直し~
8――おわりに
(2021年10月15日「基礎研レポート」)
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03-3512-1798
- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
三原 岳のレポート
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2025/01/17 | 分権から四半世紀、自治体は医療・介護の改正に対応できるか-財政難、人材不足で漂う疲弊感、人口減に伴う機能低下にも懸念 | 三原 岳 | 研究員の眼 |
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