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- 住宅価格は上昇加速。オフィス空室率は上昇一服も賃料下落が継続-不動産クォータリー・レビュー2021年第4四半期
2022年02月04日
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7 2013年までは日本人のみ、2014年以降は外国人を含めた数値。
ホテルセクターは、緊急事態宣言の解除を受けて回復の足取りが強まった。宿泊旅行統計調査によると、2021年12月の延べ宿泊者数は、コロナ禍以前の2019年対比で▲15.6%となり、「Go Toトラベル」キャンペーンの恩恵から最も回復した2020年11月の▲25.2%を上回った。2021年10-12月累計の延べ宿泊者数は2019年対比で▲26.7%、このうち外国人が▲96.6%、日本人が▲9.8%となった(図表-16)。また、STR社によると、12月のホテルRevPARは2019年対比で全国が▲35.9%、東京が▲54.0%、大阪が▲44.7%となった。このように、新規感染者数の減少に伴いホテル市況は回復に向かったが、2022年に入ってからは、新型コロナウイルス(オミクロン株)の感染拡大を背景に、再び経営環境の厳しさが増している。
物流セクターは、首都圏・近畿圏ともに需給環境は良好である。CBREによると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2021年12月末)は前期比▲0.3%低下の2.3%となった(図表-17)。2021年通年の新規需要は54万坪と前年の46万坪を上回り、3PL企業をはじめ幅広い業種からの需要が見られた。2022年の新規供給は過去最大の72万坪となる見込みだが、年前半の竣工予定物件では約半分の面積でリーシングが進んでいるとのことである。近畿圏の空室率は1.2%(前期比▲0.6%)と、6四半期連続で低下した。また、一五不動産情報サービスによると、2021年10月時点の東京圏の募集賃料は4,580円/月坪(前期比+2.5%)となった。
4. J-REIT(不動産投信)市場
J-REITによる2021年第4四半期の物件取得額(引渡しベース)は4,380億円(前年同期比+6%)、1-12月累計で1兆5,969億円(+15%)となった。アセットタイプ別の取得割合(1-12月累計)は、オフィス(46%)、物流施設(24%)、住宅(13%)、商業施設(11%)、底地ほか(6%)、ホテル(1%)の順となり、オフィスが3年ぶりに物流施設を上回りトップに返り咲いた(図表-19)。
12月末時点のバリュエーションは、純資産11.1兆円に保有物件の含み益4.3兆円を加えた15.4兆円に対して時価総額は17.0兆円でNAV倍率は1.1倍、分配金利回りは3.5%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.4%となっている。
12月末時点のバリュエーションは、純資産11.1兆円に保有物件の含み益4.3兆円を加えた15.4兆円に対して時価総額は17.0兆円でNAV倍率は1.1倍、分配金利回りは3.5%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.4%となっている。
2021年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数(配当除き)は+15.8%上昇し、国内株式の上昇率(+10.4%)を2年ぶりに上回った(図表-20)。年明け以降、NAV倍率で1倍を下回る割安感などを背景に7月まで上昇基調が継続。その後は米国金利の上昇懸念などから頭打ちとなったものの、東証REIT指数は節目となる2,000ポイント台を維持して1年を終えた。銘柄数は61社(▲1社)に減少したものの、市場時価総額は17.0兆円(前年比+18%)に拡大し、運用資産額(取得額ベース)も21.2兆円(前年比+5%)となった。デット資金の調達環境も良好で、投資法人債の発行金額は1,565億円(平均期間9.8年、平均利率0.50%)となり、引き続き長期資金を低利で調達できている。一方、業績面では、オフィス市場を中心に不動産賃貸市況の調整局面が継続したため、市場全体の予想1口当たり分配金はほぼ横ばいで推移し、1口当たりNAVの成長率も+3%に留まった。
(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
(2022年02月04日「不動産投資レポート」)
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経歴
- 【職歴】 2006年4月 住友信託銀行(現 三井住友信託銀行) 2013年10月 国際石油開発帝石(現 INPEX) 2015年9月 ニッセイ基礎研究所 2019年1月 ラサール不動産投資顧問 2020年5月 ニッセイ基礎研究所 2022年7月より現職 【加入団体等】 ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター ・日本証券アナリスト協会検定会員
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