2022年01月31日

鉱工業生産21年12月-供給制約の緩和を受けて2四半期ぶりの増産

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10-12月期は2四半期ぶりの増産

経済産業省が1月31日に公表した鉱工業指数によると、21年12月の鉱工業生産指数は前月比▲1.0%(11月:同7.0%)と3ヵ月ぶりに低下し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲1.0%、当社予想は同▲0.8%)通りの結果となった。出荷指数は前月比▲0.1%と3ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比0.1%と3ヵ月ぶりの上昇となった。

12月の生産を業種別に見ると、内外の設備投資の回復を受けて堅調に推移してきた汎用・業務用機械(前月比▲4.9%)、生産用機械(同▲3.2%)が大きく落ち込んだ。一方、供給制約の緩和を受けて自動車が前月比1.5%と3ヵ月連続で上昇したが、10月(前月比15.9%)、11月(同43.7%)からは伸びが大きく鈍化した。

21年10-12月期の生産は前期比1.0%(7-9月期:同▲3.7%)と2四半期ぶりの増産となったが、7-9月期の落ち込みを考慮すれば、伸びは小幅にとどまった。業種別には、世界的な半導体不足と東南アジアからの部品調達難の影響で7-9月期に前期比▲15.8%の大幅減産となった自動車が、同12.0%の高い伸びとなったが、半導体不足の影響が残る情報通信機械が前期比▲4.2%(7-9月期:同▲16.1%)と2四半期連続のマイナスとなったほか、デジタル関連需要の強さを背景に20年7-9月期から増加を続けてきた電子部品・デバイスは前期比▲3.8%と6四半期ぶりに低下した。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は21年7-9月期の前期比▲2.5%の後、10-12月期は同▲4.3%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は21年7-9月期の前期比▲1.7%の後、10-12月期は同▲3.4%となった。

鉱工業指数における設備投資関連指標は、21年7-9月期に続き10-12月期も弱い動きとなった。
財別の出荷動向 消費財出荷指数は21年7-9月期の前期比▲7.3%の後、10-12月期は同5.9%となった。自動車の大幅増産を反映し、耐久消費財が前期比11.8%の高い伸びとなった(非耐久消費財は同3.1%)。

GDP統計の民間消費は21年7-9月期に前期比▲1.3%の減少となったが、10月以降は緊急事態宣言の解除を受けて外食、旅行などの対面型サービス消費が急回復していることに加え、供給制約の緩和に伴い自動車も高い伸びとなっている。現時点では、21年10-12月期の民間消費は前期比3%程度の高い伸びとなると予想している。

2.生産は下振れリスクの高い状態が続く

製造工業生産予測指数は、22年1月が前月比5.2%、2月が同2.2%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(12月)、予測修正率(1月)はそれぞれ▲2.6%、▲2.4%であった。

予測指数を業種別にみると、供給制約の緩和に伴い10月から3ヵ月連続で上昇した輸送機械は、22年1月が前月比3.3%、2月が同5.7%と引き続き堅調を維持することが見込まれている。しかし、ここにきて新型コロナウイルスの感染拡大に伴う工場の操業停止の動きが再び広がっており、実際の生産は大きく下振れる可能性が高い。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
21年12月の生産指数を22年1、2月の予測指数で先延ばしすると、22年1、2月の平均は21年10-12月期を8.0%上回る。ただし、1月以降、まん延防止等重点措置の影響で、個人消費は対面型サービスを中心に弱い動きになっており、部品不足や新型コロナウイルス感染拡大に伴う工場の操業停止など供給制約による下押し圧力も再び高まっている。製造業の生産活動は当面下振れリスクの高い状態が続くだろう。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

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