2022年01月21日

消費者物価(全国21年12月)-コアCPI上昇率は22年度入り後に1%台半ばへ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月と変わらず

消費者物価指数の推移 総務省が1月21日に公表した消費者物価指数によると、21年12月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.5%(11月:同0.5%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.6%、当社予想も0.6%)を下回る結果であった。

コアCPIを大きく押し上げているエネルギー価格の上昇率はさらに高まったが、「Go Toトラベル」停止による押し上げ幅が縮小したこと、家具・家事用品が前年比▲0.8%(11月:同0.4%)とマイナスに転じたことがコアCPIを押し下げた。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比▲0.7%(11月:同▲0.6%)、総合は前年比0.8%(11月:同0.6%)となった。
コアCPIの内訳をみると、ガソリン(11月:前年比27.1%→12月:同22.4%)、灯油(11月:前年比36.2%→12月:同36.0%)は伸びが鈍化したが、電気代(11月:前年比10.7%→12月:同13.4%)、ガス代(11月:前年比7.2%→12月:同10.5%)が前月から伸びを高めたため、エネルギー価格の上昇率が11月の前年比15.6%から同16.4%へと高まった。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 食料(生鮮食品を除く)は前年比1.1%(11月:同1.1%)と6ヵ月連続で上昇した。原材料価格の高騰を受けて、食用油(前年比22.8%)、マーガリン(同12.5%)、マヨネーズ(同13.4%)などは前年比で二桁の高い伸びが続いている。
 
コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが1.17%(11月:1.12%)、食料(生鮮食品を除く)が0.26%(11月:0.26%)、携帯電話通信料が▲1.54%(10月:同▲1.54%)、Go Toトラベルが0.34%(11月:同0.44%)、その他が0.27%(11月:0.23%)であった(Go Toトラベルは当研究所による試算値)。

2.物価上昇の裾野が広がる

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象522品目(生鮮食品を除く)を前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、12月の上昇品目数は298品目(11月は293品目)、下落品目数は174品目(11月は165品目)となり、上昇品目数、下落品目数ともに前月から増加した。上昇品目数の割合は57.1%(11月は56.1%)、下落品目数の割合は33.3%(11月は30.7%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は23.8%(11月は25.5%)であった。

原材料価格の高騰を受けて、食料を中心に物価上昇の裾野は徐々に広がっている。

3. コアCPI上昇率は22年度入り後に1%台半ばへ

コアCPIに対するエネルギーの寄与度 一時70ドル台まで下落していた原油価格(ドバイ)は、再び80ドル台まで上昇しているため、エネルギー価格の上昇ペースは今後さらに加速することが見込まれる。コアCPI上昇率への寄与度は、22年入り後に1%台半ばまで高まるだろう。

また、原材料価格上昇によるコスト増を転嫁する動きが広がることにより、食料(生鮮食品を除く)は一段と伸びを高める可能性が高い。

コアCPI上昇率は、「Go Toトラベル」停止による押し上げ効果が剥落する22年1月にいったん鈍化するが、携帯電話通信料の大幅下落の影響が縮小する22年度入り後には、1%台半ばまで加速することが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2022年01月21日「経済・金融フラッシュ」)

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