2021年12月28日

鉱工業生産21年11月-供給制約の緩和に伴い自動車生産が急回復

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.10月の生産は前月比7.2%の高い伸び

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が12月28日に公表した鉱工業指数によると、21年11月の鉱工業生産指数は前月比7.2%(10月:同1.8%)と2ヵ月連続で上昇し、事前の市場予想(QUICK集計:前月比5.0%、当社予想も同5.0%)を上回る結果となった。出荷指数は前月比7.4%と2ヵ月連続の上昇、在庫指数は前月比1.7%と3ヵ月連続の上昇となった。

11月の生産を業種別に見ると、世界的な半導体不足と東南アジアからの部品調達難の影響で7月から9月までの3ヵ月で4割以上落ち込んだ自動車が、供給制約の緩和に伴い10月の前月比15.9%の後、11月は同43.1%と伸びが急加速した。自動車生産の水準は6月の97.9%まで回復した。
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は21年7-9月期の前期比▲2.5%の後、10月が前月比▲0.7%、11月が同0.3%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は21年7-9月期の前期比▲1.7%の後、10月が前月比▲2.0%、11月が同▲1.7%となった。
財別の出荷動向 GDP統計の設備投資は20年10-12月期から21年4-6月期まで3四半期連続で増加した後、7-9月期は前期比▲2.3%の減少となったが、企業収益の改善を背景に設備投資は基調としては持ち直しの動きが続いており、10-12月期は増加に転じる可能性が高い。

消費財出荷指数は21年7-9月期の前期比▲7.3%の後、10月が前月比▲2.0%、11月が同11.9%となった。11月は自動車の高い伸びを反映し、耐久消費財が前月比33.0%の急上昇となった(非耐久消費財は同0.2%)。

GDP統計の民間消費は21年7-9月期に前期比▲1.3%の減少となったが、10月以降は緊急事態宣言の解除を受けて外食、旅行などの対面型サービス消費が急回復していることに加え、供給制約の緩和に伴い自動車も高い伸びとなっている。現時点では、21年10-12月期の民間消費は前期比で3%近い高い伸びになると予想している。

2.10-12月期は2四半期ぶりの増産へ

製造工業生産予測指数は、21年12月が前月比1.6%、22年1月が同5.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(11月)、予測修正率(12月)はそれぞれ▲2.0%、▲2.6%であった。

予測指数を業種別にみると、10月、11月と高い伸びとなった輸送機械は12月が前月比3.6%、22年1月が同▲0.1%となっている。12月に入り、部品調達難の影響で一部の工場が再び稼働停止となっていることもあり、自動車生産の回復はいったん足踏みとなる可能性が高い。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
21年11月の生産指数を12月の予測指数で先延ばしすると、10-12月期の生産は前期比2.0%となる。生産実績が計画を下回る傾向があることを考慮する必要があるが、2四半期ぶりの増産はほぼ確実とみられる。

先行きについては、10-12月期の生産を牽引した自動車の回復ペースは鈍化するものの、世界的な設備投資需要の回復やデジタル関連需要の強さを背景に、生産用機械、電子部品・デバイスなどが堅調を維持することにより、鉱工業生産は持ち直しの動きが続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年12月28日「経済・金融フラッシュ」)

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