コラム
2021年03月03日

20年を迎えた介護保険の再考(22)感染症対策や災害対策-新型コロナ禍や豪雨で課題浮き彫りに、2021年度改定で焦点に

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   三原 岳

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1――はじめに~感染症対策や災害対策を考える~

加齢による要介護リスクをカバーする社会保険制度として、介護保険制度が発足して昨年4月で20年を迎えました。介護保険制度の創設時、必ずしも意識されなかったテーマとして第19回で住まい、第20回で人手不足、第21回でケアラー(介護者)支援の問題を取り上げましたが、今回は感染症対策や災害対策を取り上げます。

この問題は昨年来の新型コロナウイルスや豪雨災害で顕在化し、4月にスタートする2021年度介護報酬改定では一定の対策が講じられました。具体的には、感染症や災害の影響でデイサービス(通所介護)などの利用者が5%以上減った場合、報酬を加算する仕組みなどが導入されました。

しかし、第20回で取り上げた人手不足の問題などがあり、なかなか根本的な解決に至らない面があります。さらに介護報酬で対応した場合、利用者本人の自己負担を伴うことになるため、「介護報酬の引き上げで対応すべきことなのか」という議論もあり得ると思います。今回はコロナ禍や近年の豪雨災害で起きていることを考察するとともに、2021年度報酬改定の内容を紹介します。

2――コロナ禍の介護現場と国・自治体の対策

1|クラスターの発生件数
2020年前半から拡大した新型コロナウイルスは高齢者、基礎疾患を持つ人ほど重症化しやすいため、「高齢者の命をどう守るか」という点が注目されています1。中でも、「密」が避けられない介護現場ではクラスター(感染者集団)が発生しています。

厚生労働省の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認された2020年1月から2月15日までの間で、2人以上の感染症を出した高齢者施設は全国で少なくとも1,017件に上り、施設別で最も多かったとのことです2

特に、新型コロナウイルスの場合、無症状者が感染を拡大するリスクを伴う分、完全な感染防止策が難しく、介護現場は神経質な展開を強いられています。こうした中で、第20回で取り上げた人手不足に拍車が掛かっている上、感染を恐れる高齢者の利用控えも重なり、事業所の存続が危ぶまれています。
 
1 高齢者介護と新型コロナの関係については、第1波が収束した拙稿2020年6月15日「新型コロナへの対処として、介護現場では何が必要か」で詳細を論じた。
2 2021年2月17日『毎日新聞』。その他の類型については、飲食店(947件)、企業や官公庁(941件)、医療機関(874件)、学校など教育施設(624件)、児童福祉施設(220件)、障害者施設(123件)、運動施設(92件)、その他(266件)という内訳。
2|サービスの特性に応じた区分と対策
ただ、「介護現場」と一括りにしても、高齢者と専門職の接触度合いに応じて、感染症のリスクはサービスごとに異なります。ここでは、(1)特別養護老人ホーム(以下、特養)など「施設・住宅系」、(2)デイサービスなど高齢者の外出を伴う「通い系」、(3)介護職が自宅を訪ねる「訪問系」――の3つに整理した上で、感染リスクと対応策を論じます。

まず、1番目の施設・住宅系では、「密閉、密集、密接」の「三密」が重なりやすく、クラスターの発生リスクが高いと言えます。特に、こうした施設・住宅に入居する高齢者については、要介護度が重い人、あるいは認知症の症状が進んでいる人が多く含まれており、マスクの着用を嫌ったり、すぐにマスクを外してしまったりするケースも少なくないようです。しかも古い介護施設の場合、4人程度の多床室が残っており、どんなに気を付けていたとしても、感染が広がりやすい脆弱さがあります。

2つ目の通い系の場合、高齢者が1カ所に集まるため、三密のうち「密集」が起きやすくなります。この類型にはデイサービス(通所介護)など介護保険サービスに加えて、高齢者が気軽に体操や運動を楽しめる「通いの場」も含まれます。通いの場は近年、国・自治体が介護予防を図る観点に立って重視しており、ここでは「通い系」と位置付けます。

3つ目の訪問系では密接が課題となります。具体的には、ヘルパーやケアマネジャー(介護支援専門員)などのスタッフが自宅に出向く際、外から高齢者の自宅にウイルスを持ち込んだり、逆に家からウイルスを持ち帰ったりする危険性を伴います。

このため、「介護現場における感染症対策」と一括りにできない難しさがあり、それぞれの特性に応じた対応策が求められています。さらに同時に回避できないディレンマが存在します。例えば、「高齢者の命を守りたい」という判断の下、高齢者施設・住宅の管理者が家族・知人の面会を断った場合、高齢者にとっては楽しみが奪われ、認知機能が悪化するかもしれません。その一方、高齢者が感染を恐れてデイサービスや通いの場に行かなくなった場合、身体機能の低下を通じて要介護度が悪化するリスクに見舞われます。

つまり、「感染するリスク」「健康状態が悪化するリスク」は同時に回避不可能なディレンマであり、一律に回答を出せるわけではありません。例えば、面会をオンラインで対応するとか、体操を屋外で実施する(冬は難しいと思いますが)といった対応策を関係者が協議しつつ、現場それぞれで工夫する必要があると思います。
3|国・自治体の対策
では、国・自治体はどのような手立てを講じているのでしょうか、2021年度介護報酬改定の話は後段に回すとして、国としては、事業所が感染症対策に掛かったコストを支援しているほか、2020年度第2次補正予算では介護現場の職員に対して最大20万円を支給しました。

さらに報酬上の特例措置としても、(1)生活援助の提供時間が20分未満になっても、20分以上45分未満の報酬を請求できる訪問介護サービスの特例、(2)通常はケアプラン(介護サービス計画)に介護保険のサービスを組み込まないと報酬を受け取れないケアマネジメント(居宅介護支援費)に関して、予定されていた介護保険サービスの利用がなくなっても、必要なケアマネジメントに関して報酬を受け取れる特例、(3)高齢者を長く預かるほど事業所の収入が増えるデイサービスの報酬について、実際の提供時間よりも多い時間区分の報酬を受け取れる特例――などが設けられました。このほか、介護施設が新型コロナウイルスで入院後に回復した高齢者を受け入れた場合、介護報酬を上乗せする特例も導入されました。

このうち、関係者の間で議論になったのは(3)の特例でした。通常、デイサービスの報酬体系は表1の通り、高齢者を長く預かるほど事業所の収入が増える仕組みになっており、要介護3の高齢者を受け入れる場合、2時間以上3時間未満の場合は347単位、3時間以上4時間未満は472単位となっています。1単位は原則10円3なので、事業所は2時間以上3時間未満で3,470円、3時間以上4時間未満で4,720円を受け取れる仕組みです。
表1:新型コロナウィルスのデイサービスに関する報酬の特例
しかし、新型コロナウイルスの特例として、実際にケアプランでは2時間以上3時間未満であっても、時間区分で言うと2つ上の495単位(原則4,950円)、3時間以上4時間未満の場合、765単位(同7,650円)を受け取れるようにしました。これは事実上の介護報酬引き上げに当たりますが、第3回で述べた通り、介護保険は医療保険と違って要介護度に定められた区分支給限度基準額(以下、限度額)が定められており、限度額を超えると自己負担になります。このため、事実上の報酬引き上げ措置に対応させる形で、限度額を特例的に引き上げるか、限度額の枠外で対応する必要があったのですが、限度額に関しては何も手を付けられず、チクハグな対応となりました。

一方、自治体レベルでは独自の施策が展開されています4。具体的には、コロナの感染で職員が不足する事態に備えて、広域的に職員を融通し合うシステムの整備に乗り出す団体が多く見られるほか、感染症や災害医療の専門家が現場支援に当たるチームを編成する事例も増えています。例えば、富山県は大規模なクラスターが介護施設で起きた際の反省に立ち、クラスターが発生した場合の初動体制を強化するため、災害派遣医療チーム(DMAT)とともに初動対応に当たるチームを編成しました。こうした動きは現在、各地に広がっています。

さらに介護現場における感染を防ぐため、自治体独自の施策が展開されています。今年に入ってからの動きだけでも、札幌市が病院や福祉施設で働く約4万2,000人に対し、遺伝子を検査するPCR検査を大々的に実施すると発表したほか、岐阜県と岐阜市も高齢者施設で働く約5,000人の職員を対象に、予防的なPCR検査の費用を全額助成する事業に乗り出すと報じられました。さらに栃木県や宮崎市は介護職員に対して抗原検査を大々的に実施する方針を示しました。

このほか、大阪市は約280カ所に及ぶ高齢者・障害者施設の職員約2万人を対象にPCR検査を実施すると表明。大阪府も検査をインターネットで申し込める「スマホ検査センター」を開設し、高齢者施設の入所者や職員が少しでも感染を疑う症状に見舞われた場合、スマートフォンから検査を申請して府内12カ所の窓口で検査キットを受け取れる体制を整備しました。

こうした状況の中、国も2021年2月の通知で、医療逼迫や感染拡大が深刻な都府県に対し、高齢者施設で働く介護職などに対する検査に関して、「集中的実施計画」の策定と実施を促しました。通知によると、都府県は集中的実施計画を作成した上で、これを基にした検査を3月までに実施するよう求めています。さらに財源措置としては、内閣府所管の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」で支援するとしています。

ただ、検査のターゲットは施設・住宅系の職員に置かれており、通い系や在宅系は対象から外れています。資源や人員が限られている中、優先順位を付けて行く必要性は理解できますが、今後は通い系や在宅系にも視野を広げる必要があると思います(同じことは今後、本格化するワクチン接種にも言えそうです)。
 
3 ただし、大都市部では1単位を10円以上で評価する「地域区分」がある。
4 自治体の事例については、2021年1月30日『下野新聞』、1月29日『宮崎日日新聞』、1月26日『北海道新聞』、1月22日『朝日新聞』配信記事、1月21日『朝日新聞』配信記事、1月23日『岐阜新聞』、2020年8月13日『共同通信』配信記事、6月4日『富山新聞』を参照。

3――近年の豪雨災害で起きたこと

1|熊本県の豪雨と国による対策の検討
もう一つ、2021年度介護報酬改定では災害対策も重視されました。直接の引き金になったのは2020年7月、熊本県球磨川水系で起きた痛ましい豪雨災害です。この時には観測史上最大規模の雨量と河川水位が記録され、特養に入居する高齢者が14人亡くなりました。これを受けて、厚生労働省と国土交通省は有識者などで構成する「令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会」を設置し、避難の実効性確保に向けた方策を模索しています。
2|過去の豪雨災害と対策
こうした高齢者施設の災害については、今回が初めてとは言えません5。例えば、2009年7月の豪雨では山口県防府市の特養が土石流に見舞われ、入居者7人が亡くなりました。さらに、2010年10月には鹿児島県奄美市では集中豪雨でグループホーム(認知症共同生活介護)が浸水し、入居者2人が命を落としています。2016年8月の台風による豪雨でも、岩手県岩泉町のグループホームが浸水し、入居者9人の命が失われています。

これに対し、関係府省庁による手立ても講じられてきました。例えば、水防法や土砂災害防止法、津波防災地域づくり法は社会福祉施設、学校・幼稚園、病院・診療所などを対象とした「要配慮利用施設」の管理者に対し、避難計画の策定や避難訓練の実施を義務付けています。さらに計画作成や避難訓練に関して、国からマニュアルやガイドラインも示されています。

このほか、東日本大震災を踏まえた2013年6月の災害対策基本法改正を通じて、▽高齢者、障害者、乳幼児など配慮が必要な人(要配慮者)を受け入れるための設備、器材、人材を備えた「福祉避難所」の設置、▽要配慮者のうち、避難時に特に支援を要する人を対象とした「避難行動要支援者名簿」の作成――が市町村に義務付けられています。このうち、福祉避難所については、2019年版『防災白書』によると、2018年10月1日現在で8,064カ所が指定されており、協定の締結などを通じて確保している施設も含めると2万2,579カ所が確保されているとのことです。さらに総務省消防庁の調査によると、避難行動要支援者名簿についても、2019年6月現在で99.9%の市町村が作成済みとのことです6

介護保険制度の枠組みでも手立てが打たれており、特養などの介護保険施設については、避難場所や経路、人員体制、指揮命令系統などを示す「非常災害対策計画」の策定が義務付けられています。

しかし、それでも痛ましい災害が絶えない背景の一つとして、近年の雨の降り方が異常な点が挙げられます。このため、高齢者施設だけでなく、堤防や排水施設でさえ、想定を超える水量に対応できていない事態が散見されます。さらに、高齢者介護の特性が考えられそうです。施設に入居する高齢者の場合、重度な人が多く、体が虚弱化しているか、重度な認知症になっているため、避難がスムーズに進まない面があります。

このほか、第20回で述べた人手不足の問題です。災害対応ではリダンダンシー(冗長性)という概念があり、有事に備えて余分な人員や施設を持っておくことが推奨されるのですが、介護現場は少ない人員でギリギリの運営を強いられているため、災害対策のために余裕を持つことが難しい面もありそうです。実際、要配慮利用施設における避難確保計画の作成率は5割強にとどまります7。さらに、特養を対象に実施した厚生労働省と国土交通省のアンケート調査8によると、避難行動計画を策定している施設(1,874施設)のうち、避難先で施設利用者のケアなどで業務継続が可能としている施設は61%にとどまる上、2017年以降で避難訓練を実施している施設は24%に過ぎないそうです。さらにアンケートに対しては「業務継続のための必要品を外部の避難先に運び込むのは難しい」「施設利用者の人数が多いため、施設外への避難は難しい」「施設利用者の身体状態や職員数の問題により、施設外への避難は難しい」という答えが寄せられています。

このほか、高齢者施設の立地条件も考えられます。これは全ての施設について言えるわけではありませんが、浸水が懸念される区域など地価の安い地区に施設が立地される傾向があり、災害に巻き込まれやすい危険性があります9
 
5 ここでは詳しく触れないが、地震対策では高齢者の避難対策や災害関連死が問題となる。東日本大震災では2015年3月11日までに判明した分で、60歳以上の高齢者は1万396人にのぼり、全体の死者の約6割を占めているという。2015年版『高齢者白書』を参照。火災対策の関係では2009年、群馬県渋川市の老人ホームが火災に見舞われ、10人が亡くなった。
6 2019年11月13日総務省消防庁「避難行動要支援者名簿の作成等に係る取組状況の調査結果等」を参照。
7 2020年6月現在の数字。水防法に基づく避難確保計画は54.5%、土砂災害防止法に基づく避難確保計画は52.8%。国土交通省ウエブサイト「令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会」2020年10月7日資料を参照。
8 調査は2020年11月に実施。有効回答数は5,120施設であり、避難行動計画作成対象は2,172施設。国土交通省ウエブサイト「令和2年7月豪雨災害を踏まえた高齢者福祉施設の避難確保に関する検討会」2020年12月18日資料を参照。
9 2020年11月21日『毎日新聞』によると、浸水の危険性が高い区域に約3割の特養が立地しているという。

4――2021年度介護報酬改定

1|感染症対策、災害対策を意識した主な改定内容
2021年4月から実施される3年に一度の介護報酬改定では感染症対策と災害対策が焦点となり、報酬面で配慮する措置が盛り込まれました。例えば、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)介護給付費分科会が2020年12月に取りまとめた審議報告の項目立てを見ると、「感染症や災害への対応力強化」が1番目に位置付けられています。これを前回改定の3年前と比べると、ここ数年の課題となっている「地域包括ケアシステム」の整備(地域包括ケアという言葉は多義的で曖昧なので、余り使いたくないのですが…。詳細は第9回を参照)が1番目に位置付けられていましたので、昨年の新型コロナ感染拡大や災害が報酬改定の議論に影響を与えた様子を見て取れます。

具体的な改定内容として、2021年9月までのコロナ対応特例として、全てのサービスの基本報酬を0.1%アップしました。さらに、感染症や災害の際でもサービスが安定的・継続的に提供される必要があるとして、3年間の経過措置期間を設けた上で、委員会の開催や研修・訓練の実施、業務継続計画(BCP)の作成などを介護事業所に義務付けるとともに、介護事業者に対して地域住民との連携に向けて努力義務を課すとしています10

このほか、既述したデイサービスの特例が廃止され、デイサービスや通所リハビリテーションなどに関しては、前年度平均の延べ利用者数から5%以上減少した場合、3%を加算する仕組みなどが導入されました11。こちらは第3回で述べた限度額の対象外として位置付けられます。

ただ、慢性的な人手不足に直面している介護現場に対し、計画作成や避難訓練などの対応策を促しても、すぐに現場の対応力が向上するとは考えにくい情勢です。このため、市町村や防災組織との連携、国・都道府県による情報提供など、できることをコツコツと積み上げて行くしかなさそうです。
 
10 施設系サービスについては、現行でも委員会の設置や指針の整備などを求めている。地域住民との連携規定については、小規模多機能型居宅介護で導入されている。
11 詳細は述べないが、デイサービスに関しては、複雑な対応となった。具体的には、デイサービスの報酬単価は利用者数の規模で違いがあり、規模が大きくなるほど、報酬単価が低くなる設定となっている。2021年度介護報酬のコロナ対応としては、大規模型の利用者が減少した場合、より小さい規模区分で請求できるようになった。
2|報酬改定で対応すべきなのか
さらに、感染症や災害など臨時的な対策について、報酬改定で対応すべきなのか、再考の余地があると思います。報酬引き上げで対応すると、事業者の救済になる半面、利用者の自己負担が増えるマイナス面は見逃せません。しかも新型コロナウイルスの入院に関しては、税財源で手当てされているため、入院に伴う自己負担がゼロとなるのに対し、介護には自己負担の軽減措置が存在しないため、介護報酬の引き上げは自己負担の増加を伴います。

さらに、医療分野では診療報酬引き上げ措置が講じられる一方、「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」という税財源が相当な規模で投入され、コロナ患者を受け入れている病院を支援していますが、介護分野での支援は手薄い面があります。一方、こうした税財源を用いる場合、申請や交付に際して、自治体・現場での事務作業が新たに必要になるため、支給決定まで時間と手間暇を要するデメリットもあります。

このため、報酬、税財源の支援の双方に一長一短がありそうですが、新型コロナがいつ収束するのか読めませんし、新興感染症や災害は今回で終わりとは言い切れないため、支援に際しては、適切な組み合わせも考えて行く必要がありそうです。

5――おわりに

今回は介護保険制度の創設に際して、余り意識されていなかった感染症対策や災害対策を考察して来ました。2021年度介護報酬改定で一定の対応策が講じられた点はプラス材料と言えますが、人手不足が根底にある中で、一気に問題に対応できる有効な解決策を見出すのは難しく、市町村による支援など可能なことを地道に取り組んでいくことが重要と言えそうです。

次の第23回では、制度創設時に意識されなかった問題として、制度の複雑化を取り上げます。制度創設から20年の歳月を経る中、財源不足などの課題に対応するための利害調整が積み重ねられて来た結果、介護保険制度は極端に複雑化しています。

しかし、制度複雑化は住民参加などを想定した当初の理念に反する面があります。そこで、次回は制度複雑化の背景と弊害を取り上げます。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

(2021年03月03日「研究員の眼」)

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【20年を迎えた介護保険の再考(22)感染症対策や災害対策-新型コロナ禍や豪雨で課題浮き彫りに、2021年度改定で焦点に】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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