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被用者の心身のストレス反応-基本属性による違い

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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1――ストレスチェックは「ストレスの原因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3部構成

「職場ストレス簡易調査票」は57項目の質問からなる。その内訳は、「ストレスの原因」に関する質問が17項目、ストレスによっておこる「心身のストレス反応」に関する質問が29項目、ストレス反応に影響する因子として「周囲のサポート」に関する質問が9項目、その他「仕事や家庭の満足度」が2項目である。
高ストレスかどうかを判定する際には、ストレスによっておこる「心身のストレス反応」の有無が、判断基準の1つとなる。また、本人が心身のストレス反応に気づいていなくても、仕事による負担が大きすぎる等の「ストレスの原因」がある場合や、心身のストレス反応に影響する「周囲のサポート」が不十分だと考えられる場合は、対策が必要となる。そのため、厚生労働省では、
(1) 「心身のストレス反応」が高い者
(2) 「心身のストレス反応」が一定以上あり、かつ「ストレスの原因」及び「周囲のサポート」に関するストレスが著しく高い者
のいずれかに当てはまる従業員を、高ストレス者と判定し、改善策をとることを推奨している(図表1)。この判定方法以外に、自社で基準を別途設定している会社もある。
3 「活気」は図表2の各質問項目が当てはまらないほど、それ以外は各質問項目が当てはまるほど、ストレスが高いと定義
4 回答は「ほとんどなかった」「ときどきあった」「しばしばあった」「ほとんどいつもあった」の4段階
5ストレス度合の評価は、回答をそのまま得点化した合計値で判定する方法と、指標(尺度)ごとに換算表を使って判定する方法がある。換算表は、男女の特性を反映して、男女別に作成されている。本稿では、換算表を使った判定方法を採用した。
2――ストレスが「高~やや高」は7割以上~男性と若年で「抑うつ」「身体愁訴」、女性と中年層で「活気」面でのストレス
心身のストレス反応の6つの指標別に5段階評価の分布をみると、ストレスが「高~やや高」の割合はいずれの指標も3~4割にのぼった(図表4)。指標別にみると、「活気」「イライラ感」「疲労感」「不安感」は、「ふつう」の割合が最も高く、次いで「高~やや高」、「低~やや低」の順となった。一方、「抑うつ感」「身体愁訴」は、「高~やや高」の割合が最も高く、次いで「低~やや小」であり、高いか低いかで二分される傾向が見られた。
3――対人関係、仕事のコントロール度、仕事の負担(量)によるストレスの影響範囲は大きい
これによると、仕事の負担(量)で「イライラ感」「疲労感」「不安感」「身体愁訴」が、仕事の負担(質)で「不安感」が、対人関係でのストレスで「活気」「イライラ感」「疲労感」「抑うつ」「身体愁訴」が、仕事のコントロール度で「イライラ感」「疲労感」「不安感」「抑うつ」「身体愁訴」が、仕事の適性度で「活気」「抑うつ」が、働きがいで「活気」が、それぞれ高かった。対人関係や仕事のコントロール度、仕事の負担量でのストレスは、心身のストレス反応を示す6つの指標の多くに影響を及ぼしているようだった。
「周囲のサポート」は、「ストレスの原因」と比べてで「高」の人ほど高くはなかったが、上司からのサポートが総じて高い傾向にあった。
4――まとめ
ストレス反応のうち、「不安感」「抑うつ」「身体愁訴」は、若年ほど高く、55~64歳は、いずれも低い傾向があった。
性別にみると、男性は「抑うつ」「身体愁訴」が、女性は「活気」が高い傾向にあった。男性は、雇用形態や年収によってストレス状況が異なっていたが、女性は男性ほどの顕著な差は見られなかった。
ストレスの原因別にみると、要因によって心身のストレス反応との関係は異なるが、対人関係や仕事のコントロール度、仕事の負担量でのストレスは、心身のストレス反応を示す6つの指標の多くに影響を及ぼしているようだった。
年齢によるストレス反応の違いは、若年は、仕事上のスキルが十分に備わっていないだけでなく、役割や期待等が不明確なことが多い等といった仕事をする上でのストレスの他、家庭もキャリアも形成期にあり、将来に対する不安が高い時期であること等によってストレス反応が高くなっていると考えられる。また、男女の違いは、一般に、男性の方が、女性と比べて一様に安定した収入を期待される傾向がある一方で、女性は世帯構成や収入にあわせた働き方をするケースもあることから、女性のストレス反応は自身の就労状況以外の要因を多く含んでいる可能性が考えられる。
心身のストレス反応に与える影響は、性、年齢、雇用形態や収入の違いだけでなく、各世帯での役割の違い等から就労目的や職場環境等でも異なると考えられる。そこで、次号では、就労に対する考え方と職場環境が心身のストレス反応に与える影響をみる。
(2019年12月10日「基礎研レポート」)
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2003年 ニッセイ基礎研究所入社
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