2019年03月25日

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■要旨

筆者は、「企業の社会的責任(SR:Social Responsibility)や存在意義は、あらゆる事業活動を通じた社会問題解決による社会変革(social innovation)や社会的価値(social value)の創出にこそあるべきであり、経済的リターンありきではなく、社会的ミッションを起点とする発想が求められる。企業は社会的価値の創出と引き換えに経済的リターンを獲得できるのであり、社会的価値の創出が経済的リターンに対する『上位概念』である。このような『社会的ミッション起点のCSR 経営』は、従業員、顧客、取引先、株主、債権者、地域社会、行政など多様なステークホルダーとの高い志の共有、言わば『共鳴の連鎖』があってこそ実践できる」と考えている。

この「社会的ミッション起点のCSR経営」の対極にあるのが、「目先の利益追求を優先する短期志向(ショートターミズム:short-termism)の経営」だ。本稿では、付加価値分配構造の考察などを基に、我が国の大企業の多くが経営の短期志向に陥っていることを示し、さらに短期志向の経営が目先の利益確保には成功したとしても、それは長続きせず、結局中長期で見れば、経済的リターンをもたらさないことを説明した上で、日本企業は今こそ、社会的ミッション起点のCSR経営を実践すべきであることを論じたい。

■目次

1――はじめに
2――社会的価値創出に邁進する米国ハイテク企業と経営の短期志向に陥る日本企業
3――我が国大企業の付加価値分配構造の考察
  1|大企業製造業の分析
  2|大企業非製造業の分析
4――経済的リターンをもたらさない短期志向の経営の例示
  1|製品開発戦略
  2|オフィス戦略
5――社会変革に挑戦する高い志への回帰がSDGsやESG経営の推進につながる

(2019年03月25日「基礎研レポート」)

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社会研究部   上席研究員

百嶋 徹 (ひゃくしま とおる)

研究・専門分野
企業経営、産業競争力、産業政策、イノベーション、企業不動産(CRE)、オフィス戦略、AI・IOT・自動運転、スマートシティ、CSR・ESG経営

経歴
  • 【職歴】
     1985年 株式会社野村総合研究所入社
     1995年 野村アセットマネジメント株式会社出向
     1998年 ニッセイ基礎研究所入社 産業調査部
     2001年 社会研究部門
     2013年7月より現職
     ・明治大学経営学部 特別招聘教授(2014年度~2016年度)
     
    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・(財)産業研究所・企業経営研究会委員(2007年)
     ・麗澤大学企業倫理研究センター・企業不動産研究会委員(2007年)
     ・国土交通省・合理的なCRE戦略の推進に関する研究会(CRE研究会) ワーキンググループ委員(2007年)
     ・公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会CREマネジメント研究部会委員(2013年~)

    【受賞】
     ・日経金融新聞(現・日経ヴェリタス)及びInstitutional Investor誌 アナリストランキング 素材産業部門 第1位
      (1994年発表)
     ・第1回 日本ファシリティマネジメント大賞 奨励賞受賞(単行本『CRE(企業不動産)戦略と企業経営』)

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レポート紹介

【社会的ミッション起点のCSR経営のすすめ-短期志向の経営は経済的リターンをもたらさない】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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