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問題公表による他社株価への影響-持合ネットワーク構造を用いた分析

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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3――問題公表による他社株価への影響
図表9は、「距離∞の累積超過リターンの平均値と差がない」という仮説を棄却した場合に、その判断が誤っている確率を示しており、数値が一定水準より小さい場合、距離∞とは統計的有意に異なると判断可能である。5%を超えるのは、距離1の「1営業日後」、「2営業日後」、「9営業日後」のみであることから、特定の企業による問題公表が、持合ネットワーク上つながりのある他企業の株価に影響を与えると考えられる。なお、図表8では、距離1は距離∞ともっとも乖離するにもかかわらず、図表9上の値は、距離1がもっとも高いのは、距離1のサンプル系列数が他に比べて少ないからである。

次に、公表後翌営業日から10営業日後の累積超過リターンの類似性に基づいて、距離1~距離5及び距離∞をグループ分けする。グループ分けはクラスター分析を用いた。手法の詳細は割愛するが、類似するデータから順に逐次集約を繰り返す事で、グループ化していく手法である。図表10に示す分析結果をトーナメント表に擬えて説明するならば、対戦(縦棒)は、グループ化されることを意味する。名札から対戦までの幅が、グループ化することで失われる情報の量を表し、幅が短いほど類似性は高い。距離1や距離2と距離∞との間には大きな相違があり、前節の分析結果と整合的である。一方、距離3~距離5は、距離1や距離2より距離∞との類似性が高い。前節の分析結果も踏まえると、「距離3~距離5は距離∞と統計的に有意な差はあるが、その差は距離1及び距離2と距離∞の差と比べると僅かである」と解釈できる。
以上から、持合ネットワーク上つながりのある企業による問題公表により、顕著な影響を受ける範囲は、距離が2以下であると推測できる。これは、直接的な「株式持ち合い」関係にない企業にも、顕著な影響を及ぼす可能性を示している。
4――最後に(今後の課題)
分析対象イベント数が限られることなどから今後、より精緻なかつ多面的な分析が必要であるものの、持合ネットワーク構造を前提とした分析には価値があると考える。今後は、株価への影響に止まらず、企業間の距離別に財務諸表への影響分析等にも取り組みたい。
(2017年09月01日「基礎研レポート」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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