2024年05月01日

ユーロ圏GDP(2024年1-3月期)-前期比0.3%、プラス成長に転じる

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比0.3%とプラス成長に転じる

4月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏20か国GDP(2024年1-3月期、季節調整値)】
前期比は0.3%、市場予想1(0.1%)を上回り、前期(▲0.1%)から改善した(図表1)
前年同期比は0.4%、市場予想(0.2%)を上回り、前期(0.1%)から上昇した(図表2)

(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:ユーロ圏主要国はいずれもプラス成長

ユーロ圏の24年1-3月期の成長率は前期比0.3%(年率換算1.3%)となり、前期までの2四半期連続のマイナス成長(22年7-9月期、10-12月期ともに前期比▲0.1%・年率換算▲0.2%)からプラス成長に転じた。実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月期)対比では3.4%、エネルギー価格が高騰した22年の夏(22年7-9月期)対比では0.5%となった。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ0.2%(23年10-12月期▲0.5%)、フランス0.2%(23年10-12月期0.1%)、イタリア0.3%(23年10-12月期0.3%)、スペイン0.7%(23年10-12月期0.7%)となり、今回公表された他のユーロ圏加盟国を含め、いずれも前期比でプラス成長を記録した(図表3横軸)。前期比伸び率について、ドイツ統計局は個人消費が減少する一方で建設投資と輸出が回復を支えたと指摘、イタリア統計局は供給面では農林水産、工業、サービス業が増加し、需要面では内需の寄与はマイナスだったが純輸出の寄与が成長を押し上げたと指摘している(フランス・スペインは後述)。なお、前年同期比ではドイツ、オーストリア、アイルランドがマイナスにとどまっており、コロナ禍からの回復具合ではフランス、オーストリア、ドイツの遅れが目立っている(図表3縦軸・4)。
(図表3)ユーロ圏主要国の24年1-3月期GDP伸び率/(図表4)欧州のGDP水準(コロナ禍前との比較)
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で確認する。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.4%(前期0.2%)、政府消費0.6%(前期0.5%)、投資0.3%(前期▲0.9%)、輸出0.5%(前期0.4%)、輸入0.2%(前期▲2.3%)となった(図表5)。在庫変動の前期比寄与度は▲0.2%ポイント、純輸出の前期比寄与度は0.0%ポイントであり、内需と輸出が成長をけん引した。産業別の付加価値は、工業が▲0.6%(前期0.3%)、建設業が▲0.4%(前期▲0.6%)、市場型サービス産業0.6%(前期0.1%)、非市場型サービス0.2%(前期0.5%)となり、工業や建設業は低迷したが、市場型サービス産業が高めの成長を記録した。細かい業種では、電気・ガス・水道業(前期比▲2.3%)のマイナスが目立つ一方、居住・飲食業(1.3%)が高めの伸びを記録した。
(図表5)フランスの実質GDP水準/(図表6)スペインの実質GDP水準
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.3%(前期0.3%)、政府消費▲1.0%(前期1.0%)、投資2.6%(前期▲1.6%)、輸出2.4%(前期2.8%)、輸入1.1%(前期2.4%)となり、輸出が高い伸びを継続、個人消費も緩やかな伸びが継続したほか、投資も反発した(図表6)。産業別には、工業が1.6%(前期2.4%)、建設業が2.0%(前期1.2%)、サービス業が0.3%(前期0.2%)で、総じてプラス成長を維持している。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年05月01日「経済・金融フラッシュ」)

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