2024年02月16日

英国GDP(2023年10-12月期)-2四半期連続の前期比マイナス成長

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:2四半期連続の前期比マイナス成長

2月15日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2023年10-12月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は▲0.3%、予想1(▲0.1%)を下回り、前期(▲0.1%)からマイナスが拡大(図表1)
前年同期比は▲0.2%、予想(0.1%)を下回り、前期(0.2%)からマイナスに転じた

【月次実質GDP(10-12月)】
前月比は10月▲0.5%、11月0.2%、12月▲0.1%となり、12月は予想(▲0.2%)を上回る成長を記録した。

(図表1)英国の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)欧州のGDP水準(コロナ禍前との比較)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:名目成長率も前期比マイナス、営業余剰の減少が続く

英国の23年10-12月期の実質成長率は前期比▲0.3%(年率換算▲1.4%)となり、7-9月期(前期比▲0.1%、年率▲0.5%)に続き2四半期連続のマイナス成長となり、またマイナス幅も拡大した。10-12月期の実質GDPの水準はコロナ禍前(19年10-12月)と比べて依然として1.0%ほど高いが、ユーロ圏各国と比較すると相対的に回復が遅れている(図表2)。23年暦年の成長率は前年比0.1%(22年は4.3%)だった。

前期比成長率を需要項目別に確認すると、個人消費が前期比▲0.1%(前期▲0.8%)、政府消費が▲0.3%(前期1.1%)、投資が1.4%(前期▲1.4%)、輸出が▲2.9%(前期▲0.8%)、輸入が▲0.8%(前期▲1.8%)、在庫変動等の前期比寄与度は0.17%ポイント(前期0.06%ポイント)、純輸出は同▲0.63%ポイント(前期0.35%ポイント)だった。

コロナ禍前比で見ると個人消費が▲1.8%、政府消費が9.1%、投資が7.5%、輸出が▲8.0%、輸入が3.7%であり、個人消費や輸出の弱さ目立っている。
(図表3)英国の月次GDPの推移 成長率を部門ごとに確認すると、農林水産部門が前期比0.2%、生産部門が同▲1.0%、建設部門が▲1.3%、サービス部門が同▲0.2%で農林水産部門以外はすべて減少した(図表4)。より細かい産業分類では、鉱業(前期比▲3.0%)、電気・ガス(▲2.6%)、その他サービス(▲2.4%)、芸術・娯楽(▲1.2%)、製造業(▲0.9%)、卸・小売(▲0.8%)、教育(▲0.8%)といった産業での落ち込みが目立った。高金利が長期化していること受け、建設関連の業種に弱さが見られる。

なお、単月の状況を月次GDPで確認すると10月が前期比▲0.5%、11月が同0.2%、12月が同▲0.1%となり、10月に大きく落ち込んだ後、11月・12月ともに冴えない状況が続いている(図表3)。
(図表4)業種別のGDP前期比伸び率とコロナ禍前水準
(図表5)英国のGDPとデフレータ伸び率 名目GDPについては、10-12月期の前期比で▲0.2%(7-9月期は0.7%)、前年同期比で5.0%(前期7.7%)、デフレータは前期比0.2%(前期0.9%)、前年同期比5.2%(前期7.5%)となった(図表5)。インフレ圧力の低下を受けて、GDPデフレータの伸び率も前期比で大幅に減速しているが、前年比では依然として高い伸び率が維持されている。

名目GDPを所得別に見ると、雇用者報酬が前期比0.5%(前期1.1%)と減速、営業余剰は同▲3.1%(前期▲3.0%)、営業余剰は3四半期連続のマイナスとなった。企業収益の減少が続いており、雇用者報酬の伸びも抑制されていることが分かる。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年02月16日「経済・金融フラッシュ」)

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