2024年02月14日

英国雇用関連統計(24年1月)-賃金上昇率は減速が続くものの、水準は高い

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:失業率は低下

2月13日、英国国家統計局(ONS)は雇用関連統計を公表し、結果は以下の通りとなった1
 

【24年1月】
失業保険申請件数2前月(156.51万件)から1.41万件増の157.92万件となった(図表1)。
申請件数の雇用者数に対する割合は4.0%となり、前月(同4.0%)から横ばいだった。
給与所得者数3前月(3031.0万人)から4.8万人増の3035.8万人となった。増減数は前月(+3.1万人)から増加し、市場予想4(▲1.8万人)を上回った。

【12月(23年10-12月の3か月平均)】
失業率は3.8%で前月(3.9%)から低下した(図表1)。
就業者は3317.4万人で3か月前の3310.2万人から7.2万人増加した。増減数は前月(+10.8万人)から減少した。
週平均賃金は前年比5.8%で前月(6.7%)から低下、市場予想(5.6%)を上回った(図表2)。

(図表1)英国の失業保険申請件数、失業率/(図表2)賃金・労働時間の推移
 
1 労働力調査ベースの統計については、回答率の低下を受け、ONSでは開発中の公式統計という位置付けで公表されている。
2 求職者手当(JSA:Jobseekerʼs Allowance)、国民保険給付(National Insurance credits)を受けている者に加えて、主に失業理由でユニバーサルクレジット(UC)を受給している者の推計数の合算。なお、UCはJSAより幅広い求職手当てであり、失業者数を示す統計としては過大評価している可能性がある。このため、ONSは開発中の公式統計という位置付けで公表している。
3 歳入関税庁(HRMC)の源泉徴収情報を利用した統計。直近データは約85%のデータから推計。
4 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。

2.結果の詳細:定期賃金上昇率は6%台を維持、実質では前月から上昇

まず1月のデータとして公表されている求人数および給与所得者数を確認すると、求人数が23年11-24年1月の平均で93.2万件となり22年3-5月平均(130.2万件)をピークに減少傾向が続き、6か月連続で100万件を割り込んだ(図表3)。ただし、足もとでは減少ペースが鈍化している。業種別には特に、卸・小売、医療、芸術・娯楽、飲食・居住といったサービス業での減少が目立った。また、1月単月の求人数は23年12月に続き85.5万件と90万件を下回っている5

給与所得者データは、1月の給与所得者数(速報値)が前月差で4.8万人増と12月の前月差(+3.1万人)から増加幅が拡大した。なお、12月は速報値ベースでは前月差▲2.4万人とマイナスだったが、今回、プラスに改定された。産業別には製造業や建設業、卸・小売業では減少したが、飲食・居住や事務サービスでの増加が目立った。1月の給与額(中央値)伸び率は前年同月比6.4%となり、12月(6.3%)からわずかに加速した。
(図表3)求人数の変化(要因分解)/(図表4)給与取得者データの推移
労働力調査ベースの数値は、調査サンプルのウェイト付けが見直された上で公表され、23年10-12月期の失業率で3.8%となった(前掲図表1)。就業者と非労働力人口が増加し、失業者が減少した。労働参加率は低下し、10-12月期では62.8%とコロナ禍後の最低値となっている。
(図表5)英国の名目賃金水準(週あたり賃金)/(図表6)英国の労働争議件数と労働損失日数
名目賃金は10-12月期の前年同期比で5.8%となり、前月(6.7%)から大幅に低下した。前期に続きボーナスの金額が低水準とあり(図表6)、ボーナスを除く定期賃金伸び率では、前年同期比6.2%と前月(6.7%)から減速したものの、市場予想(6.0%)を上回り、6%台を維持している。実質ベースの伸び率は、ボーナス含みでは前年同期比1.4%と前月(1.5%)からわずかに低下(前掲図表2)、ボーナスを除く定期賃金では、同1.8%と前月(1.5%)から上昇している。

処遇改善を求めたストライキは、12月は件数ベースで243件、労働損失日数で10.7万日となった。いずれも11月からは増加したが、10月までの状況と比較すると件数、損失日数のいずれも低水準にとどまった(図表6)。
 
5 3か月平均のデータは季節調整値だが、単月データは未季節調整値のため季節性が除去されていないため留意が必要。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年02月14日「経済・金融フラッシュ」)

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