2024年01月31日

ユーロ圏GDP(2023年10-12月期)-ほぼゼロ成長の傾向は変わらず

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比ではごく小幅なプラス

1月30日、欧州委員会統計局(Eurostat)はユーロ圏GDPの一次速報値(Preliminary Flash Estimate)を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【ユーロ圏20か国GDP(2023年10-12月期、季節調整値)】
前期比は0.0%、市場予想1(▲0.1%)を上回り、前期(▲0.1%)から改善した(図表1)
前年同期比は0.1%、市場予想(0.1%)と一致、前期(0.0%)から上昇した(図表2)

(図表1)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)ユーロ圏の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様

2.結果の詳細:エネルギー危機以降のゼロ成長傾向は不変

ユーロ圏の23年10-12月期の成長率は前期比0.0%(年率換算0.1%)とごく小幅のプラス成長となった。ユーロ圏ではロシアによるウクライナ侵攻後のエネルギー危機の影響が深刻化した、昨年夏以降の成長率はほぼゼロであり(22年10-12月期は前期比▲0.1%・年率換算▲0.4%、23年1-3月期は前期比0.1%・年率換算0.4%、4-6月期は前期比0.1%・年率換算0.5%、7-9月期は前期比▲0.1%、年率換算▲0.5%)、今期もその傾向は変わらない(図表1)。昨年夏(22年7-9月期)対比の実質GDPの水準は、0.0%でほぼ同水準となる。なお、コロナ禍前(19年10-12月期)対比では3.0%となった。なお、コロナ禍前(19年10-12月期)対比では3.0%となった。

経済規模の大きい4か国の伸び率を見ると、前期比ではドイツ▲0.3%(7-9月期0.0%)、フランス0.0%(7-9月期0.0%)、イタリア0.2%(7-9月期0.1%)、スペイン0.4%(7-9月期0.6%)となり、スペインを除き低迷が目立ち、またいずれの国も7-9月期から減速している。なお、ドイツ統計局は建設・機械投資の低迷、イタリア統計局は供給面では工業とサービス業が、需要面では純輸出の寄与が成長を押し上げた点を指摘している(フランス・スペインは後述)。その他の国では、ポルトガルやベルギーが相対的に底堅いが、オーストリアは低迷している(図表3)。

コロナ禍からの回復具合ではフランス・オーストリア・ドイツの遅れが目立つ(図表4)。
(図表3)ユーロ圏主要国の10-12月期GDP伸び率/(図表4)欧州のGDP水準(コロナ禍前との比較)
次にフランスとスペインは各国統計局(フランス国立統計経済研究所(INSEE)、スペイン統計局(INE))がGDPの詳細を公表しているので、以下で見ていきたい。

フランスの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費▲0.0%(前期0.5%)、政府消費0.3%(前期0.3%)、投資▲0.7%(前期0.2%)、輸出▲0.1%(前期▲0.6%)、輸入▲3.1%(前期▲0.4%)となった(図表5)。在庫変動の前期比寄与度は▲1.1%ポイント、純輸出の前期比寄与度は1.2%ポイントであり、内需や輸出の弱含みが確認できる。産業別の付加価値は、工業が0.1%(前期▲0.2%)、建設業が▲0.8%(前期▲0.4%)、市場型サービス産業▲0.0%(前期0.0%)、非市場型サービス▲0.0%(前期▲0.1%)となり、全体的に停滞している。細かい業種では、住居・飲食業が前期比▲1.0%と低く、芸術・娯楽・家計向けが前期比0.6%と高めの伸びを記録した。
(図表5)フランスの実質GDP水準/(図表6)スペインの実質GDP水準
スペインの成長率(前期比)を需要項目別に見ると、個人消費0.3%(前期1.2%)、政府消費1.4%(前期1.4%)、投資▲2.0%(前期▲0.7%)、輸出2.0%(前期▲3.7%)、輸入2.7%(前期▲2.9%)となり、消費や投資といった主要内需項目が力強さに欠ける(図表6)。産業別には、工業が2.4%(前期▲0.6%)、建設業が0.6%(前期▲0.7%)、サービス業が0.2%(前期1.0%)だった。細かい業種で見ると前期の反動もあり芸術・娯楽業(▲7.4%、前期11.8%)が低迷した。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年01月31日「経済・金融フラッシュ」)

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