2024年01月09日

ユーロ圏消費者物価(23年12月)-コアは低下が続くが、総合指数は上昇

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:総合指数は上昇、コア指数は低下

1月5日、欧州委員会統計局(Eurostat)は23年12月のユーロ圏のHICP(Harmonized Indices of Consumer Prices:EU基準の消費者物価指数)速報値を公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【総合指数】
前年同月比は2.9%、市場予想1(2.9%)と一致、前月(2.4%)から上昇した(図表1)
前月比は0.2%、予想(0.2%)と一致、前月(▲0.6%)からプラスに転じた

【総合指数からエネルギーと飲食料を除いた指数2
前年同月比は3.4%、予想(3.4%)と一致、前月(3.6%)から低下した(図表2)
前月比は0.4%、前月(▲0.6%)からプラスに転じた

(図表1)ユーロ圏のHICP上昇率/(図表2)ユーロ圏のHICP上昇率
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想値も同様。
2 日本の消費者物価指数のコアコアCPI、米国の消費者物価指数のコアCPIに相当するもの。ただし、ユーロ圏の指数はアルコール飲料も除いており、日本のコアコアCPIや米国のコアCPIとは若干定義が異なる。

2.結果の詳細:総合指数伸び率は8か国で物価目標を下回る

24年12月のHICP上昇率3(前年同月比)は全体で2.9%となり、11月の2.4%から上昇した。伸び率の上昇は22年10月にインフレ率がピークをつけて以降では2回目となる(23年4月も6.9%から7.0%にわずかに上昇した)。「コア部分(=エネルギーと飲食料を除く総合)」は3.4%と総合指数より高めの伸び率だが、11月の3.6%から低下した。

以下、詳細を「コア部分」「エネルギー」「飲食料(アルコール含む)」の3つに分けて見ていく。

まず、コア部分である「エネルギーと飲食料を除く総合」の内訳を見ると、「エネルギーを除く財(飲食料も除く)」が10月3.5%→11月2.9%→12月2.5%、「サービス」(エネルギーを除く)が10月4.6%→11月4.0%→12月4.0%となり、12月は財インフレの減速が続いたが、サービスインフレは横ばいとなった。前年同月比寄与度は、「財」が0.61%ポイント程度、「サービス」が1.57%ポイント程度と見られる。

コア以外の部分では「エネルギー」が前年同月比で10月▲11.2%→11月▲11.5%→12月▲6.7%とマイナスが続いているが、マイナス幅は縮小した。前月比では12月も▲1.5%と大きく下落しているが、前年同月の下落幅が大きかったことによるベース効果でマイナス幅が縮小した。エネルギーの前年同月比寄与度は▲0.95%ポイント程度(11月は▲1.41%ポイント)と見られる。
(図表3)ユーロ圏の飲食料価格の上昇率と内訳/(図表4)ユーロ圏のインフレ率(季節調整値)
「飲食料(アルコール含む)」は、前年同月比で6.1%(11月6.9%)と9か月連続で大幅に低下した(図表3)。飲食料のうち加工食品の伸び率は5.9%(11月7.1%)、未加工食品は6.7%(11月6.3%)といずれも低下した。飲食料の前年同月比寄与度は1.37%ポイント程度(11月は1.35%ポイント)と見られる。

物価上昇の勢いをECBが公表する季節調整済系列で確認すると(図表4)、3か月移動平均後の3か月前比年率で総合指数が1.2%、コアが1.4%、エネルギーを除く財が0.0%、サービスが2.3%、飲食料が3.0%となった。物価上昇の勢いは総合もコアも2%を下回り、1%台となった。
(図表5)ユーロ圏HICP上昇率(前年同月比)/(図表6)ユーロ圏HICP上昇率(前月比)
国別のHICP上昇率は、前年同月比で20か国中、上昇したのは10か国、残りの10か国は低下した(図表5)。また、物価目標の2%を下回った国は10月3か国→11月5か国→12月8か国と増加している。前月比では伸び率がプラス、マイナスの国がそれぞれ10か国となった(図表6)。
 
3 23年からはユーロ圏20か国のデータ、22年までは19か国のデータ(以降も特に断りがない限り同様)。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2024年01月09日「経済・金融フラッシュ」)

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